M1以降のMac miniのSSDは超頑張れば交換やアップグレードが可能…だがやらない方がいい理由

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Appleは、自社開発のSoC、Apple Siliconと呼ばれるM1シリーズチップをリリースしてから、SSDのストレージまで全てオンボードチップではんだ付けするようになり、簡単にはSSDを交換してアップグレードできないようにしました。実はかなり頑張れば物理的に交換することは不可能ではないのですが、知識とスキルがないユーザにとっては非常に困難となります。

Intel時代のMac miniでは、SSDコンポーネントが交換できたが、Apple Siliconになってからは基盤直はんだ付けに

Apple Siliconが導入される前のIntelのチップの時代のMac miniでは、SSDストレージ以外にもいくつかのコンポーネントは自分でアップグレード可能でした。しかしAppleは自社のApple Siliconに切り替えるにあたって、それらのコンポーネントを基本的にロジックボード上に直接はんだ付けによって実装してしまいました。一部はSoCと一体化しています。それによってSoCとそれらのコンポーネントの間の通信が速くなることによりより効率化を図ることができ、性能としてはアップします。しかしユーザは基本的にMac miniの寿命が来るまではそれらのコンポーネントをアップグレードできないため、長く使いたいのであればCTOで最初からある程度アップグレードしてから購入する必要がありました。

かなり頑張れば基盤直付けのコンポーネントも交換可能。そして挑戦した強者がいた!

しかし冒頭にも書いたとおり、Apple Silicon Macではコンポーネントがロジックボード上に直にはんだ付けされているとはいえ、実はかなり頑張れば、交換やアップグレードは困難ではありますが不可能ではありません。正しい知識とスキル、正しいコンポーネント、そして少しばかりの幸運と強い決意があれば、危険を冒してハードウェアアップグレードを自前で試みることができます。

Luke Miani氏が、Apple愛好家@dosdude氏の協力を得て公開したYouTubeの動画では、その高すぎるハードルを越えて多大な努力を経てSSDのアップグレードを成し遂げています。が、恐らくこんな面倒なことはきっと殆どの人がやりたくないはずです。

 

次々に襲いかかる困難と障害。。詳細な手順

動画では、M1 Mac mini のSSDストレージを256GBから2TBに容量をアップグレードすることを目的としています。この目的を達成するために、2人は既存のはんだ付けされた256GBのSSDストレージを取り外し、そして2つの1TB NANDチップに置き換える必要がありました。Mac mini分解自体は比較的簡単で、加熱する必要はあるものの、13本のねじを外し、プラスチックなどのその他の取り外し可能な部品を除去していくだけです。

まず最初の大きな障害は、SSDチップの下に注入され時間の経過とともに硬化する材料であるアンダーフィル層を既存のチップの下から除去することでした。そのアンダーフィルを扱うこと自体が既に十分に困難なのですが、SSDチップの近くには抵抗器があり、これらもアンダーフィルに埋めこまれていて、それを無傷でしかも同じに位置に保たなければならないのです。チップの周囲を削り取り、熱風を吹き付けてはんだを溶かし、特殊なツールを使ってSSDチップを剥離します。

そして新しいNANDチップには、ステンシル(型紙のような穴が空いた板、はんだをつける場所を決めるためのもの)と熱を利用して再度はんだが盛られ、それをロジックボード上に配置し、そしてまた熱風ではんだ付けが行われます。

M1 Mac mini SSD
M1 Mac miniのロジックボードに搭載された新しいNANDチップ(SSD)

最大の難関はMacに認識させることだった。。。!?

さて、物理的にはSSDの換装が完了しましたが、今度はそれをmacOSに認識させて復元しなければなりません。ということで次のステップは、【Apple Configurator 2】を使用して復元すること、となります。Luke Miani氏達は、後のバージョンになればなるほど、Apple Configuratorでは空の NAND またはプログラム(或いは指定・認証)されていないNANDの復元が許可されていないと考えられていたため、 macOS Big Surおよびその他の以前のバージョンのmacOSを使用してみたのですが、問題が発生し復元が続行できませんでした。

Luke Miani氏達は悪あがきとして、他のストレージのアップグレードを独自に試した他の人から聞いたアドバイスに基づいて、再度チップを交換しました。チップがロジックボード上に並んでいる「順序」がAppleのアーキテクチャにとって重要な要素であると考えられたからです。しかしこれもうまくいきませんでした。

数週間後、2人は更に新しいNANDチップセットを試しました。これらのNANDチップは事前に一切使用されておらず、空白の状態でした。その結果、大成功。最新のmacOS VenturaのApple Configuratorでも機能したのです。

2人は動画の終わりに、実際にはMシリーズチップのMac miniでもストレージやその他のコンポーネントのアップグレードは可能であることを体験したことをまとめていますが、ただし、「そのために必要なスキルセットは、プラスドライバーさえあれば十分だった昔よりもはるかに高度になっている」と述べています。いや、本当にそうですよね。

条件が整っていれば、コスト的にはハードウェアアップグレードが圧倒的に安いが。。。リスク高すぎ?

