Appleはユーザのプライバシー保護と国家の安全のどちらを優先する?

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WWDC(世界開発者会議)が閉幕したAppleだが、ますます業界内外の人の注目を集めるばかりだ。Appleの前進は誰にも止められない。Appleのティム・クックCEOは希代の先見の明を持った指導者だ。しかし、AppleとクックCEOは国家のセキュリティということになると途端に言葉が曖昧模糊となる。米国民はこのテック業界の巨人に色々と意見があるはずだ。

Apple_company

数日前の演説で、クックCEOはAppleのユーザデータに対する暗号化について、米国政府が自身で破ることができないためやめさせようとしたことについて、米国政府を批判した。クックは米国憲法の中から、国民がプライバシーの権利を持っていることを引き合いに出し、また政府が強調するAppleのユーザデータへの暗号化が米国国民のセキュリティに影響するという主張に疑問を呈した。クックは「Appleでは、ユーザにプライバシーとセキュリティのどちらかを選んでいただく必要ありません。私たちはユーザに、同じレベルのプライバシーとセキュリティを提供することができますし、必ずそうしなければなりません」と語っている。

当然、ティム・クックは正しいプライバシーはとても大切だ。私たちは今日、生活の場面の多くをインターネット上に移し、各企業・政府機関・銀行やソーシャルネットワーキングサービスに大量の個人情報を晒している。そのため、これらのプライバシーデータ保護の需要はますます膨れあがっている。この点については、Appleはユーザの権益をよく保護しているといえるだろう。

しかしもう一方では、これらの情報は犯罪者(容疑者含む)をいち早く見つけ逮捕したり、事件を調査することなどで大衆を危険から遠ざけることに役立つのも確かだ。Appleのこの頑なな態度は逆に社会からは憂慮されはじめている。しかも、最近このプライバシー問題で議論されているのはテロとの戦いにまつわるものだ。政府あるいは警察当局がユーザのプライバシーに一切アクセスできないとなると、行政にマイナスの影響が出る可能性もある。

この問題について、ティム・クックは何ら解決方法を示していない。彼はAppleがユーザのプライバシーの権益を保護し、セキュリティも提供したい、ということを明らかにしてはいるが、それをどのように行うのかということは説明していない。特にAppleが裁判所の命令があった場合に、行政機関にユーザのプライバシーを提供する(暗号化を解くことを可能にする)ことに同意しないことは、逆に多くの人のセキュリティに危害を及ぼす可能性がある時のことを

最近、米国の主要都市の犯罪率はいったん下がったもののまた上昇傾向にある。国際テロ組織の動きがますます過激になっている傾向もあり、ネットワーク犯罪は急激に増加している。最近発生した大規模なハッキング攻撃によって400万人もの米国連邦職員のデータが流出した事件が示すように、Appleがやらなければいけないのは大衆に向かって絵空事を述べることではない。Appleがやるべきことは米国政府と協力し、行政機関をもっと現代的に進化させ、一般市民が重視するプライバシー権益を損なわない範囲内で全く新しい方法で犯罪活動を追跡したり予防したりする方法で”イノベーション”をもたらすことではないだろうか。これは非常に手のやける問題だが、Appleは世界最大の企業であって、非常に大量の人材とリソースを持っていることを鑑みれば、同社は政府が問題を解決するときに大いなる助けになる。もし政府に対しては全てのユーザ情報の暗号化を解くことを拒絶するのであれば、何らかの別の方法で行政機関が必要な情報を提供する方法は残しておくべきではないだろうか。

Appleが政府に一切協力しないという行為は、米国のユーザへの責任を消極的に放棄していることになる。クックCEOは、Apple自身が問題の一部ではないにしても、それはAppleがもっといい解決方法を提供して政府を助ける必要がないわけではない、ということを意識する必要がある

画蛇添足 One more thing…

上記は私の意見ではなく、ハフィントン・ポストの記事を翻訳したものだ。最後の一文は滑舌が悪いが意味はわかっていただけるだろう。

米国のハフポストからこのような意見が出るということは、やはりAppleのプライバシー保護について、米国内でも別の懸念がもちあがっているのは確かなようだ。Appleは世界で一番利益を出している会社になってしまった。その責任を果たす必要があるのは間違いないだろう。プライバシーは大切だ。しかし犯罪者のプライバシーまで守って彼らを政府・行政機関から保護する必要があるのか、ということだ。

