新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がもたらす脅威の中で、Appleは数千人の従業員を「在宅勤務」とすると発表しています。しかしThe Wall Street Journalのレポートによると、Apple製品の製品に関する厳格なガイドラインとその機密性のため、在宅勤務への移行は非常に困難で混乱しているという証言をしている従業員もいるということです。
上記のWSJのレポートによれば、在宅勤務となったソフトウェア開発者は、自宅からネットワーク(恐らくApple社内VPN)に接続するとダウンロード速度が遅いということと、また従業員に実行が許可されている作業が厳しく制限されていることによる混乱の両方に不満を抱いているということです。また更に別の従業員は、Appleの厳しいセキュリティポリシーにより、自宅から主要な内部システムにアクセスできなかったというのです。これでは仕事ができませんね。
それでも大多数のApple本部で働いている内部のエンジニアは、未発表製品の製品そのものや情報をApple Parkキャンパスから外に出すことを禁ずるという方針を遵守しています。Appleの未発表製品の情報が漏れるのは主に中国の生産委託先からで、Apple社内から漏れることが極端に少ないのは、Appleが非常に厳格なセキュリティマネジメントをしているからです。しかし一部のスタッフによれば、今回の新型コロナウイルス感染症の影響もあり、Appleがその規制を少し緩めたと証言しています。
これらは、一部の日本の企業にも影響していると思います。大企業の中では電通や資生堂などが社内に感染者が出たために在宅勤務に切り替えたり、GMOなどは意図的に在宅勤務にしました。GMOのようなオンラインサービスがメインの会社ならいいですが、業種によっては在宅勤務だけではどうしても難しいところもありますし、これまでオンライン会議などを含むある程度リモートワークに慣れているところであればシステムを既に導入していて、それを拡張するだけでよかったと思いますが、今から慌てて導入、というようなやり方をしているようでは業務がストップしてしまうでしょうね。
そして上記のAppleの例でも挙げられているとおり、社内の情報セキュリティポリシーが厳しいところは大変です。私も以前勤務していた会社で情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の構築をして、その後数年管理者だったことがあるのですが、殆どの会社がリモートワークが前提になっているわけではないですから、リスクアセスメントをやり直さなければならないでしょうね。小規模ならまだいいですが、Appleのような組織が超巨大かつ厳格なセキュリティマネジメントを行っているところはとても大変そうなのは目に浮かびます。
個人的には、今回の新型コロナウイルス感染症の流行は、旧態依然とした会社が、社内のシステムだけではなく勤務体制や業務のやり方までを大きく見直すチャンスなのではないかと思いますが、そういった会社は決定権を持つ経営者そのものが旧態依然としている可能性が高いので難しいかもしれませんね。
なお、Appleは既に新型コロナウイルス感染症に対するいくつかの施策を施していることは当ブログでもお伝えした通りです。Appleは果敢に動いていると思います。他の会社も恐らくAppleの行動を模範にするのではないかと予測しています。Appleは今や世界に影響を及ぼす会社ですからね。
記事は以上です。
(記事情報元:The Wall Street Journal)