Appleの3月26日の発表イベント”It’s show time.”、中国には一切関係なし。その理由とは?

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Appleが3月26日にカリフォルニア州サンフランシスコ・クパチーノのApple Park内スティーブ・ジョブズ・シアターで行った発表イベント”It’s show time.”の発表内容については当ブログでもまとめた通りですが、そこで発表されたサービスコンテンツのうち、中国(大陸)には1つも関係なく、公式サイトでもイベントの紹介だけに留まり、新サービスの紹介は1つも行われていません。今回発表されたコンテンツそれぞれがなぜ中国市場では無理なのか、私なりに解説しようと思います。

Apple News +

国全体で報道規制が敷かれていて、メディアの報道が厳しく制限されている中国(大陸地区)では、基本的には政府の許可を受け、検閲を受けたニュースしか流すことはできません。当然ながら、海外メディアのAppleからのニュースは中国で流すことはできないため、Appleは中国上陸を断念しています。ちなみに日本でも始まっていないくらいです(日本では既得権益による妨害があるものと思われます)。

Apple Card

今回Appleから発表された、無記名・無番号式のクレジットカード。これが中国では無理な理由は3つあると思われます。

  1. キャッシュレス社会の普及
    中国(大陸地区)では、既に中国国内企業のテンセント(Tencent、騰訊)によるWeChat Pay(微信支付)やアリババ(Alibaba、阿里巴巴)傘下のアント・ファイナンス(Ant Finance、螞蟻金融)によるAlipay(支付宝)が普及していて、キャッシュレス社会が実現しています。そこにわざわざクレジットカードを導入しても、恐らく手数料を高く取るAppleのカードにはどこの銀行などの金融機関も見向きもしないでしょう。
  2. 金融規制が厳しい
    中国は規制の多い国です。海外の会社への金融サービスの開放は限られています。VISA・Masterといった国際的に支配的なシェアを持つクレジットカード会社さえ、中国国内では苦戦しています。Appleによるクレジットカードサービスも、うまくいかないでしょう。しかも、カード番号が毎回変わる、取引をAppleが知ることがないというのも、中国では考えられない話です。不正取引の温床になる恐れもあり、何でも管理したがる中国政府としても取引を管理できないサービスには許可を下ろすことはないでしょう。
  3. iPhone/Apple Watch等の普及率の低さ
    そして何といっても中国では既にローカルのスマホメーカーのファーウェイ(HUAWEI)、シャオミ(xiaomi)、VIVO、OPPOなどの端末がスマートフォンのシェアの殆どを握っていて、AppleのiPhoneなどApple Cardが使える端末の普及率は非常に低くなっています。Apple Payが流行らないのと同じかそれ以下と思われるほど、Apple Cardの普及は難しいでしょう。

Apple Arcade

ゲームポータルサービスですが、これも中国では難しそうです。

中国政府は既にゲームの分野にも厳しい規制を敷いていて、前出の中国国内最大の企業となっているテンセント(Tencent)でさえ、中国政府のゲームの規制にはまって新作がリリースできず、株価を落としたほどです。更に、実は最近までゲーム機そのものが違法でした。ファミコン、スーパーファミコン、Wii、PlayStationなどは、実はこれまで全て違法なまま持ち込まれて裏で販売されていたのです。Appleなどが入り込むのは夢のまた夢といったところでしょう。

Apple TV Channels

中国国内企業で、既に同様のサービスはごまんとあり、しかも殆どが無料です。中国国内コンテンツの取り込みが難しいAppleは、勝ち目がないでしょう。

Apple TV+

Appleのオリジナルコンテンツを含むドラマなどの映像コンテンツをApple TVに追加するという発表がありましたが、これも中国(大陸地区)の海外コンテンツ規制などにひっかかる可能性が高く、そもそもApple TVそのものが中国では販売されていないため、実現は不可能です。

Apple TVのようなものを販売するには、多くの許可の取得が必要となり、特に海外企業に対してはその規制は厳しくなります。海外映画の輸入も厳しい検閲が行われる上、年間で本数が決まっているほどです。そんなところにオリジナルコンテンツを含むテレビサービスを提供するのは非常に難しいでしょう。更に、中国人は特に海外のドラマに興味があるわけではありません。そして中国国内コンテンツは上記の通り、無料や格安のサービスがごまんと溢れていて、これ以上必要ないのが現状です。

香港はちょっと別

ちなみに同じ中国でも香港では一国二制度となっているため、Apple TV +の紹介は行われています。メディアの規制などは緩く、Apple TVが販売されているためです。

ただし、Apple News +やApple Arcadeは恐らく既得権益があることと、収益性の問題で香港ではスタートできないか遅れるものと思われます。

日本でも公式に紹介されている新しいサービスは2つだけ

ちなみに日本でも、Apple ArcadeとApple TV +のみの紹介となっていて、あとはApple TV Channelsがいずれはリリースされるかもしれません。どうりで、発表中は眠かったわけですね。。笑

Apple、イベントを無駄遣いしてませんか?

Appleは年4回の大きなイベントのうち、今回既に1回分を使ったことになります(春のイベント、6月のWWDC、秋のイベント2回で全4回)。昨年売上げが落ち込んだ大きな理由が大中華圏での大ブレーキがかかったことなのですが、イベントのうち1回を中国向けに何かリップサービスをしなかったのは失策だといえるかもしれません。何かちょっと中国向けに使えそうなハードウェアを用意すれば、中国からは好意的に受け容れられた可能性があったにもかかわらず、ハードウェアの発表は1つもなく(イベント前にちょろちょろと出てしまいました)、そして完全にアメリカ本国向けの内容でしたね。正直アメリカのカルチャーに詳しくない人が見ても何がそんなに受けているのかよくわからない発表でした。

Appleはもう大中華圏は少し諦めて、米国本国でのシェアを更に増やす方針にしたのかもしれません。

記事は以上です。

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