9月9日のイベントまで1週間を切った9月3日、台湾の調査会社TrendForceがiPhone 18シリーズの予測を更新しました。今年の秋に出るのはiPhone 18 Pro・18 Pro Maxと折りたたみの「iPhone 18 Fold」(TrendForceの仮称。本誌ではiPhone Ultraと呼んでいます)の3機種で、価格は前世代より10〜20%高く、折りたたみは2,099〜2,299ドル(約33万〜37万円)、最上位構成は3,000ドル(約48万円)を超えるという見立てです。8月に同社が出した「部品原価が38%増」という予測から何が変わったのか、そして値上げの元凶であるメモリの価格が1年でどう動いたのかを、四半期ごとの数字を積み上げて確かめます(円換算は1ドル=159円、1元=23.6円、以下同じ)。

8月の「原価38%増」から9月の「価格10〜20%増」へ
まず、TrendForceの2つの予測を並べます(8月10日、9月3日)。
- 8月10日: 256GBのiPhone 18 Proの部品原価(BOM)は前世代比で約38%増。Appleは最近のMacBookと同じく粗利益の一部を犠牲にして値上げを抑え、旧モデルの値上げも検討する可能性
- 9月3日: 新モデルの価格は10〜20%上昇。Appleが上昇分の一部を吸収し、サービス収入の重みが増す。無印のiPhone 18は2027年1〜3月期に回る
現行のiPhone 17 Proは1,099ドルなので、10〜20%増なら1,209〜1,319ドル、つまり110〜220ドル(約1万7,500〜3万5,000円)の値上げです。8月の時点では「販売価格は200〜300ドル上がる可能性」とも報じられていましたから、9月の予測は下限がだいぶ下がり、上限はほぼ据え置きです。「Appleが一部を吸収する」の一言がこの差になっています。本誌が昨日お伝えしたブルームバーグのガーマン記者の見立て「100ドル値上げの1,199ドル」は、10〜20%のレンジのちょうど下端に当たります。
【最大3万円超の値上げか】iPhone 18 Proの部品原価が4割増。ティム・クックは「百年に一度の洪水」、Appleは異例の在庫積み増しへ
メモリ契約価格、四半期ごとの上昇率を積み上げると1年で5.3倍
TrendForceは今回のリリースで、256GBのProモデルについて「2026年7〜9月期のメモリ費用は前年同期より400%近く高い」、つまり5倍弱になると書いています。この「5倍」がどれほど異常なのか、同社が四半期ごとに出してきた汎用DRAMの契約価格の上昇率を並べてみます。

- 2025年10〜12月期: 前期比+45〜50%(実績。当初の予測は+8〜13%だった)(TrendForce 2月)
- 2026年1〜3月期: +93〜98%(実績。ひとつの四半期で2倍)(同6月)
- 2026年4〜6月期: +58〜63%(3月末時点の予測)(同3月)
- 2026年7〜9月期: +13〜18%(7月時点の予測)(同7月)
各レンジの中央値を掛け合わせると、2025年7〜9月期を100として2026年7〜9月期は535。約5.3倍で、TrendForceの「400%近く高い」と符合します。スマホ向けのモバイルDRAM(LPDDR)も1〜3月期に約90%、4〜6月期にLPDDR5Xで78〜83%と、ほぼ同じ坂を上っています(同5月)。7〜9月期に上昇率が10%台へ鈍ったのは事実ですが、それは「5倍の水準で高止まりしたまま、さらに少し上がる」という意味で、下がる話ではありません。
原因はAIサーバー向けのHBM(広帯域メモリ)です。メモリ各社が生産能力をHBMとサーバー向けに振り向けた結果、スマホやPC向けの汎用品が足りなくなり、値段が跳ね上がりました。ティム・クック前CEO(9月1日に会長へ退き、CEOはジョン・ターナス氏に交代)が「百年に一度の洪水」と呼んだのがこれです。
原価に占めるメモリの割合、1割から34%へ。来年上期は4割超
8月のリリースには、実はもうひとつ重要な数字が書かれていました。iPhone Proの原価に占めるメモリの割合が、1年前の約10%から2026年7〜9月期には約34%に跳ね上がり、2027年上期には40%を超えるというものです。メモリ価格は2025年初めから5〜7倍になった、とも書いています。
