Appleの思惑通り?サファイアガラスの提携先、GT Advancedの破産法申請事件の詳細と裏側とは

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GT-Advanced

サファイアガラスメーカーで、Apple(アップル)と提携をしているGT Advanced Technologyが、数日前に破産申請をしたニュースが、Apple関連情報を扱うニュースサイトを駆け巡った。その殆どではiPhone6/6 Plusに採用されなかったからという解説がされているが、直接的原因はそれだったとしても、その真相は果たして本当にそれだけなのだろうか。中国のニュースサイトiFanr(爱范儿)に興味深い文章が出ていたので翻訳と共に私の意見を述べたいと思う。

GT Advanced Technologyの破産申請はAppleと関係がある

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当ブログをはじめテクノロジーニュースの中で、GT Advanced Technology(以下GT Advanced)の名前はよくAppleと共に現れていた。今年9月10日にリリースされた新型iPhone(iPhone6/6 Plus)には、もともとGT Advancedが製造したサファイアガラスディスプレイが用いられるという噂がずっと流れていたからだ。しかし結局iPhone6/6 Plusにはサファイアガラスが採用されず、サファイアガラスによるスマートフォンディスプレイは大きなロット生産するには体制が整っていないことが暴露されてしまった。そしてその影響を受けて、GT Advancedは数日前に突然破産申請をして米国連邦政府の保護下に入った(米国破産法Chapter11適用、Chapter7の破産による清算ではない)。

破産による清算ではないことから最悪の事態は免れた形になるが、この情報が流れた途端にGT Advancedの株価は90%以上も大暴落してしまった。これに関してGT AdvancedもAppleも多くを語っていないが、GT Advancedの破産申請にはAppleが関係がないということはありえないだろう。

GT Advancedの破産申請にAppleは驚いたというが、もちろん前兆はあった

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ウォールストリート・ジャーナルの情報によれば、GT Advancedが破産申請をしたニュースはAppleにとっても寝耳に水で、Appleは非常に驚いたという。昨日、AppleはGT Advancedが破産申請をしたことを「非常に驚きを与える決定だった」と発表している。内部情報を知る人物によると、AppleはGT Advancedとずっと協力関係にあり、その債務の返済能力を保証し、更にGT Advancedのキャッシュフローが悪かったことから、AppleはGT Advancedに対して債務の償還を求めることはなかったという。

しかしGT Advancedの破産申請については先月既にその前兆はあった。9月10日に発表されたiPhone6/6 PlusにGT Advancedが製造したサファイアガラスディスプレイが採用されないということがわかると、破産前に既に同社の株価は30%以上も下落していたのだ。また、GT Advancedが以前約束していた通りの水準のサファイアガラスディスプレイを供給できなかったため、協議によってAppleももともと決まっていた1.39億米ドルの借款を支払わなかったという。GT Advancedはもともと今月末に入る予定だったその借款を当てにして、資金繰りを改善しようとしていたらしい。

また内部事情を知る人物によれば、AppleはGT Advancedに対して、技術的な難問を克服するために協力し、もし製品品質がAppleの要求に達したら、残りの1.39億米ドルをすぐに支払うということになっていたらしい。

GT Advancedはなぜ突然破産申請をしたのか?

GT Advancedがなぜ突然破産申請をしたのか。。GT Advancedからは未だに具体的な原因は明かされていない。同社のCOO、Daniel W. Squillerは、”マーケットの環境によって、資金流動性が危機になってしまった。詳細はまた後ほど”としか語っていない。同時にGT AdvancedはAppleの名前一切出しておらず、”一部のキーとなる顧客との取引”に関係する、とだけ述べている。

GT AdvancedとAppleの関係を遡って検証

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昨年11月、AppleとGT Advancedは提携関係を結び、世界最大のサファイアガラス工場を建設し、工場が完成してフル稼働した暁には、そのサファイアガラスの生産量は現在世界中にあるサファイアガラスメーカーの総生産量の2倍にも達するという計画だった。このような大きな計画の実現を保証するために、AppleはGT Advancedに対して5.78億米ドルの借款をし、そのうち4.39億米ドルは既に支払われており、残りは上記の1.39億米ドルということだ。もともとの計画では、GT Advancedは来年(2015年)からこの借款の返済に入る予定だった。

もともとAppleがサファイアガラスディスプレイを採用するとされていた噂は何も根拠がないわけではない。通常のガラスのディスプレイに対し、サファイアガラスディスプレイは硬度が高く、特にひっかき傷のつきにくさでは他を圧倒するものがある。しかしサファイアガラスには少なからぬ問題もある。例えば重量、コストパフォーマンス、光の透過度、柔軟性などは全て従来のガラスディスプレイに及ばない。これらの問題を克服するのは簡単ではなく、テスト生産でもGT Advancedのサファイアガラスディスプレイの性能はよくなかったようだ。

GT Advancedの破産申請には疑問が残る

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現在、iPhone5以降のiSightカメラ(背面カメラ)の風防ガラス部分やTouch ID(指紋センサー)のところには、GT Advancedが製造したサファイアガラスが用いられている。更に来年販売開始される予定のApple Watchにはサファイアガラスディスプレイが用いられる予定だが、これらの数量を全て合わせても、iPhoneの表面全体を覆うディスプレイに比べたら断然桁が少ない話となる。

