Appleのティム・クックCEO、中国で行われている世界インターネット会議の基調講演でプライバシーと人間性の重視について語る

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Bloombergの報道によると、Appleのティム・クック(Tim Cook)CEOが本日、中国・烏鎮(上海の近く)で開かれているワールド・インターネット・カンファレンス(World Internet Conference、世界インターネット会議)で基調講演を行い、その内容はプライバシーとセキュリティ、そしてヒューマニティに及びました。

今回のワールド・インターネット・カンファレンスは、中国国家インターネット情報事務室と地方政府が主催したもので、中国の外からは、今回のカンファレンスによって中国が行っているインターネット上の審査や、インターネット上の秩序を保つ手法について、世界に向けて宣伝する形になったようです。

Appleのティム・クックCEO、中国での活動を誇りに思うと発言

Tim-Cook_CEO_Apple

ティム・クックCEOは基調講演の中で、Appleは中国と全ての人が恩恵を受けられるような経済的なヴィジョンを確立したと語っており、また同社が中国の多くのパートナーと提携関係を結んでいることに誇りを感じる、とリップサービスをしています。

クックCEOは、「今回の会議のテーマは、開放され利益をシェアすることでデジタル経済を発展させるというものですが、これは私たちのAppleでのヴィジョンでもあります」と述べています。「私たちは中国の多くのパートナーと一緒に努力し、未来のネットワーク空間で共に発展してコミュニティを作ることの助けになれることを誇りに思っています」と語りました。

また、Appleは中国で500万人分もの職を生み出し、そのうち180万人はアプリの開発者だということです。500万人といえば、中国の13億人の人口と比べると多くはないようにみえますが、この計算に入っていないと思われる周辺ビジネス(例えばiPhoneの修理屋や周辺部品、小売・中古市場、教育市場等々)を考えればもっともっと多くの雇用を生み出しているといえるでしょう。そして雇用だけではなく、他にも様々な有形無形の価値を生み出しているといえるかもしれません。

 

AIの人間化よりも、人間のが機械化に対して危惧。個人のプライバシーや尊厳を保護すべきと主張

クックCEOは、デジタル化が日に日に進むこの時代に、人々が人間として基本的な感情を失ったり、麻痺していることを危惧しているようです。彼は人々が機械のようにものを考え、プライバシーや尊厳の価値が忘れ去られることを心配しています。

「AI(人工知能)には多くの潜在的な欠点が存在します。しかし私は機械が人のように思考するようになることを心配はしていません。今私が心配しているのは、人々が機械のように思考するようになってしまうことです。私たちは全員が、正確な価値観をもって、人々にテクノロジーを届けることに努力しなければなりません。」

クックCEOは更に、将来のテクノロジーは、ユーザとそのプライバシーと尊厳を保護するために、オープンで、イノベーティブで、セーフガードが備わっていなければならないと補足しています。

 

中国中央政治局常務委員が中国のネット規制について解説

それに対して、中国中央政治局常務委員の王滬寧(王沪宁)氏は会議上で、中国は一種の「コントロール可能な安全保障方式」を提案していると解説し、それによってネットワークに”新しい秩序”を打ち立てたとしています。

「私たちの提案は、私たちはコントロール可能な安全保障方式を促進し、新しいネットワークの秩序を打ち立てるべきだ、ということです」と通訳を介して王滬寧常務委員は語ります。「インターネットセキュリティは一つの厳しいチャレンジでもあります。ネットワーク犯罪とネットワークテロリズムが横行し、世界の運命はネットワーク空間内で更に錯綜し複雑化しているからです」

 

クックCEOの言葉はネット規制を施している中国に響くか

クックCEOが上記のカンファレンスに姿を現したのは、Appleの中国でのビジネスにおいてはキーとなる瞬間となったのではないでしょうか。しかしクックCEOの上記の基調演説が、果たして今回の会議の主催国、中国の国家ネットワーク政策にどのような影響を与えるかについては未知数です。