この「10%→34%」は、「原価38%増」と「メモリ5倍」の2つの数字から逆算できます。メモリ以外の部品の値段が前年と同じだと仮定すると、原価が38%増えるにはメモリが原価の9.5%を占めていた計算になり、それが5倍になると割合は34%。TrendForceの数字とぴたり一致します(筆者計算)。実際にはA20 Pro(2nm)や新しいディスプレイも値上がりしているはずなので、メモリ以外が10%上がっていたとすれば、メモリの割合は昨年7%、今年26%です。いずれにせよ、去年まで原価の1割だったメモリが、今年は3分の1、来年は4割。プロセッサでもディスプレイでもなく、メモリがiPhoneで一番高い部品になった、ということです。8月に「原価200〜300ドル増」と聞いて「たかがメモリで?」と感じた人は多いと思いますが、5倍という倍率はそういう桁の話でした。
米国・日本・中国、10〜20%を当てはめた価格の試算
| モデル | 米国 | 日本 | 中国本土 |
|---|---|---|---|
| iPhone 17 Pro(現行) | 1,099ドル | 179,800円 | 8,999元 |
| iPhone 18 Pro(+10%なら) | 1,209ドル | 約197,800円 | 約9,899元 |
| iPhone 18 Pro(+20%なら) | 1,319ドル | 約215,800円 | 約10,799元 |
| iPhone 17 Pro Max(現行) | 1,199ドル | 194,800円 | 9,999元 |
| iPhone 18 Pro Max(+10%なら) | 1,319ドル | 約214,300円 | 約10,999元 |
| iPhone 18 Pro Max(+20%なら) | 1,439ドル | 約233,800円 | 約11,999元 |
| iPhone Ultra(折りたたみ、TrendForce予測) | 2,099〜2,299ドル | 約33万〜37万円(実勢レート換算) | 1万7,000〜1万9,000元前後(筆者試算) |
日本と中国は、現行価格に同じ率を掛けただけの機械的な試算です。Appleは各国の価格を独自に決めるので、実際は「199,800円」「9,999元」のように端数を丸めた数字になるでしょう。それでも桁の感覚はつかめます。日本のiPhone 18 Proは20万円台に乗るかどうかの瀬戸際、Pro Maxは20%増なら23万円台です。
ちなみに、Appleの日本価格は現行機で1ドル=約164円で計算されており、実勢の159円より円安側に置かれています。円が今の水準で推移すれば、Appleがこの機会にレートを実勢に近づけて、ドルの値上げ幅より日本の値上げ幅が小さくなる可能性はあります。逆は考えにくい。
折りたたみiPhone Ultra、2,099〜2,299ドル。最上位構成は3,000ドル超
TrendForceは折りたたみモデルの価格を2,099〜2,299ドル、最上位の構成では3,000ドル超と見ています。円にすると約33万〜37万円、最上位は約48万円です(Appleの日本価格のレート164円で計算すると34万〜38万円)。中国の価格は予測に含まれていませんが、iPhone 17 Proの米中価格比(1ドル=約8.2元、増値税13%込み)を当てはめると1万7,000〜1万9,000元前後、日本円で40万〜45万円といったところでしょう。
仕様面でTrendForceが挙げるのは、3機種すべてに2nmのA20 Pro、メモリのパッケージがInFOからWMCMへ(メモリを積み重ねる方式から横に並べる方式に変わり、放熱に有利とされる)、ディスプレイはLTPO+、Proは機械式の可変絞り、バッテリー大型化、折りたたみはデュアルカメラと静電容量式の指紋認証、折り目の目立ちにくさの改善、といったところです。折りたたみスマホは2026年の市場全体の約2%にすぎないとも書いており、AppleのUltraは台数より「価格帯を上に広げる」役割です。9月7日に発表される小米18 Foldとの比較は先日の記事をどうぞ。
【結局、9月に買えるのか】折りたたみiPhone Ultraの発売時期を整理。2027年延期説は後退、ただし初回分は極少か
