Appleの想定使用時間が3年!iPhoneが3年しか”スマホ”と呼べない理由とは

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Apple-環境-Liam

Appleは日本時間3月23日未明に行われた春の新製品発表スペシャルイベントにおいて、iPhone解体ロボットの”Liam”を声も高らかに宣伝した。Appleは更にウェブサイトのAppleロゴマークの葉の部分を緑に変えて”アースデイ(Earth Day)”に合わせた地球環境、エコに関するポリシーを強調している。しかし面白いのは、その環境のページのQ&Aコーナーで、Appleははっきりと、一般的にOS XデバイスとtvOSデバイスは4年、iOSデバイスは3年使うことを想定していると書いていることだ。

ユーザーによる使用をモデル化するためには、模擬的な使用シナリオのもとで稼働する製品の消費電力を測定します。日々の使用パターンは各製品に固有のもので、実際のユーザーとモデル化したユーザーのデータを組み合わせたものです。1人目の所有者を基準にした使用年数は、OS XまたはtvOSを搭載したデバイスは4年iOSまたはwatchOSを搭載したデバイスは3年を想定しています。製品のエネルギー使用量に関する詳しい情報については、Appleの製品環境報告書をご覧ください。

Apple公式サイトから引用

このスマートフォンの寿命の問題について、The Guardianなどのメディアは議論を繰り広げているが、中国のテック系メディアiFanrがスマートフォンが3年で使えなくなる理由を面白くまとめているので、日本の事情に合わせた訳もまぜつつご紹介したい。

80000円以上するスマートフォンが、3年で使えなくなる?

AndroidユーザはスマートフォンのAndroid OSが「アップデートできるかできないか」について頭を悩ませているが、iOSユーザはどちらかというと「アップデートをするべきかしないべきか」について悩んでいることだろう。iPhoneには、Appleは毎回iOSをアップデートするたびに、わざと古いデバイスの動作を遅くして、新しい機種に買い換えるように促しているという都市伝説があるほどだ。

つまり、iOSデバイスの使用可能寿命については、実はユーザにとっては非常に敏感な話題であるのは間違いないのだ。

そしてAppleは冒頭の通り、iOSデバイスやwatchOSデバイスのスマートフォンやスマートウォッチの寿命を3年と想定している。

日本ではキャリアとの2年縛り契約で購入している人が多いため、端末単体で購入している人は少なく実感がないかもしれないが、税抜き価格で86,800円もするiPhone 6s 16GBがもし3年しかもたないのであれば、毎年約28,900円を支払っていることになり、これを日に直すと毎日約80円を支払っていることになる(消費税は計算に入っていない)。

大枚はたいてiPhoneを買うわけだから、多くの人はできるだけ長く使いたいと考えるはずだ。しかしAppleはなぜあなたの手元のiPhoneを3年しか使えないと想定してるのだろうか?3年経ったら自動的に爆発するとか、自動的に消滅するとか、どこかに飛んで行ってしまうのだろうか?Appleはそれに関してはそれ以上の説明をしていない。

では、実際に3年以上もつかどうかを想定しつつ、3年は妥当なのかを検証してみよう。

 

バッテリーの持ちが最大の問題に

AppleがiPhoneの使用期間を3年と想定しているのは、最大の原因はバッテリーにあるのではないかと思われる。

一般的にスマートフォンに使われるのはリチウムイオン(Li-on)バッテリーだ。寿命は使用回数によって変わってくる。毎回充電サイクルが経過する毎に、その寿命を少しずつ縮めているというわけだ。Apple公式によれば、iPhone 6sのバッテリーは500回の充電サイクルの後、80%のバッテリー残量が残る、としている。ということは、1回の充電サイクルによって、0.04%寿命が縮まるという計算となる。