SSDストレージを256GBから2TBにアップグレードするのに、2TBのコンポーネント(1TBのNAND)ハードウェアのコストは100ドル(約15000円)くらいです。つまり費用としては特殊な工具や作業工賃を除けば、原価は100ドルくらいということになります。しかしAppleでCTOで標準の256GBから2TBにアップグレードすると、日本のApple Storeでは112,000円(税込)も追加しないといけません。

その差額を埋めるためにこのハードウェア交換をするというプロジェクトを進めることは、大いに意義があるような気はします。もちろん、それらを全て成し遂げるには、それ相応の設備と知識とスキル、そして何よりも勇気が必要となります。

Luke Miani氏はかつてMac Studioでのストレージ交換で失敗も

ちなみにLuke Miani氏は昨年2022年3月に、Mac Studioのストレージを、モジュラースロットベースのドライブシステムに交換しようとして失敗しました。その後、原因として使用したドライブモジュールが基本的に通常のオンボードコントローラのないNANDチップホルダであることが判明しました。しかもモジュールはコンポーネント側ではなく、Mac Studio自体の内部で処理されるため、そこを変更することが不可能だったのです。更に、Mac Studioに追加されるストレージチップの容量が、コントローラが想定していたものと異なっていた場合、エラーが発生して使用できません。

Luke Miani氏は当時、Genius Barの従業員から、そのモジュールはシリアル化(1つのまとまりとして直列化して取り扱われているという意味)されていて、交換に用いるドライブチップのシリアル番号を刻印するためにApple Configuratorが使用されているとアドバイスを受けていました。またApple公認のエンジニア達は、これらのツールの使用目的をストレージ等のコンポーネントのアップグレードのためではなく、修理だけに限定されていたということです。

このことについては、当ブログでも記事にしていました

結果的にはシリアル番号も全て空白なNANDチップを使うことで成功したわけですが、Genius Barの従業員にそのようなアドバイスを受けていたことでLuke Miani氏は遠回りをしてしまった、ということになりますね。でも最初はまさかそれでできるとは思っていなかったというのは私にもよくわかります。

個人的には自前でのアップグレードは全くオススメしない。。。他にはこんな方法も

正直この動画はあくまでギーク向けのネタで、個人的にはここまで危険を冒してまでハードウェアアップグレードをする必要はないと考えます。上記の条件が整う方はご自身で試してもいいかと思いますが、完全に自己責任で行っていただくしかないです。

もしMacを買うときに標準仕様のSSDでは容量が足りないと感じる方は、大人しくApple税を払って大きめの容量をCTOで選んで発注するか、或いはThunderbolt SSDストレージドライブなど、外部ストレージを利用されることをお勧めしたいですね。または、今の時代はバックアップで必ずiCloud等クラウドストレージを使用するでしょうから、時間が長くなればハードウェアよりは高くなりますが、クラウドストレージサービスを使用するのも手です。

とはいえ私自身もApple税を払ったクチでございます。。本体のSSD容量が少なくなるとスワップが発生したり、仮想メモリの使用も圧迫されたシステムの動作にも影響すること、また容量の小さいSSDは伝送速度が低く設定されていることから、CTOでできるだけ大きめの容量を選ぶのがいいと考えるからです。今年購入したM2 Pro Mac miniでも2TBを選択しました。

私はGoProでカートの動画を撮っていて、本体ストレージに入れていることもあります。GoProのサブスクリプションにも登録していて、容量無制限ストレージに動画をアップしていますが、こういった無制限容量のクラウドストレージサービスはDropboxやEvernoteのようにいずれ改悪されるしかないことを身をもって知っていますので、やはり自身のストレージに置いておきたいのがあります。とはいえまだ半分も使用していませんが、5年くらいは使うことを想定していますので、背に腹はかえられないですね。。

なお、もう一つのApple Silicon Macの本体ストレージのアップグレード手段として、「プロに任せる」という手もあります。中国の深圳華強北ではMacのSSD交換サービスも承っているところがあるようです。ただ個人的には腕のいいところでなければハードウェアを壊される危険性もゼロではないので、お店はちゃんと信頼の置けるところでなければやめた方がいいと思います。どうしても必要な方はコメント等でお問い合わせください。個人の場合は輸送の関係で中国にお住まいの方限定となりますが、量がある場合は国際輸送でもいけるかもしれません。別途ご相談いただければ。

記事は以上です。

(記事情報元:Apple Insider

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