当ブログでもお伝えしたとおり、2月18日の明け方5時、Apple Payは正式に中国に上陸した。
Appleは中国ではAlipay(支付宝)やTenpay(微信支付)などの既存のモバイル決済サービスと競争することになる。では、具体的な数字はどうだろうか?
Apple Payサービス開始12時間後に3800万枚の銀聯カードがApple Payに紐付け
台湾のDigitimesの報道によると、匿名の中国銀聯(Union Pay、ユニオンペイ)の内部の情報筋が、昨日18日午後5時、つまりサービス開始12時間後に内部で発表されたレポートによると、中国のAppleユーザが3800万枚もの銀聯に対応した銀行カードを紐付けしたということを明らかにしたという。ちなみに銀聯(ユニオンペイ)は中国の銀行のオンラインネットワークのことで、中国で独占的な地位を築いているため、外資系を除き中国国内の銀行で銀聯に属していないところはないといっても問題ないだろう。
この3800万という数字、日本であれば人口の4分の1くらいなのですごいのかもしれないが、では中国ではどうなのだろう?中国の好奇心日報からの記事で面白い分析が行われているので意訳しつつご紹介したい。実際にApple Payが使用可能で現在主流のiPhone 6とiPhone 6sの中国でのユーザ数を分母として考えるとわかりやすいかもしれない(ちなみに銀聯がApple Payに対応しているので、香港や台湾の銀行カードやクレジットカードでも銀聯に対応したカードであれば紐付け可能とのことだが、私は試していない)。
中国のiPhone 6/6sユーザのうち46%のユーザがApple Payサービス開始12時間後ににカードを紐付け?
2014年10月にリリースされたiPhone 6から、昨年2015年末まで、6四半期で、大中華圏では8219万台のiPhoneが販売されたとされている(この数字は各地域の売上げとiPhoneの世界での販売台数から算出されたものだ)。
ただこの8219万台という数字は非常に疑わしい数字だ。というのも中国で流通している香港ではないところからの密輸品の数字が含まれていないからだ。そして今年第一四半期の数字も入っておらず、またこの数字のうち、iPhone 6よりも前のiPhone 5s以前のデバイスも含まれているからだ。
とはいえ、大まかな中国地区でのApple Payユーザとなり得る顧客の数としてはまずまず参考となる数字だろう。
なお、18日午後5時には、まだ多くの人がiPhoneにクレジットカードを紐付けできていないことも考慮に入れなければならない。これはAppleが段階別にアカウントを開放していること、またサーバが処理に追いついていないこと、そしてiOS 9.2以上でないとカードを追加できないことも影響していると思われる。いずれにせよ、全てのApple Payを使いたいユーザがすぐに使えるようになったというわけではないのが現状だ。
それを踏まえて、12時間以内に半数のユーザがApple Payを試そうとした可能性があると仮定すると、約4100万人となる。
Apple Payでは最多でも8枚の銀行カードが紐付けることができるが、大多数の人はそんなことはしないだろう。また新しい銀行カードを紐付けしようとするとエラーが長い間発生していた。ということで、1人が2枚の銀行カードを紐付けしたと仮定して、3800万のカードが紐付けされているということは1900万人がApple Payを既に紐付けたことになる。
このような完全に頼りにならない計算で算出された数字ではあるが、46%のiPhone 6/6sユーザがApple Payと銀行カードを紐付けしたことになる。そしてこの46%はとても素晴らしい数字といえよう。話題性もあり、順調な滑り出しといえそうだ。
中国では巨大な競合サービスが2つ、普及にはハードルも
ただし、Appleが中国で直面するのは、サービスを開始したとしても、実店舗やネット上の仮想店舗でまだまだApple Payに対応しているところがほとんどないという問題だ。
Apple Payが挑戦しなければいけないブランドは街中に溢れている。そして中国では殆どのスマートフォンユーザが既存のAlipay(支付宝)やTenpay(微信支付)を使用している。つまりAppleはビジネス提供者にわざわざApple Payを導入するに値する十分な”動力”を与えなければならない。そうしなければApple Payはユーザに体験してもらうことができないだろう。現在は新しもの好きの中国人がこぞって登録したのだろう。最初に飛びついたユーザがサービスを継続して使用してくれるかどうかはApple Payのユーザ体験如何にかかっている。
画蛇添足 One more thing…
確かにApple Payは、実店舗ではiPhoneをロック解除する必要もなく、Touch IDのところに指を当ててNFC(裏面のAppleロゴマークのところ)を対応POSマシンにかざして読み込ませればいいので非常に支払いが簡単で便利なのは間違いない。しかし、街中どこを探してもその対応POSが見つからないのではせっかく便利でも何の意味もない。そして店員が操作方法を知っているかもまた重要なユーザ体験の一つだ。みんながみんな、レジの人にどうやってApple Payを使うのか教えてあげる暇があるとは限らないからだ。ちなみに私は昨年韓国ソウルに行ったときに、空港のコンビニで中国のAlipay(支付宝)が使えるとレジに書いてあったので使おうとしたら、レジ担当者にどうやって使ったらいいかわからないので使えませんといわれて結局使えず、がっかりした思い出がある。
銀行カードやクレジットカードをiPhoneに紐付けできるようになったからといって、それだけで誰もがApple Payを使い出すわけではない。街中やオンラインショッピングで便利に使えるようになるかどうか、それが普及の明暗を分けるポイントとなるだろう。
中国では、旧正月で家族や友人同士で送りあう”压岁钱””红包”というお年玉のようなものを使うためにモバイル決済のAlipayやTenpayが使えるようになり(アプリにその機能がある)、また中国版紅白歌合戦的な旧正月の国民的番組”春节晚会(春晩)”でAlipayアプリを開いてボタンを連打するとお年玉がもらえるというキャンペーンを毎年しかけることで、AlipayやTenpayはここ2〜3年で中国で爆発的に普及してきた感じがする。上記の通り、中国人でiPhoneかAndroidかに関わらずスマートフォンを使っている人のほぼ全てがどちらかのサービスを使っているといっても過言ではない。
街中でも、都市部では特にチェーン系店舗でAlipayかTenpayのどちらか、或いは両方で支払えるようになっているところが相当増えてきた。中国のネットやアプリでのサービスやショッピングでも基本的にAlipayやTenpayの両方が使え(使えないものは皆無といってもいいくらい)、街中を歩くのに特に財布や現金を持ち歩かなくても、iPhoneやAndroidのスマートフォンでAlipayかTenpayが使えれば問題ないくらいになってきている。中国では独占企業である銀聯(Unionpay)の決済サービスQuickPay(闪付=閃付)さえAlipayとTenpayがあるために普及に苦しんでいるというのに、そんな市場に外資のApple Payが入り込むのは並大抵のことではない。Apple Payが店側も消費者側も喜ぶようなサービスとユーザ体験を提供できるか、これからも継続的にウォッチしていきたい。
個人的には、脱獄可能なiOS 9.0.2でもApple Payを使えるようにしてほしい。地域を変更してWalletで中国の銀行カードの追加を試みたが、ソフトウェア・アップデートが必要ですと表示され追加できなかった。私自身がApple Payを試すのはずっと後のことになりそうだ。
記事は以上。
(記事情報元:好奇心日报 via 网易科技)