 

中国のネット規制は、今後も変わらないか厳しくなるだけ

上には未知数、と書きましたが、実際は恐らくほぼ影響はないといえるでしょう。

というのも、中国の金盾(GFW、Great Fire Wall、中国の万里の長城にもじってこう呼ばれる)という巨大ゲートウェイによるインターネット規制は世界的にも有名で、海外のFacebookやTwitter、Google系のサービスやSkype、アメリカを筆頭とする中国政府に対して批判的な論調のメディア、そして日本系のサービスではYahoo!検索やLINE、FC2ブログなどが規制されていて通常の方法ではアクセスすることができません。

また、ネットワーク監視が機械でも手動でも常に行われていて、政府に対する批判などの書き込みは即座に削除される他、いわゆる敏感なキーワードについては検索どころか入力さえできなくなっているという、外から見れば過剰ともとれる規制がかけられています。いわば、中国国内には超巨大なイントラネット・LANが構築され、そこに流れるデータは全て監視されている、というような状態です。

ちなみにインターネットで厳しい審査や規制を課す管理方法を用いているのは世界でもほぼ中国とイラン、そしてごく一部の規制もロシア・ベトナム・タイくらいなものといわれています。。国民にネットそのものの使用規制をしている北朝鮮は論外ですが。。

中国政府は一貫してそれをインターネットの安全、秩序を保つための措置であると解説しています(そして中国のインターネットは常に外に向けてオープンだ、とも。。)。

 

中国がネット規制をする目的とは

中国政府がインターネットを規制する目的は、1つは都合の悪い情報を規制することによって、ネットワーク規制回避方法を知らない或いは必要がないレベル(実は人口の大多数)の国民による、国家への批判をかわす目的が挙げられます。これは政治的な言論統制の一種といえます。

また、監視が効かない国外のネットワークサービスによる通信を潰すことで、中国国内でチベット・ウイグル独立派や自由民権運動を行っている人達同士の連絡を絶とうとしています。これも動乱を防ぐための、政治的な目的の1つといえるでしょう。

そしてもう1つ大きいのは、やはり中国国内のインターネット産業を守るという大きな経済的な目的です。GFWがあるおかげで、中国では国外のサービスと類似したものからスタートし、国家の庇護を受けて独自に発展したサービスが、現在は世界を席巻するレベルにまで成長しています(WeChat、Alipayなど)。

ティム・クックCEOはかなり言葉を選び、中国との提携を誇りに思うとしつつも、AIなど流行りの分野と関連付けしつつネットの発展には自由やプライバシーや個人の尊厳が必要、と中国のインターネット政策を暗に批判したといえます。しかしいくら世界最高の価値がある会社のトップからそんなことを言われても、中国としては、素直にネット規制の政策をやめるようなことは絶対にありえません。

 

中国のネット規制は逆にチャンスだ、と捉えるしかない

というわけで、外にいる我々としては、中国のインターネット政策を批判したり抵抗したところで、何も始まりません。それよりもむしろ、中国の巨大なネット規制を世界に類を見ない特殊な環境だと感じ、逆にチャンスと捉えてうまく使うべきなんじゃないかと個人的には思います。越境ECでもいいですし、AIやVR/ARなど、まだまだ中国には入り込めるチャンスと分野がありそうです。

Appleも、中国国内でのApp Store等へのアクセススピードを劇的に速めることに成功しています。これも、ある意味GFWがあるから、また国がインターネットを規制・管理しているからかもしれません。

私自身もネット規制回避サービスの【1coin VPN】を提供できているのも、ある意味GFWのおかげともいえるわけです(もちろん、必要悪なのですけど)。何でもかんでも自由よりも、制限や規制があった方が楽しかったりする私はちょっと変態なのでしょうか。

xiaolongchakan-1coinVPN

記事は以上です。

(記事情報元:Bloomberg via 9to5Mac

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