AFPの報道によると、米Apple社は27日に、「iMac」「iPhone」「Apple Park」などの製品や建造物などの製品デザインを主に手がけ、Apple内で中心的な役割を担っていたジョナサン・アイブ(Jonathan Ive、以下ジョニー・アイブ)最高デザイン責任者(CDO)が年内に退職し、自らのデザイン会社を立ち上げることを発表しました。
ジョニー・アイブCDOは、「Appleなどを主要顧客とする独立したデザイン会社を設立するため」にAppleを退職する、とAppleは説明しています。また、ジョニー・アイブ自身もThe Financial Timesのインタビューで、「私は(Appleの)従業員ではなくなりますが、私はまだずっと関与するでしょう。今後何年もの間、私はそうなるよう望んでいます」
そしてジョニー・アイブは来年2020年には「LoveFrom」という名前の新会社を設立し、Appleの主要なクライアントリストに加わるとみられ、新しいクリエイティブビジネスを創造するために尽力するとしています。
ティム・クック(Tim Cook)CEOは、「ジョニーはデザイン界で唯一無二の人物であり、アップル再生で果たした役割はどんなに強調してもしきれないほどで、1998年の革新的なiMac(アイマック)に始まり、iPhone、そして彼が多大なエネルギーと関心を注いできた前例なき野心的事業であるアップルパーク(Apple Park)にも及んでいます」とメディア向けコメントを発表しています。「Appleは、独占的なプロジェクトで彼と直接仕事をすることによって、そして彼が築いてきた華麗で情熱的なデザインチームの継続的な仕事を通じて、ジョニーの才能から恩恵を受け続けるでしょう。何年もの間密接に協力してきた結果、私たちの関係が進化し続けていることを嬉しく思います。そして、将来にわたってジョニーと一緒に仕事をすることを楽しみにしています」
これまでジョニー・アイブがAppleにしてきた貢献は計り知れず、それはかつてのCEO、故スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)による抜擢と重用があったからに他なりません。しかもジョニー・アイブはスティーブ・ジョブズの死以来、Appleの中で最重要人物ともいわれたスターデザイナーでした。そしてジョニー・アイブが関わったのはデザインだけではありません。デザインは機能と連動するものであることをジョニー・アイブはたびたびインタビューで語っており、Apple社内でも単なる外観デザインに留まらず、機能性についても大きな発言力と影響力を持っていたといわれています。
ジョニー・アイブはApple社内だけではなく、世界のコンシューマー向け製品デザインの方向性に大きな影響を与え、大きく変えた人でもあります。
ジョニー・アイブはイギリス人で、アメリカの会社で働くことで家族との時間をずいぶんと犠牲にしてきたようです。
そして最近はデザイン業務はAlan DyeとEvans Hankyの二人に任せ、本人は実務にはあまり関わっていなかったともいわれています。
今回の退職後のジョニー・アイブによる新会社もAppleを主要顧客とするということで、今後もApple製品のデザインにジョニー・アイブが引き続きデザイナーとして関わる関係は続きそうです。ただ、これまでのデザインチームのトップという立場とは異なり、外部からの協力ということになるので、これまでの機能性への意見出しなどは少なくなる可能性が高く、Apple製品のデザインと連動した機能という特徴というかDNAが社内にどれだけ根付いているかが今後のAppleの将来を左右するかもしれません。
ジョニー・アイブはインタビューで、「30年近くに及ぶ数え切れないほどのプロジェクトの後、私はAppleでデザインチーム、プロセス、そして文化を築くために私たちが行ってきた永続的な仕事を最も誇りに思っています。今日、Appleはその歴史のどの時点よりも強く、より力強く、そして才能にあふれています。」とアイブCDOはインタビューで語っています。「チームは、私の最も近い共同研究者の一人であったEvans、Alan、およびJeff(ジェフ・ウィリアムズ Jeff Williams COO)の優れたリーダーシップのもとで確実に成功するでしょう。私はAppleのデザイナーの同僚たちに最大限の自信を持っています。彼らは私の最も親しい友人であり続け、今後何年も彼らと仕事をすることを楽しみにしています。」
Appleにはもちろん素晴らしいデザインチームがいますが、ジョニー・アイブという傑出した人物が離れることで、そのデザイン言語が変わってしまうのではないかと危惧する声もあがっています。逆に、ジョニー・アイブが退職することでこれまで滞っていたことや妙に固執していたことから解放されるということで歓迎する声もあります。
しかしこれでスティーブ・ジョブズ時代からの古参の上級副社長(シニア・ヴァイス・プレジデント、SVP)は、残るはティム・クック、フィル・シラー(Phil Schiller)、エディ・キュー(Eddie Cue)の3人だけとなりました。ジョニー・アイブの退職は、一つの時代の終わりを意味するものです。時代の移り変わりを感じますし、ちょっと寂しい感じがします。。そしてこれがAppleの大きな転換点になるのかもしれません。
記事は以上です。
(記事情報元:AFP、The Financial Times)