大抵のユーザは1日に1回は充電するだろうから、3年経つとiPhone 6sのバッテリーは56.2%しかバッテリー容量が残らないことになる。しかもこれはかなりいい環境でバッテリーを使った場合だ。多くのスマートフォンは3年後にはバッテリー持続時間は半分となるといわれている。ちなみに10年前に発売された初代iPhoneを毎日使っていたのであれば、毎回バッテリーを満充電しても、今では15分ほどしかもたないという計算となる。

iphone_6_battery_june_1810-800x657

そして誰もが知っているように、もともとスマートフォンのバッテリーは十分ではないのに、更に50%になってしまったら、とても耐えられるものではない。更に、iPhoneは問題がもっと複雑だ。なぜならiPhoneは初代から薄型のデザインにするためにバッテリーを内蔵タイプにしており、自分で交換できないようになっているのだ。もちろん、問題が解決できないわけではない。

Apple公式でもバッテリー交換が可能だ。Apple公式iPhoneサポートページによれば、製品保証期間内やApple Care+の期間内なら0円だが、保証外では9,400円(税別)を払えばバッテリーを交換してくれる。他にも、街のiPhone修理屋さんでもバッテリーを交換してくれるところがあるだろう(そして間違いなくApple公式より安いはずだ)。お金があれば、バッテリー寿命をもう一度リセットすることができるというわけだ。

 

iOSをアップデートするべきか?アップデートしなくても平気か?

特にバッテリーは問題ない、どうせモバイルバッテリーもあるし!だからiPhoneは買い換えない!という方にとっても、この問題は解決しなければならない。そう、iOSのアップデートをするべきか、またはするべきではないか?という問題だ。

毎回iOSがアップデートされるたびに、iPhoneが遅くなったり、フリーズするなどの各種の問題が発生している。iPhoneにとって、毎年iOSがアップデートされるたびにそのUXは悪いものになっていく。

例えば、昨年のiOS 9アップデートの場合、iPhone 6をiOS 9にアップデートしても、それほどUXに差はない。しかしiPhone 5sをiOS 9にするとiPhone 6に比べると大きな影響がある。そしてiPhone 5をiOS 9にすると、そのUXは急激に低下する。AppleはiOS 9に関してはiPhone 4s以上というかなり古い世代のiPhoneもサポートしており、古い機種にはいくつかの新機能をオフにすることで動作を軽くするように工夫はしているものの、世代が2つ以上古い機種では最新のiOSではストレスを感じるということなのだ。

▼iPhone Slowというキーワードで検索された”キーワード検索熱”グラフ。基本的に秋に新iOSがリリースされた時期にぐぐっとこのキーワードが上がってくるというわけだ。

iPhone-Slow

これもiOSデバイスの使用期間が3年に想定されている原因の、もう1つのキーとなる問題なのかもしれない。

もちろん、iPhoneのiOSをアップデートしないという選択肢もある。例えば古いiPhone 4でも、iOS 5のままであれば十分今でも快適に使用することができる。つまりiOSをアップデートしなければ、速度が遅いと感じることはないのだ。しかしお金をけちって新機種を買わず、スムーズに動かしたいのでiOSをアップデートしない、という選択をした時には、それなりの代価を払う必要がある。まず1つは、iOSアップデートでは大量のセキュリティアップデートが含まれるため、もしアップデートしないとデバイスにセキュリティ面での不安を抱えることになる。そしてもう1つは、アプリの開発者は古いバージョンのOSのサポートを打ち切っていることが多く、iOSのバージョンが古くなればなるほど、アプリのアップデートができなかったり、新しいアプリがインストールできなかったりするのだ。

 

なぜパソコンは長持ちするのか?

ではなぜMacBookのようなパソコンは、iPhoneよりも長持ちするのだろうか?多くの人が古いタイプのパソコンを今でも使用している。私も最近まで2011年モデルのMacBook Airを使っていたくらいだからだ。Appleに限らず、マイクロソフトのウインドウズでも、未だにWindows XPを使っているユーザもいると聞く。

▼未だにWindows XPの人、いませんか?

