Apple、インテルとの喧嘩が原因で独自5Gモデムチップは2025年まで登場しないかも

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The Informationの最新のレポートによると、過去2年間のAppleのクアルコム(Qualcomm)との断絶に関する詳細と、今後のAppleの5G対応ベースバンドモデムチップの独自開発に関して報告されています。この記事では、特に後者について採り上げたいと思います。

5G-powered-by-Intel

Appleは先月(2019年4月)、係争関係にあったクアルコム(Qualcomm)との全面和解と購買契約を結んだことを発表し、その直後にインテル(Intel)が5Gモデムチップ事業からの撤退を発表しました。

その前に、Appleはインテルが5Gモデムチップの開発計画が遅れていることに不安を感じ、関係がギクシャクしていたことが報じられていました。

しかも実はAppleとインテルの関係の悪化は最近のことではなく、The Informationのレポートの中において匿名の2人の情報筋によって、Appleのハードウェアエンジニアリング担当ジョニー・スルージ(Johnny Srouji)SVP(上級副社長)が2017年初め頃に5Gモデムチップに取り組んでいる際に、インテルに対して非常にがっかりしていたことが明らかにされています。

AppleがクアルコムからインテルにiPhone用モデムチップの購買先を切り替えてから、インテルは4回もモデムチップをオーバーホールし、最終的にはクアルコムとほぼ同等のレベルにまで引き上げたといわれています(それまではAppleがわざわざソフトウェアでクアルコムのチップの性能をインテルに合わせて落とすほど、性能差がありました)。しかし5Gモデムチップについては開発段階で〆切を守れなかったこと、また技術的な問題が続いていることがAppleの幹部を不安にさせていたようです。ジョニー・スルージSVPは、あるApple社内の会議でインテルの担当者Venkata“ Murthy” Renduchintala氏を怒鳴りつけたことを、会議に出席したとある人物がThe Informationに明かしているほどです。

結局Appleは5000億円というAppleにとってははした金を支払ってクアルコムとの和解を選び、インテルと手を切ったのですが、その前にはインテルのモデムチップ事業を買収するという情報もありました。しかし現在手が切れた以上はAppleはインテルのモデムチップ事業を買収することはなくなったのですが、他の企業がインテルのモデムチップ事業を買収する可能性はあります。どこの企業かについては明らかになっていませんが、既にオファーはあるようです。それらの企業がAppleにとっては強敵になっていく可能性もあります。ただ、Appleは今年初め頃にインテルからモデムチップ開発のトップ責任者だった人物を引き抜いていたことも判明しており、本当にインテルのモデムチップ事業が5Gモデムチップ事業開発に成功できるかは未知数ではあります。

ただ、Appleはその後、モデムチップ事業の責任者の離職もあったことが原因かわかりませんが、Apple社内でこのモデムチップ開発チームに参加予定の人物に対するインタビューによると、Apple独自の5Gモデムチップ開発部隊の人数は豊富に揃っているものの、実際の使用開始は一部のチップ専門家達の予測時期にはほど遠く、Appleとしては2025年からの自社モデムチップの使用開始を目指しているということです。Appleにとっては、クアルコムが今後も数年5Gモデムチップの安定したロードマップがあることから、暫くは安定したクアルコムのモデムチップを購買しつつ、焦らず確実に開発をしていこうということなのか、はたまた従業員をも出し抜いているのかどうかについては定かではありません。

ちなみにAppleとインテルの確執はモデムチップだけに留まりません。Mac用のCPUについても、Appleのティム・クック(Tim Cook)CEOが、2019年第1四半期(会計年度2019年第2四半期)の業績発表において、Macの業績不振(売上抑制)の原因の1つとしてインテルのチップの供給における制約を挙げているほどです。

かつて、Appleはまだスティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)がCEOだった頃、MacのCPUとして長らく採用していたモトローラとIBMが開発していたPowerPCの性能の低さに失望し、2005年からMac用CPUはインテルからの供給に一気に切り替える決定をしたことは記憶に新しいところです。Appleは今後、Mac用のCPUをインテルから切り替えるのは時間の問題とみられていて、思ったより早くその時期は訪れるかもしれません。信頼度が高いApple関連のアナリスト、Ming-Chi Kuo(郭明錤)氏によれば、Appleは2020年から2021年にかけて、CPU供給元の変更についての動きを見せると予測していました。またブルームバーグはそれが2020年に訪れるとしています。

いずれにせよ、Appleとインテルの蜜月は終わりました。iPhone/iPad用モデムチップは暫くはクアルコムからの購買をしつつ社内自社開発を準備し2025年頃から切り替え、そしてMac用CPUについては早くて来年2020年にはインテルから自社開発のARMベースのCPUに切り替えていくと予測されています。

今後各関連会社の株価や業界勢力図などに変化がありそうですね。

記事は以上です。

(記事情報元:The Information via 9to5Mac

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