Apple PayはAppleのお膝元のアメリカ合衆国ではブイブイ言わせているようだが、世界で2番目の消費者市場の中国では迷走しているようだ。
Apple Pay、中国でサービス開始から1周年。しかし苦戦中
2016年2月18日、Apple Payは正式に中国でサービスを開始した。Appleのティム・クック(Tim Cook)CEOは、中国版Twitterと呼ばれるWeibo(ウェイボー、微博)の公式アカウントで何連発もコメントを発表してこのニュースを伝えたほど、正にハイテンションだった。
しかし1年が過ぎてみると、Apple Payの中国での発展状況は思っていたよりも芳しくないようだ。事実、現在の中国のモバイル決済の状況は、Apple Payが入ってくる前と殆ど変わらない状況だからだ。Apple Payは既存2強の牙城を切り崩すことができていないのだ。
中国最先端都市の繁盛店のKFCでも、Apple Payでの支払が1週間に1〜2注文しかない
中国のメディア≪毎日経済新聞≫の報道によると、現在中国で比較的人が多い商業地域ではAlipay(支付宝/アリペイ。Alibaba/阿里巴巴グループ)とWeChat Pay(微信支付。英語の正式名称がないが、別名Tencent PayやTenPay)が依然として最も主要な決済手段で、Apple Payは殆ど見られない状況だ。
≪毎日経済新聞≫の記者が実際に現地で取材したところ、中国最先端都市の深圳(シンセン)の世界最大の電子市場で、AppleのiPhoneが最も流通・普及しているといっても過言ではない華強北市場にあるケンタッキーフライドチキン(KFC)でも、1週間で1〜2注文くらいしかApple Payでの支払いがないという。ちなみに同店は毎日1000人以上の客が購入する人気繁盛店だ。
AlipayとWeChat Payが中国では圧倒的なシェア、そこにはApple Payに不利な様々な要因が存在
深圳だけでいえば、繁華街でのAlipayとWeChat Payでの決済は既に100%カバーされている。技術的には、AlipayとWeChatはQRコードまたはバーコードの読み込みができるデバイスがあれば、あとはネットがあればいい。最小限の構成では店員が持っているスマホで決済できてしまうのだ。
しかしApple Payはそこまで便利ではない。なぜならApple Payは厳格なハードウェア制限があるからだ。例えばiOSデバイスで、しかもiPhone 6以降の販売機種でなくてはならず、また店側もUnionPay(銀聯)のQuickPass(閃付)に対応したPOSを導入しなければならない。このことがApple Payの普及を妨げるのに非常に大きな影響を与えている。
他にも、Apple Payは決済手数料が0.38%-1.25%と、AlipayやWeChat Payの0.6%-2%よりも下げてはいるが、補助金がAlipayやWeChat Payよりも少ないため、結局最終的にはAlipayやWeChat Payの方が店舗にとっては条件がいいということになっているようだ。
またApple Payはショッピング・クーポンアプリやその他のSNSとの繋がりが弱いのも、その決済手段として普及しない原因の1つとなっている。基本的に中国でメジャーな淘宝・美団などのアプリで選べるのはやはりAlipayやWeChat Payの両方あるいはどちらか一方だ。
Apple Payはアメリカではシェア36%でトップだが、中国では一桁か
最近のBRPの統計によると、Apple Payのアメリカでの店舗側でのサポート率は36%、PayPalが34%となっており、アメリカでNo.1のモバイル決済手段となっている。しかし中国では易觀の2016年Q3の統計によるとAlipayのシェアが50.42%、WeChat Pay(Tencent・騰訊傘下の易付通)が38.12%で、この2巨頭だけで実に88.5%のシェアを占めている。その後Alipayのシェアが18%ほど落ちたようだが、その落ちた分はTencent・騰訊傘下の易付通が奪っているという。ちなみにそのシェアをTencentが奪っているのは、SNSとして中国では圧倒的なシェアを持つWeChat(微信)上でのサービスが充実してきており、そこでの支払には主にWeChat Payが使われるようになっているからとみられている。
そしてつまり中国でのApple PayのシェアはAlipayやWeChat Payの残りの11.5%のうちの1部で、しかもかなり小さい比率のシェアしかない、ということがいえそうだ。実際に住んでいてもそう感じる。
Apple Payが中国で普及するための条件とは
Apple Payが中国で普及するには、
- 仕様ハードウェア条件の改善(Apple Payの仕様としては難しいかも)
- 費用面・補助金の改善
- SNSやショッピング・クーポンアプリとの連携を強化
- 提携相手の再選択
以上の4点の実行がどうしても必要だろう。
記事は以上。
(記事情報元:新浪科技)