Appleは現行最新のiPhone XS/XS Max/XRには台湾のTaiwan Semiconductor Manufacturing Company(TSMC)の7nm FinFETプロセスで製造されたA12 BIONICチップが搭載されていて、またAndroidのハイエンド端末も同様にTSMCの7nm FinFETプロセスによるチップを使用しています。ただ、世界的に見るとまだまだこの7nmプロセスは先進的かつ高価格帯にあり、主流ではないようです。
TSMCのCC Wei(魏哲家)CEOは、世界シェアにおけるTSMCの7nmプロセスの利用率が2019年後半に大幅に上昇するとの見解を発表しました。その利用率上昇は、スマートフォンの需要の季節的回復(買い替え需要などにもよる、特にAppleのiPhone)、そしてHPC、IoT、および自動車アプリケーションのチップ需要に牽引されているということです。TSMCは、7nmプロセステクノロジが今年の同社の総ウェハー売上高の25%以上を占めると予想しています。
TSMCは、N7 Plusプロセス、すなわちEUVを組み込んだ7nmを量産に移行した、とCC Wei CEOは4月18日の投資家会議で明らかにしました。同社は更に、2020年第1四半期に6nmプロセス技術を使用したチップのリスク生産を開始する予定であることは以下のように当ブログでもお知らせしたとおりです。
TSMCのN6プロセス(6nmプロセス)は、N7テクノロジ(7nmプロセス)と完全に互換性のあるデザインルールにより、N7プロセスより18%高いロジック密度を実現します。
N6よりも更に先進的なTSMCの5nmプロセス技術に関しては、開発は順調に進んでおり、今四半期からの顧客のテープアウトも順調に進んでいる、とWeiは述べています。同社は、来年2020年前半にこのN5ノードを量産に移行する予定で、5nmプロセスを「大きく持続性のあるノード」と考えているようです。
ただ、TSMCはその5nmプロセスの立ち上げについて「もっと慎重に」なるつもりである、とCC Wei CEOは指摘しています。初期の立ち上げはN7の立ち上げよりも遅いかもしれないということですが、どうにかしてN5を「早く」立ち上げることができるだろう、とCC Wei CEOは発言しました。当然、投資家への影響を気にしての発言と思われます。
Wei CEOによると、HPC(高性能コンピューティング)は今後5年間でTSMCの「最も重要な」成長要因になるという。対象となるHPCアプリケーションには、CPU、AIアクセラレータ、およびネットワーキングデバイスが含まれます。暗号通貨(マイニング)を除くHPC部門からの収益は、長期的には年間2桁の成長を享受するように設定されている、とWei CEOは述べています。
しかしWei CEOはTSMC全体としては、今年の売上高はわずかに伸びる見込みであり、メモリとファウンドリ部門を除く半導体業界全体では横ばいの伸びを示す、と以前からの発言を繰り返しています。
Wei氏は、2019年後半から、メモリとファウンドリ部門を除く半導体業界全体の成長よりも、TSMCがはるかに速い成長を見始めると考えているようです。
さらにWei CEOは、TSMCの高度なパッケージングは、依然としてウェハーレベルのシステム統合技術の提供に焦点を当てていることを明らかにしました。同社は新世代のInFO(統合ファンアウト)およびCoWoS(チップオンウェハーオン基板)技術を提供し、最近業界をリードする3D ICパッケージング方法であるSoIC(システムオン統合チップ)を導入しました。Wei CEOによると、2021年にはこのSoICパッケージングによる生産が開始される予定です。
TSMCの今年の計画設備投資額は、100億ドルから110億ドルの間で横ばいとなっています。同社のCFOであるLora Ho氏によると、設備投資の約80%は最先端のプロセス技術、10%は最先端のパッケージングおよびマスク製造、10%は特殊技術に割り当てられるということです。
ファウンドリとしては世界のトップをひた走るTSMC。今後も他社が真似できない高度なパッケージング技術で、世界の半導体製造をリードしていくことでしょう。そしてその先には3nmプロセス、そして更に微細なプロセスの世界が待っています。
ちなみに冒頭にも書いたとおり現行最新のiPhone XS/XS Max/XRには、TSMCの7nm FinFETプロセスのA12 BIONICチップが採用されていますが、今年秋にリリースされる新型iPhone搭載のA13チップにはTSMCの7nm EUV(N7 Pro)、そして来年2020年のiPhoneには5nm EUVプロセスのA14チップが搭載されるのではないかと予測されています。
しかし、AR/VRなどが相当進化しない限り、スマートフォンには現在の最新ハイエンドSoC性能はオーバースペック中のオーバースペックともいえるレベルで、殆どのノートパソコンよりも性能がよくなっています。本当にスマートフォンにそこまで速いチップが必要なのかという感じもします。もちろん、プロセス微細化によって省電力が実現するのはよいことではありますが、結局本体の薄型化によるバッテリー容量の制限やディスプレイの大型化による消費電力の増加で相殺されてしまい、スマートフォン本体のバッテリー持続時間の向上は微々たるものです。今後iPhoneはどこに向かっていくのでしょうか。。そんなことを、HUAWEI P30 Proを買ってから考えるようになりました。
記事は以上です。
(記事情報元:Digitimes)