中国のニュースサイトcnbetaに、シャオミとAppleデザインの関係についてまとめられていたので、翻訳・意訳と最後に私個人の意見も添えてご紹介。
ブランド成立から4年、中国のシャオミ(小米、xiaomi)は既にもう某企業からその世界を引き継いでいるかのように見える。そして同社はデザインのインスピレーションについて、Apple(アップル)に対し、全く隠すことなく開けっぴろげにその”感謝”の意を表している。
もしシャオミが本国である中国で更に成長を続け、また国外のマーケットに向け拡張を続けたいのであれば、新たな挑戦をしなければならず、特に知的財産権の重視とその保護に関することについてはもっと気を遣わなくてはならない。
歴史からみても、コピー行為は一時の勢いしか産むことはできないからだ。
■シャオミの創業者でCEO、雷軍(レイ・ジュン Lei Jun)とAppleの共同創業者で前CEOのスティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)。
AppleとMicrosoftも初期は他人のものを盗んでいた
ただ、初期のAppleが発展段階にあったとき、確かにジョブズはゼロックス(Xerox)のアイコンを使ったユーザインターフェイスを”コピー”していた。同様に、マイクロソフト(Microsoft)のWindowsも、AppleのOSから”インスパイア”されたものだ。
しかし、この2社は既に華麗な転身を遂げている。近年来、Appleは逆にiPhoneやiPadをパクってきたSAMSUNGと凄まじい特許訴訟合戦を繰り広げている。
シャオミはAppleのデザインを盗んでいる
ただ、シャオミの物語はそれらとはちょっと違うようだ。AppleとMicrosoftは、概念を”コピー”した(悪くいえば盗んだ)だけだ。しかしシャオミがコピーしているのは間違いなくそのデザインとデザイン要素なのだ。
1つ1つの機能や部品やユニットについては別として、同社は多くの”オリジナル製品”とされるものを製造している。しかしそのデザイン上には他社の製品から”インスパイア”されたものか、或いはほぼ”そのもの”が入り混じってしまっている。
これは決して大して成功していない会社の無知の行為だから仕方ない、とは見做されない。シャオミは自分が何をやっているのかを全く明確にわかっているのだ。同社の模倣対象がAppleなのは明白な事実だ。
シャオミの新機種のMI4の発表イベントの際、同社はCEOの格好までスティーブ・ジョブズを模倣し(黒いタートルネックシャツに青いジーンズという出で立ち)、更にこれでもかというくらいApple製品の話題を出し、そしてはっきりと、iPhoneと同じ製造メーカーに行って、シャオミに対して何ができるかを見てみる、ということまで述べている。
そして当然、プレゼンが終わる頃、背景のビッグスクリーンにはAppleの象徴ともされたあの言葉が映し出された。。「One More Thing」。
シャオミのデザインはAppleやその他のメーカーと酷似なのは周知の事実
もちろん、Appleがシャオミに与えている影響についてはもう既に周知の事実だ。例えばBusiness WeeklyのMI4への評価は”iPhone式スマートフォン”であったし、ニューヨーク・タイムズ(New York Times)は同社のCEOをジョブズの”模倣者”と表現し、Rosenblatt SecuritiesのアナリストBrian Blairは昨年、シャオミは中国外のマーケットの開拓を急がない方がいい、なぜなら同社は所謂”コピーキャットモード(Copycat mode、中国語では山寨模式)”の段階だからだ、としている。SAMSUNGだってその段階でかなり長い時間を使ってきた。
以下はシャオミとApple等他社の製品比較写真だ。ほとんど言わずもがな。。だろう。
携帯電話以外でも、シャオミ・ボックス(Xiaomi Box、小米盒子)はApple TVにそっくりだ。しかし一部の部品レベルの製品では、シャオミはAppleではなく他社のものを模倣している。例えば3.5mmのイヤホンジャックに挿す形のシャオミ・キー(xiaomi Key、米键)はKickstarter上のPressyというプロジェクトをパクったものだ。
シャオミ自体はデザインを盗んだことを認めていない