今年8月、GT AdvancedのCEO、Thomas Gutierrezは投資家に対して、同社は最終的にはAppleが要求するサファイアガラスディスプレイを作り出す自信があり、1.39億米ドルの借款の残りを得られると説明していた。しかし同社は結果的にそれを成し遂げられなかったことになる。Thomas Gutierrezは言葉を換えて、”これは世界の終わりではない”とし、年末に銀行から4億米ドルの借金をできることを期待しているとしていた。また、更に9月25日、GT Advancedは更に彼らには8500万米ドルの現金があると発表していた。

おかしいのは、数日前に破産申請した時に、GT Advancedとその子会社の資産は合計して15億米ドルあったのに対し、債務は13億米ドルだった。つまり債務超過していないのにもかかわらず破産申請しているのだ。GT Advancedが突然破産申請したことに疑問点が残る理由は、それだけではない。同社はAppleと提携関係を結んでおり、将来的にこの会社が製造した製品はAppleが採用して世界中に売っていくことになるわけで、この先行く末が見えないようなひどい会社ではないということだ。

GT Advancedの破産申請には多くの疑問点が残っているが、これは間違いなくAppleとの複雑な関係がある。あるアナリストの分析では、GT Advancedが破産申請したのは同社がAppleへの方向転換を迫るためだったという。破産法はGT Advancedに対し、18ヶ月の破産保護期間を設けており、その18ヶ月の期間というのはAppleにとっても対策を考える18ヶ月となる。つまり、その間にAppleは今後もGT Advancedへの借款を続けてサファイアガラスディスプレイの開発を続けるか、或いは第三のパートナーを見つけて一緒にGT Advancedを助けて開発を続けるか、はたまたGT Advancedと株取引をするかという選択をしなければならない。Appleは以前既にサファイアガラスプロジェクトに大量の資金を投入しており、GT Advancedとしてはいったん手をかけたんだからAppleに最終的に責任を持ってほしいと考えているのかもしれない。

Appleは今後もサファイアガラスディスプレイの開発を続ける目算が高い

最近京セラ、ファーウェイ(Huawei、華為)、Vertuなどのスマートフォンメーカーが具体的な製品で証明しているように、サファイアガラスディスプレイそのものは問題なくスマートフォンに適用できなくはない。しかしそれらはまだまだ小ロットの製品に使用されるに留まっている。サファイアガラスディスプレイは次世代のディスプレイ素材として表舞台に躍り出る可能性は非常に高い。そうでなければGT AdvancedもAppleと協力してあれほどのサファイアガラスの大きなキャパを持つ工場を作っても、いったいそれをどうやって消化するつもりだったのだろうか。
ただ、フォーブス(Forbs)によれば、サファイアガラスは次世代の製品は大規模に採用されるが、将来的には柔軟性があるディスプレイが主流となるだろうと予測されている。そしてSAMSUNGのGalaxy Note Edgeのようなものがディスプレイ技術発展のドアを開けるとみなされている。

しかしiPhoneのとてつもない出荷量を鑑みると、Appleは新しいテクノロジーを採用するときに、当然保守的になり、成熟した技術を使おうとするだろう。更に柔軟性のあるディスプレイテクノロジーは韓国系のメーカー、特にSAMSUNGが最先端をいっている。競争相手でもあるSAMSUNGからの購買を避けるために、Appleは恐らくこの先数世代については柔軟性のあるディスプレイを採用することはないかもしれない。

現在と未来の狭間で躊躇しているAppleは、GT Advancedの破産宣告を聞いたときに、驚き以外に仕方がないという感覚もあったかもしれない。

コーニング社の過去にみる、今後のAppleとGT Advancedの行方を占う方向性とは

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GT Advancedが破産申請をしたこの一つの事件を語るときに、現在iPhoneにも採用されスマートフォンのディスプレイ素材の殆どを占める”ゴリラガラス”のメーカー、「コーニング(Corning)」社の物語を外すわけにはいかないだろう。

2001年にインターネットバブルがはじけた時、光ファイバー通信業界では、その業界を引っ張ってきたコーニング社が55億米ドルもの損失を出し、株価が113米ドルからわずか1.1米ドルまで大暴落した。その後、同社は液晶ディスプレイ分野で会社全体を救った。2011年、液晶ディスプレイの大量の需要が発生し、供給が追いつかなくなってしまった時に、コーニングの株価は50%も暴落し、2012年には液晶ガラス業務の利潤が32%も下落した。そしてゴリラガラスの開発がまた新たなコーニングの救世主となったのだ。

画蛇添足:GT Advancedの破産申請はAppleの裏の狙い通りなのでは?

これは小龍の個人的な邪推に過ぎないが、もしかしたらGT Advancedの今回の破産申請は、Appleの狙い通りだったのではないか。なぜなら、今ここでAppleがGT Advancedの暴落した株を手に入れてしまえば、GT Advancedを合法的に乗っ取ることができるからだ。

AppleがわざとGT Advancedに過剰な品質と生産キャパ要求を出して、しかも借款をあてにさせていたとしたら。。Appleがそんなあくどい会社ではないことを祈りたいが、サプライヤーに対して数を頼みにした超強気なAppleの購買をするによって、サプライヤーにとっては進んでも地獄、引いても地獄となっているという話を耳にするにつけ、さもありなんという気にもなってくる。。

もしくは、GT Advancedの他の投資家外しのための、AppleとGT Advancedが共同で仕組んだ計画倒産だった。。なんてことはないだろうか。ちょっと勘ぐりすぎだろうか?

記事は以上。

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