ロイター通信によると、ジャパンディスプレイ(JDI)が、次世代Apple Watchの有機ELディスプレイを受注したとされています。
ジャパンディスプレイ(以下JDI)は産業革新機構主体による日本のソニー・東芝・日立の中小型”液晶”ディスプレイ(以下LCD)の事業を1つに統合した企業体で、2012年に活動を開始しました。AppleのiPhoneのLCDの供給も行っていましたが、その後その座をサムスンディスプレイ(SAMSUNG DISPLAY)に奪われ、業績が悪化していました。
2019年2月、JDIは中国政府の一帯一路基金や台湾の基金を含む、総額1,100億円規模の出資を受け入れることを決定していて、この取引は3月に完了しています。これはJDIにとって3度目の救済となりました。そしてこの資金を使って、JDIが有機ELディスプレイ(以下OLED)の転換を図ったとみてもいいかもしれません。しかし、この投資金額はJDIのこれまでの資本金のほぼ全額と同額になります(JDIの資本金は2018年8月の時点で1,143億円)。日本のトップのディスプレイ事業共同体のはずだったジャパンディスプレイが、中国や台湾の資本を受け入れるということは、なんだかとても複雑な気分になりますね。
ただ、OLEDは現在のところ世界の業界全体を見てもサムスンディスプレイの一人勝ち状態となっていて、もう1つ韓国企業のLGディスプレイも食い込んできていますが、今回JDIがOLED市場に参戦することで、LGディスプレイは危機的な状況に陥る可能性もあります。
投資家たちはJDIの報告書を歓迎し、JDIの株価は日中6.3%上昇しました。
しかし、JDIによるiPhoneディスプレイの注文はより困難な課題になる可能性がある、とIHS Markitは述べています。
IHS Markitのシニアディレクター、早瀬博氏は、ジャパンディスプレイにとって前向きな一歩であると語りましたが、同時に同社は今後も厳しい道を迎えることになるだろうと付け加えています
「iPhoneの注文を獲得するにはハードルが高いでしょう」と早瀬氏は言います。「サムスンディスプレイは、10年以上にわたり、その経験・技術・生産能力を増強してきました。ジャパンディスプレイは本当にそのようなライバルと競争し、目的を達成することができるのでしょうか?」
早瀬氏の指摘通り、サムスンディスプレイは現在AppleのiPhone X/XS/XS MaxのOLEDの供給を独占しているだけではなく、OLEDの開発や製造に関わる特許を数多く取得しています。
JDIはサムスンディスプレイの特許に抵触しないようなわずかに変更した方法で製造するしかなく、しかもその上でAppleからの厳しい品質要求を満たし、更に数量や納期に関する要求も満足しなければなりません。
ただ、今回の情報が本当であれば、Appleは今後サムスンディスプレイやLGへの依存度を減らすことができ、リスクを低減することができるともいえます。本音としては、本業のライバルともいえるサムスンへの依存はぜひとも避けたいところでしょう。
記事は以上です。
(記事情報元:9to5Mac、Apple Insider)