【Apple vs FBI】アジアのテック企業、ファーウェイがApple支持表明した以外は沈黙

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プライバシー問題を巡って、AppleとFBIや米国政府の争いが繰り広げられている。しかしロイター社の報道によれば、Appleと競争関係にあるデバイスメーカーは沈黙を保っているところが多いという。

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大多数のデバイスメーカーはアジアから来ているという。世界のスマートフォンを全部で10台とすると8台はアジアで作られている。そしてアジア各国の法律、政治や安全に関する環境はそれぞれかなり異なっていて複雑なのが現状だ。

ファーウェイがAppleへの支持を表明、レノボは明確にせず、サムスン・シャオミ・LG・ZTEはノーコメント

米国の裁判所が昨年末カリフォルニア州サンバーナーディーノで発生した銃乱射テロ事件の犯人、サイード・ファルークのものとされるiPhoneの暗号化の解除を求めた件で、Appleのティム・クック(Tim Cook)は激しく反対した。この件について、アジアのメーカーではファーウェイのみがAppleへの支持を公表している。ファーウェイの消費者業務グループの余承東CEOは、MWCで記者に「私たちはプライバシーの分野に非常に多くの投資をしていて、セキュリティ保護は重要なキーポイントだ。消費者にとって、プライバシーは相当重要だからだ」と語っている。

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余CEOはもし同じような状況になったらAppleと同じような行動を取るかについては態度を明確にしていない。とはいえ余CEOは「政府が企業に要求を出したとき、いくつかの項目は私たちも実行することはできない」とし、暗号化されたAndroidデバイスの解除もそのうちの1つとした。そして「消費者にとって、これは非常に重要なことだ、なぜならこれはプライバシー保護に繋がるからだ」とも述べている。

Appleの立場を支持するかどうかについて、レノボ(Lenovo、聯想)の楊元慶CEOは態度を明らかにしていない。楊CEOは「今日問題がAppleの身の上に発生したが、明日にはレノボのモバイル端末上で発生するかもしれない。これは真面目に考えなければならない。時間が必要だ」と語っている。

そしてサムスン(SAMSUNG)、シャオミ(xiaomi、小米)はノーコメントとの返事があり、ZTEはノー返事だった。

韓国のLG電子は個人情報やプライバシーの保護、そしてセキュリティには非常に重視していると答えている。ただ、LGは政府に協力して製品にバックドアを埋め込むようにするのか?また政府がLGのスマートフォンの暗号化を解除するように要求するだろうか?という質問についてはLGは回答を拒絶したという。

インド最大のスマートフォンメーカーのMicromaxのスポークスマンは、「誰も調査の邪魔をしようとは思っていないし、誰もその汚名を背負いたいとは思わない。消費者の安全は考慮しなければならないが、国家の安全を本当に脅かす脅威についても思いを至らせなければならない」と回答している。

 

政府の監視機関が興味を持ち始めた

多くのアジアの国は「プライバシー法」、つまり個人情報保護のための法律がない。そのため、デバイスメーカーも法律を盾にして政府の要求に抵抗したり反抗したりすることはできないのが現実だ。

シンガポールの内務省のスポークスマンは、「法律や行政機関は個人或いは法人・機関に対して情報を提供するように要求することができる。これは証拠を集めるための流れの一部だ」と語っている。インドの電信管理監督機構の役人も、機構はテック企業に個人情報を提供するよう要求できるという。政府の情報通信部門のスポークスマンIsmail Cawidu氏は、インドネシアも同じような決まりになっているという。

シンガポールの管理大学法学のEugene Tan(陳慶文)助教授は、もし誰もテック企業に対してデバイスの内部にある情報を請求していなかったとすると、それは大変驚きだという。陳助教授は「単に公開されていないだけです。テック企業の立場になって想像すれば、彼らは世論の影響を非常に気にするのです。もしテック企業が行政機関に対して頭を下げて負けを認めたら、ユーザはパニックに陥り、その企業の製品やサービスを使わなくなるでしょうから」。

Micromaxも、インドではこういったことは日常茶飯事だという。Micromaxのスポークスマンは、「行政機関の要求に対してはノーとはいえません。毎日似たような要求があります。国家の安全を考えると、協力をしなければなりません」と述べている。

Appleの政府への反抗は連鎖反応を起こしており、一部の市場監督者もデバイスメーカーに、そのデータを取得する権利を与えるよう要求するかもしれない。シンガポールのテクノロジー分野専門の法律事務所、Olswang AsiaのRob Bratbyマネージャーは、デバイスの監視は政治的な圧力によるもので、政府監視機関が既に介入しているという証拠は今のところないが、遅かれ早かれそうなるだろうと考えているようだ。

 

画蛇添足 One more thing…

アメリカや日本のように個人情報法保護法がかなり整備されている国は別として、記事にあるようなインドやインドネシアなどの主に発展途上国を中心としたアジアの国々は政府の力が強く、企業は言うことを聞くしかないのが現状でもある。

シンガポールは先進国だが「明るい北朝鮮」と呼ばれるほどの一党独裁体制で、政府に関する批判などは厳しく取り締まられる。中国も同様一党独裁体制で、もちろん政府に対する批判は許されない。言論統制までしっかり敷いている。取り締まりがあるということは、相当監視が行われているということだ。スマートフォンに対する監視も強いのだろう。

そうなると、Appleがこういった国で暗号化でプライバシーを守っているスマートフォンを販売していくということが困難になっていく可能性はある(ただしデバイスに生体認証機能があればメーカーが責任を逃れられるという考え方もある)。ただし、中国のような監視がもともと強い国は電信やキャリアも国営で行っていて、通話の記録などは政府や警察に筒抜けだったりするので(インターネットもそうなっている)、スマートフォンそのものの問題ではなかったりするのかもしれない。

また、冒頭にも書いたとおりその国での犯罪発生数など、安全の状況によっても国や世論の事情は異なる。危険な国では、政府や行政機構(警察や軍含む)の介入は逆に歓迎されることもあるほどだ。

ただし、日本も米国と同様実際には公安機構があり、そこでは様々な情報収集が行われているともいわれている。スマートにやるか、あからさまにやるか、そのスタイルの違いではないかと思われるが。。

記事は以上。

(記事情報元:Reuters via VentureBeat

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