2018年新型MacBook Airに採用されているインテルCore i5-8210Yは、中途半端でMacに最適化されていないCPUかも

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10月30日に行われたAppleの新製品発表イベントで、MacBook AirとMac miniのアップデートが行われ、多くのMacユーザにとっては嬉しいアップデートとなりました。AppleはMacシリーズについてはどんなメインプロセッサ(CPU、SoC)を使用しているかについては軽く触れるだけで、第〇世代の〇コアのCPU、と述べるに留まっています。公式サイトの仕様ページでも、Intel Core-i〇などのCPUの大まかな分類とクロック数と、そして次キャッシュメモリの数字くらいしか明らかにになっていません。そして今回発表されたMacBook Airに関しても、やはりそのやり方は変わっていません。 しかし、インテル(Intel)のARKデータベースを見てみると、今回MacBook Airに使用されたのはインテルから発表されてまだ間もないYシリーズの省エネタイプのプロセッサであることがわかります。実はこのプロセッサは、MacBook Airが発表されてから後追いでインテルが公表したものです。

2018年新型MacBook Airに採用されているのは、インテルのAmber Lakeチップ、Core i5-8210Y

Appleの公式サイトの仕様ページによると、新しいMacBook Airは動作クロック1.6GHzのデュアルコア(2コア)のCore i5プロセッサを使用していることがわかります。そしてターボブースト時にはクロック数が最高3.6GHzになり、4MBのL3キャッシュメモリが搭載されています。更に、メインプロセッサにはIntel UHD Graphics 617というGPUが入っており、2133MHzのLPDDR3 16GBメモリが適用可能となっています。
そしてこれらのデータを基に(特にGPUのデータを基に)インテルの公式サイトのARK製品データベースを見てみると、これはYシリーズのAmber Lakeの新製品ということがわかります。そしてインテルの正式な型番ではCore i5-8210Yであることがわかります。
Intel Core i5-8210Y スペック
Intel Core i5-8210Y スペック

Core i5-8210YはAmber Lakeチップの中でも特殊な設計

Amber Lakeシリーズのチップの新製品は、他にもCore m3-8100Y、Core i5-8200Y と Core i7-8500Yがありますが、これらに共通する特徴は14nmプロセスで製造されていること、そしてTDP(熱設計電力:消費電力と発熱の目安となる値)が5Wであることです。しかし今回の新しいMacBook Airに採用されたCore i5-8210Yプロセッサは、TDPが7Wに設定されています。これは、高負荷の処理をする際に、動作基本クロックが他のチップより300MHz高くなっていることから、効率よく処理することができます。簡単にいえば、同系列のチップよりも高い処理性能を発揮するというわけです。

最新のMacBook AirはUシリーズからYシリーズにダウングレード。しかも中途半端な性能のCPUを採用

ただ、これまでのMacBook Airが使っていたのはTDP 15Wのチップで、もしそのままの設計概念が受け継がれたのであれば、インテルの最新のUシリーズチップ、つまりWhiskey Lakeのチップが用いられるべきでしたが、今回の新しいMacBook Airでは、ファンレスの無印MacBook用に採用されているYシリーズのAmber Lakeのチップが採用されているのです。今回MacBook Airには、Liquid RetinaディスプレイをはじめTouch IDやTaptics Engineを使ったトラックパッド、バタフライキーボードなど、無印MacBookやMacBook Pro、そしてiPhone XRに採り入れられている最新の技術をふんだんに採り入れられた外装になっているにも関わらず、肝心の処理性能についてはファンレスの無印MacBookと同じレベルということになり、これはファン付きで少し重いMacBook Airを受け容れることで、多少なりとも性能向上を求めているMacBook Airファンとしてはちょっと不快なものではないでしょうか。自動車業界でいえば、トヨタのカムリと同じシャーシや排気量が非常に低いエンジンを積みながら、車体は大きく安全性能などは最新になっているレクサス車(例えばES200、日本未発売)のようなものかもしれません。 しかも、今回採用されたCore i5-8210Yチップは、ファンレスのCore-mプロセッサの設計概念のもとに開発されておきながら、クロック数を上げていて、それでいてUシリーズよりも性能はぐっと落ちるという、悪くいえば中途半端なチップといえなくもありません。

