サムスン半導体、EUV開発で2019年のApple Aシリーズチップの受注奪取に必死

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ここ2年ほど、AppleのAシリーズチップの委託生産先は、台湾のTSMCが独占し、サムスン半導体は蚊帳の外状態でした。しかし、現在サムスンは2019年にTSMCを技術的に凌駕し、Aシリーズチップの受注を取り戻そうと必死になっているようです。

A11-Bionic

サムスン半導体はInFOとEUVの開発に全力、Appleからの受注奪取に勤しむ

台湾を中心とするAppleのサプライチェーンと深い関係を持つ台湾のテック系メディア、Digitimesの報道によると、Aシリーズチップの受注をTSMCから奪取するため、サムスンは全力で”InFO(Integrated Fan-Out)”と呼ばれるパッケージテクノロジーの開発に勤しんでいるということで、更に7nm nodeで先進的な”EUV(Extreme UltraViolet、極端紫外線リソグラフィ)”テクノロジーによって全面的にTSMCを越えるとしています。ただ、現在のところ、AppleはTSMCのInFOテクノロジーのほうがお気に召しているようで、今年の新型3機種iPhoneに搭載されるとされる次期AシリーズSoC「A12チップ」は全てTSMCが独占受注しています。

EUVテクノロジーにはまだまだリスクが大きい

サムスンはAppleのAシリーズの受注を非常に欲しがっていて、そのためにEUVテクノロジーを使用したチップの単価を20%下げて見積を提出したといわれています。この値引は多くのメーカーの発注部門を惹きつけているのは間違いないようですが、とはいえどうやらその反応はまだまだ”並レベル”だということです。というのも、7nmプロセスのEUVテクノロジーでの品質と生産キャパ(歩留まり=製品の合格率)のリスクが大きく、現在世界でも最も進んだ技術を持つといわれる台湾のTSMCでさえ、この問題の解決に非常に苦戦している状況であることが知られているからです。ということで、5nmプロセスのチップが実現するまでは、TSMCはEUVテクノロジーを完全に生産ラインに入れ込むことはないといわれているほどだからです。

EUVテクノロジーそのものは、Appleを含むどのハイテク製品メーカーにとっても非常に魅力があるものですが、サムスン自身もEUVテクノロジーの様々なリスクについては早い時期から予測していたと思われます。なぜなら、サムスンはEUVテクノロジーを重点的に自社のGalaxy S10シリーズに搭載するとみられているExynosチップに集中させているからです。

以前、TSMCはInFOテクノロジーがチップのパッケージをする際の”厚み”を非常に薄くすることができるとしており、同時にチップの性能と省エネも実現できるとしています。そのメリットを買われ、TSMCはここ2年はAppleからのAシリーズチップの独占受注に成功しています。EUVは実際の回路にプリントする先進的なテクノロジーですが、量産難易度が非常に高く、各種の問題が複雑に入り組んでいる状態です。例えば、全ての物質にEUVの照射を吸収させるため、真空環境が必要になる、などです。

かつてはAppleのAチップシリーズの独占受注をしていたサムスン、、復活なるか

サムスンはかつて、AppleのiPhoneとiPad等に使用されているAシリーズチップの独占委託生産先でした。しかしAppleとサムスンの両社の間で特許に関する競争と裁判が過熱するにつれ、Appleはサムスンへの発注を避け、TSMCに傾倒していきました。また、iPhone 6s時代のA9チップに”チップゲート”と呼ばれる騒動があり、当時TSMCとサムスンからA9チップを2社購買していたAppleですが、その2つのチップがベンチマークアプリでそのスコアを比べると微妙にTSMCの方が性能がいいということがわかり、本来は誤差のレベルなのですが、それでも一部のユーザに不公平感を植え付けてしまったことがあり、この騒動もAppleがますますサムスンから離れる原因になったといわれています。

もしAppleが今後サムスンを選ぶとしたら、十分な理由となり得るほどの値下げ効果が見込めたということになり、それ以外の理由は考えられないと思われます。

iPhone Xの有機ELディスプレイパネルの独占受注をしているサムスン

ただ、もちろんビジネスの上では永遠の敵というのは存在しません。なぜなら、サムスンは今でもAppleから受注をしているからです。Appleは表向きには裁判所でサムスンと訴訟戦争を繰り広げつつ、机の下ではサムスン(の子会社)と取引と交渉を続けているというような状況です。

iPhone Xに使用されている有機ELディスプレイ(OLED)は100%サムスンが独占受注している状態で、今のところサムスンが唯一のAppleの品質要求を満足できるOLEDパネルメーカーだからです。2018年秋の新型iPhone 3機種のうち、2機種に導入されるといわれているOLEDもサムスンが独占受注するといわれています。ただ、来年2019年以降のiPhoneについては、OLEDの購買先としてサムスン以外のメーカーも検討されているようです。

小龍のひとりごと

Appleにとっても、やはり独占購買よりも複数社購買をした方が、競争を産んで技術が発展する上に単価が下がるので、一石二鳥といえるでしょう。それはもちろんユーザにとっても同じことです。Appleにとってはもちろんサムスンとの裁判を抱えている以上、その相手から購買するというのはメンツ的にはよくないことかもしれませんが、やはりビジネス的には金額や持続性で相手を選んで欲しいと思います。

もちろん、AppleやiPhoneの熱烈なファンとしては、明らかにiPhoneのパクリを繰り広げてきたサムスンに利益をもたらすようなことはできるだけ避けて欲しいという気持ちもなくはないですが。。

記事は以上です。

(記事情報元:Digitimes

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