昨年2017年、Appleはアメリカ国内で1000億ドル以上を投資することをコミットしました。当時、多くのメディアがAppleはテスラ(Tesla)やネットフリックス(Netflix)等の各業界の巨頭ともいえる企業を買収した方がいいのではないかと指摘していました。しかしAppleはご存じの通り、今までの大企業の買収などの大きな行動を起こしていません。そして今日、アメリカのメディアThe Streetが、Appleはテスラを買収するべきだ、なぜならテスラにはAppleが重視しているイノベーションの力があるからだ、とする文章を発表しています。
The Streetによれば、テスラのイーロン・マスク(Elon Musk)CEOはしっかりした長期的なビジョンを持った人だとし、彼自身もテスラをもっと大きな規模の会社にして、その製品によってもっと有効的に世界を変えたいと考えていますが、これまでのあまりにも急速な会社の拡張によって、同社は多くの人材とキャッシュフローの流出にみまわれています。テスラの支出がどんどん大きくなり、既に株主からマスクCEOに対して、一部の自動車業界のことがわからない人を取締会メンバーから外すべきだという指摘が出ています。その中には、イーロン・マスクの弟、キンボール・マスク(Kinbal Musk)も含まれています(キンボール・マスクは飲食業界で米国で最も優れたレストランと評価されたり、その後世界に正しく栄養を届けることも目標に農業に進出したことで有名です)。
それに比べ、現在のAppleこそがマスクが望んでいる”最終形態”だとされています。全世界で7億ものユーザがiPhoneを使っていますが、それに対してテスラの車は楽観的な予測でも2023年までに世界で300万台という台数です。もちろん車業界とスマートフォン業界は全く異なる業界ではありますが、しかしAppleには研究開発能力があり、莫大な現金貯蓄もあるため、それがテスラの生産や研究開発を助けることもできるため、イーロン・マスクCEOが望む会社の急速な発展に役立つと同紙は指摘しています。
Appleは1000億ドルの投資を約束し、その現金保有高は2851億ドル(約31兆2280億円)にものぼります。しかしここ1年でAppleは目立った買収はShazamの4億ドルくらいで、これが公に知られている最も大きな額の投資となっています。それに比べれば、テスラの513億ドルという市場価値はどうやら最適な買収対象といえそうです。元AppleのCEOだったジョン・スカリー(John Sculley)は取材で、「Appleは当然テスラを買収できます。彼らはそれだけの財務能力を持ち合わせています。Appleがどこかの大会社を買収するとすれば、その相手の会社には必ず革命的な製品があるはずで、テスラはまさにその基準を満たしているといえます」と語っています。
またテスラの研究家Anton氏によれば、もしAppleが本当にその自腹を切ることを決意した場合、マスクCEOは「燃えさかるかまどから飛び出たハエよりも速くその買収話を受ける」とされているほどです。なぜならマスクCEOの視点は既にSpace Xによる宇宙事業に移っていて、自動車ビジネスは既にトップの関心事項ではないからです。そんな背景があるため、もしAppleが市場価値より低い値段でオファーしたとしても、マスクCEOは受けるだろうと予測されています。
最後に、The StreetはAppleのテスラ買収について、証拠に近い情報を出しています。Appleは既にテスラに対して2回のデューディリジェンスを実行しているとし、これは買収するための準備であるとみられるのは自然なこととしています。しかしThe Streetは同時にこれは「責任の持てないリーク情報です。信じるかどうかはあなた次第」としているため、眉唾な情報ともいえます。
ただ、やはり夢を見るカリスマを持ったリーダーとして、イーロン・マスクがAppleの経営陣に入ったら面白いことになりそうです。製品的にも、Appleは自動運転技術を研究開発しているので、それがテスラのEVに載れば最強になるかもしれません。そして、人物的にも共同創業者でカリスマだったスティーブ・ジョブズ亡き今、Appleをまた面白い会社に戻してくれるのはイーロン・マスクかもしれません。しかしイーロン・マスクも現在はやはり宇宙事業にばかり集中していて、現在のAppleの主な事業であるスマートフォンや今後発展すると思われるVR/AR事業にはあまり興味がないかもしれません。
The Streetのいうことは最もですが、もちろん色々と大人の事情もあるので実現しないかもしれません。デューディリジェンスの情報も根も葉もない噂の可能性もあります。テスラ買収でなかったとしても、今後のAppleの1000億円の投資先には注目していきたいですね。
記事は以上です。
(記事情報元:The Street)