CPU性能を下げて低電力消費にしたはずの最新のMacBook Airは、バッテリー持続時間がほぼ前世代と変わらず

今回のMacBook Airは、性能を犠牲にしてバッテリー効率を上げるためにAmber Lakeのチップが用いられたのかもしれません。しかし、新しいMacBook Airのバッテリー持続時間は、実は前の世代とは殆ど変わりません。最大12時間のワイヤレスインターネット閲覧時間はそのまま、30日のスタンバイ時間も同じです。1種類だけ、最大13時間のiTunesムービー再生というのが1時間だけ延びています。ただ、これに関してはバッテリーそのものの変更とディスプレイの変更による影響が大きそうです。新型MacBook Airに用いられているリチウムポリマーバッテリーは、54Whから50.3Whに容量が減らされていて、ディスプレイの解像度がRetinaレベルまで向上したことから、これまでの非Retinaディスプレイよりもバッテリーを多く消費するのは間違いありません。 ▼最新MacBook Air(2018年モデル)のバッテリーと電源仕様
MacBookAir_2018_Battery_Spec
▼非Retinaディスプレイモデル MacBook Airのバッテリーと電源仕様
MacBookAir_Old_Battery_Spec

CPUダウングレードで、MacBook Airシリーズに終止符か?

MacBook AirがメインプロセッサをインテルUシリーズからYシリーズにダウングレードしたことは、Apple内部でMacBook Airシリーズを終わらせたいからではないか、ととらえることができます。新型MacBook Airの登場で、無印MacBookは軽さ以外には殆ど存在意義がなくなりました。MacBook ProのTouch Bar非搭載モデルも、プロセッサ以外は同様ですが。。 ただ、MacBook Airが最も購入しやすい、低性能で最安値のMacBook製品ライン、と位置づけられるのであれば、今回のアップデートは理に適っているということもできるかもしれません。

Whiskey LakeもAmber LakeもMacにはあまり相応しくないチップ?

いずれにせよ、インテルがリリースしたばかりの第8世代のチップは、UシリーズのWhiskey Lakeであろうと、YシリーズのAmber Lakeであろうと、公式に発表されている数値を見る限り、AppleのMacシリーズにはあまり相応しくないともいえます。というのも、この2種類のチップは、最新のDDR4L または LPDDR4 超電力消費メモリに対応していないからです。更に、インテルはAmber Lakeプロセッサは2イン1デバイス(ノートPCとタブレット一体化デバイス)を更に最適化するために、タッチパネルや手書き機能のインタラクティブ性能を向上したとしていますが、正直それらはMacプラットフォームのMacBook Airには関係ないからです。 更に、インテルはAmber Lakeの新機能として、やはりノートPCとタブレット一体化デバイスのために、厚さを7mm以内に抑え、重量も1ポンド(約453g)以内に抑えられることで、携帯性能が抜群に上昇するとしています。そして1000ギガビットWi-Fi対応、そしてインテル自社開発によるGigabit LTEモデムによってeSIM機能も実現するとしていますが、それらも厚さ15.9mmで重さが1.25kg、eSIM機能も搭載していないMacBook Airとは殆ど関係なく、新型MacBook AirはインテルのAmber Lakeの仕様に合わせて設計されたデバイスではないということがはっきりいえます。逆にいえば、Appleは自社開発のMacBook Airにできるだけ合うCPUを探していて、やむを得ずか、または狙ってか、この中途半端なCPU、Amber LakeのCore i5-8210Yが採用されたともいえます。

Appleは今後Mac用CPUも内製化、現在は過渡期なのかも

Appleは現在、TSMCと手を組んでMac用のプロセッサ(CPU)もARMベースで自社開発しようとしていることは当ブログでもお伝えしました。 インテルはやはり大多数のWindows端末向けのCPUを行っていて、それほど数が出ないMacに関してはCPU部門が非協力的なのかもしれません。ただ、当ブログでもお知らせしているとおり、iPhone用のモデムチップ(ベースバンドチップ)はクアルコム(Qualcomm)がAppleと係争関係となっていることからインテルが独占受注していて、そのことによってインテルも傾いていた経営が持ち直したところもあり、もう少しCPUに関してもAppleに協力してほしい感じもします。 とはいえ、今後、遅くても数年後にはAppleのARMベースのプロセッサによるMacが登場し、性能も最適化される上に、インテルのリリースや出荷スケジュールに影響されることもなくなっていくのではないかと思います。現在は過渡期ともいえるのかもしれません。

半端な感じのCPUを搭載した最新MacBook Air、あなたは買い?

さて、あなたは最新のMacBook Airを買いますか?私は普段使いで画像や動画処理などは殆どしないので、正直MacBook Airでも十分なような気がしますが、既にMacBook Pro 15インチを使い慣れていることもあり、それに比べると以前置き引きされてしまった無印MacBookは8GBメモリだったこともあり、ブラウザのタブを沢山開くと動きがすぐにもっさりとするなど、性能面で辟易としていました。そうなると、性能面で比較するとしても、MacBook Airよりも2018年のMacBook Pro 13インチ(Touch Bar搭載モデル)の方がいいような気がしてきました。笑 記事は以上です。 (記事情報元:Engadget
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