最後に、やはり原文が大事ということで、Apple公式サイトに掲載されているティム・クックからのプライバシーに関するメッセージを引用して締めくくろう。

あなたのプライバシーに関するAppleの取り組みについて。
Tim Cookからのメッセージ

Appleにとって、あなたの信頼は何よりも重要です。だから私たちは、あなたのプライバシーを尊重し、強力な暗号化とすべてのデータの扱い方を規定する厳格なポリシーによって、あなたのプライバシーを保護しています。

セキュリティとプライバシーは、Appleのすべてのハードウェア、すべてのソフトウェア、そしてApple Payのような新しいものやiCloudを含むすべてのサービスの設計に欠かせないものです。そして私たちは常に改良を続けています。すべてのお客様におすすめしている2ステップ確認は、あなたのApple IDのアカウント情報を保護します。しかもこの確認方法により、あなたがiCloudに保存しているすべてのデータを保護しながら、それらを最新の状態に保つことができるようにもなりました。

Appleでは、あなたの個人情報がどう取り扱われるかについて、最初にあなたに正確にお伝えすることが大切であると信じています。あなたの個人情報をAppleと共有していただく場合には、事前にあなたの許可を求めます。後にあなたの考えが変わった時は、Appleとの共有を簡単にやめることができます。すべてのApple製品は、これらの原則を中心に置いて作られています。私たちがあなたのデータを利用させていただくよう依頼する場合は、より優れたユーザー体験をお届けすることが目的です。

私たちは、あなたの個人情報の取り扱い方と、どの情報を収集してどの情報を収集しないか、なぜそうするのかを説明するために、このウェブサイトを用意しました。プライバシーに関するAppleの最新情報を少なくとも年に一回、そしてポリシーに大きな変更があった時に、このウェブサイトで必ずお知らせします。

数年前、インターネットサービスの利用者は、無料のオンラインサービスを使っている時、自分が顧客ではなく製品の一部になっていることに気づき始めました。しかしAppleは、優れたユーザー体験とは、あなたのプライバシーを犠牲にして作るものではないと信じています。

私たちのビジネスモデルは明快です。素晴らしい製品を販売することです。私たちは、広告主に売るために、あなたのEメールの内容やネットサーフィンの習慣からプロフィールを作り上げることはしません。あなたのiPhoneやiCloudに保存されている情報を「換金」したりしないのです。あなたのEメールやメッセージを読んで、あなたに何かを売り込むための情報を集めることもありません。Appleのソフトウェアとサービスは、Appleのデバイスをより良いものにするためだけに作られています。わかりやすくてシンプルです。

Appleのビジネスのうち、ほんの小さな一部分だけが広告主のために存在します。iAdです。一部のアプリケーションデベロッパがそのビジネスモデルに依存しているため、Appleは広告用のネットワークを作りました。無料のiTunes Radioサービスと同様の形で彼らを支援したいと考えているのです。iAdには、ほかのすべてのApple製品と同じプライバシーポリシーが厳密に適用されます。iAdは、ヘルスケアアプリケーション、HomeKit、マップ、Siri、メッセージ、あなたの通話履歴からデータを取得しません。連絡先やメールをはじめとするiCloudのすべてのサービスでも同じです。また、あなたはいつでも興味や関心にもとづく広告の配信を停止することができます。

最後にはっきりとお伝えしたいことがあります。Appleはこれまで、自らのすべての製品とすべてのサービスにおいて、どの国のどの政府組織に対してもバックドア(情報の裏口)を設ける協力をしたことはありません。Appleのサーバへのアクセスを許容したこともなく、今後も決して許容しません。

あなたのプライバシーを保護するAppleの取り組みは、お客様一人ひとりへの深い敬意に根ざしています。私たちは、あなたの信頼は簡単に得ることができないことを理解しています。だからこそ私たちはこれまで、あなたに常に信頼していただけるように最大限の努力を続けてきました。これからも、その努力を常に続けていきます。

Tim

引用元:Apple公式サイト「プライバシー

記事は以上。

(記事情報元:S. Kumar, huffingtonpost.com via tech2ipo

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