しかし、これだけ多くのコピーの痕跡を残しながら、同社は”Appleのデザインをパクった”ということを認めていない。CEOの雷軍も、他人から”中国版ジョブズ”と呼ばれるのは好きではないという。以前Googleの副社長Hugo Barraがシャオミに引き抜かれたが、同社はどうやら方向転換を図っているようだ。
Appleのジョニー・アイブのシャオミに対する評価
では第三者の評価はここまでとして、Appleのシャオミに対する観点はどうだろうか。
2日前に行われた「Vanity Fair」上で、Appleの上級副社長でデザインの総責任者を務めるジョニー・アイブ(Jony Ive)は、シャオミのようなメーカーを”剽窃と怠惰”と直言して酷評している。
観客の一人が、シャオミとその非公式の呼ばれ方である”中国のApple”と呼ばれ方についてどう見ているかという質問を受けたとき、アイブは”私はちょっと耳が痛いと感じるし、これはへつらいだとも思わない。あなたが最初に何かをしようとしたときに、あなたはそれが成功するかしないかわからないものだ。しかしあなたが7〜8年努力を続けたものが、他人にいとも簡単にコピーされるのは、それは剽窃と怠惰だ。私はそれはいいことだと思っていない”と述べている。
画蛇添足:中国のコピー、実は日本も通ってきた道。それより今のAppleに模倣されるに足るイノベーションがあるのか
今回話題になったシャオミを含め、中国にはコピー・パクり携帯メーカーがそれこそ星の数ほどある。シャオミはもともとAndroidのUI”MIUI”の成功からハードウェア業界へと転身したが、その他の現在の名だたる中国国産スマホメーカーのうち、Gionee(金立)、Smartisan、MEIZU(魅族)等中華Androidスマホメーカーの雄は、殆どがその初期には安物MP3プレイヤーやガラケー、そしてiPhoneの劣化コピー携帯(山寨機)を作っていたメーカーだ(現在これらの会社のオフィシャルサイトではその暗黒の過去を見ることができなくなっている。恐らく隠したい過去なんだろう)。
シャオミはまだその体質が”コピーキャットモード”のまま、世界最速で1兆円企業に上り詰めてしまったのが問題なのかもしれないが、自身が得意なマーケットで人々が何をいくらで欲しがっているかをよくわかっていたという、すさまじい商才を持ちあわせていたからに他ならない。今はそこで得た金をオリジナルに、よりイノベーティブなものを生み出すために使うように変わってきているだろう。それはAppleだって辿ってきた道だ。
日本の工業だって模倣から始まっている。今をときめくトヨタやホンダだって、もともとは欧米の車のコピーから始まった。問題はその模倣時期をいかに早く脱して、華麗に転身してその会社独自でパクリだと揶揄されないレベルのものを作れるかにかかっている。
ただ、その模倣の対象となっているAppleは、現在も模倣されるに足るイノベーションを作り出しているだろうか。特にiPhone6/6 Plusは私が持っていても、あまりスマートフォンに興味がない周囲の人からは「あれ、Appleあんなに好きだったのにSAMSUNGに変えたの?」と言われるほどだし、Apple Watchなどは強烈に持ちたいと思わせないデザインだ。
その原因の一端は、今回シャオミを酷評したアイブにもあるのではないか(だって、彼がデザイン決めてるわけだし)。
Appleはかつてそのハンマーで壊そうとした巨人(IBM)のようになってはいないか。
中国のスマホメーカーSmartisanから発売されているスマートフォン「Smartisan T1」には、その背面にハンマーを彷彿とさせるTの文字が大きく入っている。実はSmartisanはAppleからかつてiPhoneのデザインをやっていた人物を引き抜いてこのT1をデザインした。それなら、オリジナルといえるだろう。SmartisanのWebsiteやAndroidUIはかなりAppleを意識し、iOS6まで採用されていたスキューモーフィズムが用いられているのも面白い。もしかしたら、スティーブ・ジョブズの魂は中国に引き継がれているのかもしれない。。
・Smartisan T1のプレゼンではSonyの盛田昭夫、そしてAppleのスティーブ・ジョブズも引き合いに出された
さあ、次はどこがイノベーションを生み出すのだろうか!?もしかしたら中国かもしれない?
記事は以上。