間もなくリリース予定の新書”Becoming Steve Jobs”の中で、ディズニーのCEO、Bob Igerに対して、スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)についてあまり聞いたことのないエピソードを語っていることが明らかになった。
Igerによれば、彼が2006年にディズニーがピクサーを買収するという発表をする30分前に、ジョブズがIgerに対して、「ボブ、今日はとても重要なことを話さなければならない。僕のガンが再発したんだ」と告白したという。当時そのことはジョブズと妻(ローリーン・ジョブズ)と医者以外には、Igerしか知らなかったという。
スティーブ・ジョブズがBob Igerにがんの再発を告げたエピソード
「当時彼は私にこう言ったんだ」とIgerは振り返る。「僕は自分にある約束事をしている。それはリード(Reed、スティーブ・ジョブズの唯一の息子)が高校を卒業するまでは生きるってことだよ」
そこで、私は彼に聞いた。
「Reedは何歳になったんだ?」
するとジョブズはリードは14歳になったという。ということは高校卒業まではあと4年ある。彼は更に「本当のことを言うと、彼ら(医者)は私に、あと5年生きられる確率は50%だと告げたんだ」「このことは僕の子供たちも知らない、Appleの役員たちも知らない、誰も知らないんだ。だから君も誰にも言っちゃダメだよ」「君がそれを私に告げたのは、何か別の理由があるのかい、それともただ僕にそれを言いたかっただけなのかい?」と私は尋ねた。
その結果、彼の答えはこうだった。「僕が君にこれを告げたのは、(ピクサー買収案の)を見直すチャンスをあげようと思ってね」なぜなら、もしディズニーのピクサー買収が完了すると、ジョブズはディズニーの最大の株主になるからだ。
Bob Igerはピクサーの買収を決め、その後Appleの取締役に
その後、Igerはこのことをディズニーの副社長兼法律顧問のAlan Braveermanにのみ告げ、社内の株主権益バランスによる利害関係の問題を調整し、そして最終的にピクサーを買収することを決めたという。
Igerはその後、ジョブズにこう答えたという「もし君が私たちの最大の株主になったとしても、そのことは(ピクサー買収案件には)何の影響ももたらさないよ。私たちが買おうとしているのはピクサーで、君個人というわけじゃないからね」
その後数年間、Igerとジョブズの関係はますます親密なものとなり、2011年にIgerはAppleの取締役会にも自らの一席を設けることになる。
画蛇添足 One More Thing
だんだん明らかになってくる、”Becoming Steve Jobs”の内容。これまでのウォルター・アイザックソン(Walter Isaacson)の公認ジョブズ伝記以外にもジョブズのエピソードが読めるのは嬉しいことだ。
以前の記事「感動、それとも残念!?スティーブ・ジョブズの息子リードが父の遺志を継がない理由とは」に書いたとおり、スティーブ・ジョブズが息子のリードを溺愛していたことがこのエピソードからもわかるだろう。
しかし「私たちが買おうとしているのはピクサーで、君個人というわけじゃないからね」という言葉を聞いて、ジョブズは心の中でどう思ったのだろう。嬉しかったのか、それとも傷ついただろうか。心の内を聞いてみたいが、既にそれはかなわなくなってしまった。
結果としてスティーブ・ジョブズは2006年から50%の確率だと医者に言われた5年間を生き延びて、リード・ジョブズの高校卒業を見届けることができ、その喜びを素直に表した。
リードの高校卒業の日、スティーブは前出の伝記の著者、ウォルター・アイザックソンにメールをした。その中でスティーブはこのように語っている。
“今日は最高に楽しい1日だよ。リードが高校を卒業したんだ。今だったらどんな賭け率だって僕は賭けるよ“
記事は以上。
(記事情報元:cnBeta)