iPhoneとAndroidスマートフォンの競争は、コンシューマだけではなく企業や政府、そしてひいては軍事機構にまで及んでいるようだ。
AppleInsiderによると、使用体験上の理由により、米軍陸軍(The U.S. Army)の特殊作戦司令部(Special Operations Command、SOCOM)が今後Androidを設備リストから外し、AppleのiPhoneに切り替えていくという。具体的には、iPhone 6sにしていくようで、Military.comのDoD Buzzによると、そこにはAndroid Tactical Assault Kitの代わりに【iPhone Tactical Assault Kit】が搭載されるという。
米軍は公式にはこのことを認めていないが、特に否定もしていない。ただしこのニュースに対してのコメントは拒絶している。
AppleInsiderの報道によれば、iPhoneはAndroidよりもユーザ体験(UX)に優れていることが、米軍がAndroidを捨てる主な原因となったようだ。軍隊の中では、スマートフォンは作戦・戦術装備セットの中で重要な役割を果たしている。司令部はスマートフォンを通じて兵士の動きを追跡・把握し、動画や音声機能で指令を伝える必要があるからだ。
内部事情に詳しい人の情報によると、米軍がAndroid端末を使用している時に、デバイスがしょっちゅう固まってしまい、再起動しなければならないことが多かったからだという。特に画面分割で2つの機能を同時に使う場合に端末が固まる確率が飛躍的に上昇するという。そしてiPhoneは”速く、スムーズで、シームレス”と比較評価されており、また画面上の表示も”信じられないほどクリアだ”と評価されているようだ。
先月、米国政府(オバマ大統領含む)もとうとう長年使っていたブラックベリー(BlackBerry)をやめ、iPhoneに切り替えることにしている。Appleにとっては、米国政府や軍隊に採用されることで、今年後半や来年、消費者の信頼を更に勝ち得て、株価の好転に繋がるかもしれない。
ちなみにAppleのデバイスはこれまでも米軍内で装備として数年間使用されている実績がある。例えばiPod Touchはスナイパー(狙撃手)の銃弾の弾道計算などに用いられている。
画蛇添足 One more thing…
Appleが米国企業ということも大きいと思うが、確かにメモリ管理の点でもOSの安定性はiOSの方がAndroidよりも優れているのは間違いない。もう1つ、大事なのはセキュリティかもしれない。敵に端末が取られたり、死亡した兵士から持ち去られたりしたとしても、登録された兵士本人しかロック解除できないようにしておけば、相手に作戦が漏れてしまうことはないし、マルウェア(ウイルス)もiOSに感染するものはAndroidよりも圧倒的に少ない。Androidはその点でもiPhoneに劣る。
ただ、バッテリーの持ちの問題(バッテリーが交換できない点)や、防水でない点などは、Androidよりは劣るところもある。もし画面分割機能やバッテリーの持ちを考えればiPad miniあたりが最適なのではないかと思うが、もしかしたら使用するにはサイズが大きすぎるのかもしれない。
個人的には、常に周囲の情報に気を配らなくてはいけない特殊部隊の兵士にとっては、スマートフォンやタブレットよりも、グーグルグラスやAR用のゴーグルなど、視線を大きく動かしたり取り出したりしなくても常に視線内に表示されるデバイスの方が作戦に向いているのではないかと思うのだが(そしてまだそのようなデバイスをAppleはリリースしていない)。
もう1つの個人的な懸念は、iPhoneが米軍に採用されることで、米軍を敵とみなしている中国やその他の中東のハッカーなどがiOSを攻撃したりバックドアを仕掛けるマルウェアをより力を入れて開発する可能性があり、その意味では逆にセキュリティに対して脅威を生んでしまうかもしれないことだ。
しかしテクノロジーは実際に戦争や作戦において軍隊の中で使用されることで進化してきた面もある。iPhoneやiOSもHealthKitなどで人々の健康をケアしつつ、Tactical Assault Kitでは人々の安全を守ると共に、同じ”Kit”という名前でも戦争や人殺しにも使われる。。技術というのはそういうものなのかもしれない。ちょっと皮肉な感じがしないだろうか。
記事は以上。
(記事情報元:AppleInsider)