A20 Proの中身、メモリバスは64ビットから96ビットへ
値上げの裏で、中身は着実に変わっています。9月3日にMacRumorsが報じた微博(Weibo)のリーカーの解析では、A20 Proのはんだボールの配置から次のことが読み取れるそうです。
- CPUは高性能2コア+高効率4コアの6コア構成(現行と同じ)
- GPUは6コアから7コアへ(約16%増)
- メモリのバス幅が64ビットから96ビットへ(帯域が5割増)
- 高効率コアのL2キャッシュが6MBから8MBへ
メモリの帯域を5割増やすのは、端末上で動かすAI(Apple Intelligence)のためです。搭載メモリも12GBが本命と見られています。皮肉なことに、AIのためにメモリを増やし、AIのせいで(HBM向けに生産を奪われて)メモリが高い。iPhone 18 Proの値上げは、AI時代の二重の請求書と言えます。
業界全体では小売価格が15%上昇、日本を含むアジア太平洋は19%
値上げはAppleだけの話ではありません。同じ9月3日、Counterpoint Researchが「2026年、発売済みスマホの世界の小売価格は年初から約15%上がった」と発表しました。発売済みのモデルが値上げされる、それも4割以上のモデルで、というのは業界で初めての事態だそうです。新製品の発売価格は前年比25%増。理由はやはりメモリで、同社は「2025年10〜12月期から4倍」と書いています。

地域別では、インドが21%、日本を含むアジア太平洋が19%、中東・アフリカが18%、中南米が16%、中国が10%、欧州が7%、米国が5%。新興国ほど上げ幅が大きく、先進国は小さい。メーカーは値上げの代わりにストレージを減らし、カメラを削り、4Gモデルを増やしてしのいでいます。消費者は買い替えを先送りし、整備済み品に流れている。そうした中でCounterpointは「AppleはiPhoneの価格を据え置いてきた」と書きつつ、アナリストのカーン・チャウハン氏は「iPhone 18を含め、値上がりは続く」と見ています。
中国から見ると、補助金の枠外と、長鑫が主導する値上げ
中国の上げ幅が10%と世界平均より小さいのは、価格競争の激しさに加えて、国の買い替え補助金(6,000元以下の端末が対象で、価格の15%、上限500元)が値上げの緩衝材になっているからでしょう。ただしこの補助金は6,000元以下が条件なので、9,000元を超えるiPhone 18 Proにも、1万5,000元を超えるであろうUltraにも届きません。中国のApple好きにとっては、値上げ分がそのまま乗る構図です。
もうひとつ、メモリの値上げを主導しているのが中国メーカーだという点も見逃せません。TrendForceは7〜9月期のモバイルDRAMについて、全体の上昇率が8〜13%に鈍り、Samsungが一桁台半ばの値上げにとどめる一方で、「SK hynixと長鑫存儲(CXMT、中国最大のDRAMメーカー)は競合に追いつくためにより高い値上げを求める」と書いています(TrendForce 8月3日)。長鑫はこれまで安値で市場を取ってきた会社ですが、供給不足の今は値上げの先頭に立っている。「中国製メモリが安いから中国製スマホが安い」という図式が崩れつつあります。
9月9日に確かめる3つの数字
最後に、来週のイベントで確認したいポイントを3つ。
- iPhone 18 Proの米国価格が1,199ドル(+100ドル)か、1,299ドル(+200ドル)か。前者ならガーマン氏、後者ならTrendForceの上限に近い
- 日本価格のレートが164円のままか、実勢の159円に寄るか
- Ultraの最低価格が2,099ドルを切るか。切ればAppleがかなり吸収したことになる
本誌は日本時間9月10日午前2時のイベント終了後、米国・中国・香港・日本の価格と仕様の比較記事を出す予定です。
記事は以上です。
(記事情報元:TrendForce(9月3日)、TrendForce(8月10日)、MacRumors(価格)、MacRumors(Ultra)、9to5Mac、Counterpoint Research、IT之家)
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