 

Windows-Start-Menu-Windows-XP

なぜパーソナルコンピュータはスマートフォンより長持ちするのだろう?以下にいくつかの要素がある。

  • パソコンやノートパソコンはそれほど持ち運びに便利ではないため、基本的には充電しながら、または電源を接続しながら使用されることが多い。そのためバッテリー持続時間はあまり問題にされない。
  • これまでWindowsもMacもアップデートは有料だったため、必ずしもアップデートが必要なものと想定されていなかった。
  • パソコンの一般的な役割が3Dグラフィックカードのパワーが必要なゲーム機ではなく、単にインターネットのWebsite閲覧や、Office 2013くらいのものが動けば十分というような使われ方になってきたため、スペックへの要求が高くなくなった。

 

3年経つと全然”スマート”じゃなくなる

2010年にiPhone 4がリリースされた時、まだまだ多くの人がノキア(NOKIA)の携帯を使っていた。当時主流だったのは、このノキアが作っていたような多機能携帯電話だったのだ。そしてその多機能携帯電話を今取りだして操作して電話などをしてみると、もちろん全く問題なくスムーズに動作する。これこそが携帯電話は一回買ったら何年も安定して使えるという認識に繋がった可能性がある。

しかし今日ではスマートフォンの市場競争は熾烈を極め、各スマホメーカーがありとあらゆる最新のハードウェアと最新の機能をスマホに詰め込んで出してきた結果、10年来iPhoneのプロセッサの処理速度は爆発的に向上している(下図参照)。iPhone 6sのスピードからすれば、5年前のiPhone 4sなどあまりにも時代遅れなデバイスなのだ。

iPhone-CPU-Speed

iOS 9が現在もiPhone 4sをサポートしていることを考えると、Appleも当然ながら、現在でも少なからぬユーザがiPhoneを3年以上使用していることを認識していると自ら示しているようなものだ。しかし極度に苛烈な競争に晒されているアプリ開発者にとって、古いデバイスのサポートになどは手が回らないはずだ。そんなわけでスマートフォンは3年も経てばカクカクして動きがトロい代物になってしまうか、または何の新しいアプリも入れられない”多機能携帯電話”になってしまうというわけだ。つまり、”スマートフォン”から”スマート”が抜け落ちてしまう、というわけだ。

しかし今の貴方は、LINE、FacebookなどのSNSやその他の最新アプリを使わない生活を考えられるだろうか?”スマート”の実現には、代価を払う必要があるということなのかもしれない。

それでもエコを目指したい?節約もしたい?という方は、現在Appleは中古iPhoneの下取りもしている。またiPhone買い取り業者に引き取ってもらうのも手かもしれない。

 

画蛇添足 One more thing…

テクノロジーが日進月歩、ドッグイヤーなどと表現されるほどすさまじいスピードで進化し続けている中、これまでの主役はコンピュータだったところがスマートフォンに切り替わったというところではないだろうか。そしてそこに大量のリソースが使われるようになり、更に進化のスピードも速くなるという。。とりあえず今のところかつての”ソニータイマー”と呼ばれたような仕掛けはないようだが、実際には3年以上経ったら使用に支障が出てくるように仕掛けているのは間違いないだろう。

そしてスマートフォン全体としては市場競争原理によって発展してきたが、今後はスマートフォンに代わる何かが出てくる可能性もある。

ただAppleも3年の使用を想定、ということは、今後はiPhoneも2年に1回のメジャーアップデートではなく3年に1回のメジャーアップデートに切り替わっていくのかもしれない。最近KGI証券のアナリスト、Ming-chi Kuo氏がiPhone 7sから筐体変更という情報を出しているのも、このあたりのことを反映しているのかもしれない。ただ、3年でメジャーアップデートでは、Appleの株価には悪い影響しか与えないような気もする。

私自身はこのようなブログを書いていることから、毎年iPhoneは買い換えなくてはならない状態だ。しかもPlusの128GBという最高スペックを買っている。。使い古した機種は家族に回っていくので、それもまたエコ。。なのか。。笑

※2016/4/19追記。本日Yahoo!ニュースでこのことが1日遅れで報道され話題になっているが、AppleはiPhoneは”3年が寿命”などとは一言も言っておらず、あくまで”3年の使用を想定”と言っているだけだ。出回っているニュースの解釈が拡大しすぎで極端すぎるので、そこには注意しておきたい。いくらタイトルで注意を惹こう(釣ろう)としたとしても、ちょっとやりすぎだと思う。

記事は以上。

(記事情報元:iFanr

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