当ブログ記事でもお伝えした、クアルコムによるAppleのiPhoneの一部機種の輸入及び販売差し止め請求について、中国福建省福州市の地方中等裁判所が同意し認めた件について。。Appleは本日、その販売差し止め請求に対応するため、中国のみに向けてソフトウェアアップデートをするとしています。そのアップデートは来週になるということです。
Reutersによると、Appleはソフトウェアアップデートは中国のデバイスに来週から適用されるということです。
「iPhoneのモデルに関して、私たちはコンプライアンスを遵守していると信じていることを中国に伝えました」とAppleはいいます。「来週の早い時期に、私たちは中国のiPhoneユーザにソフトウェアアップデートを提供します。このアップデートによって、今回問題となっている2つの特許が使用されているマイナーな機能が修正されます」
詳細については今のところ明らかになっていませんが、クアルコムはAppleの一部のiPhoneの販売差し止め請求の根拠を、クアルコムが所有している特許をAppleのソフトウェアが侵害しているからとしていました。本来はAppleとクアルコムはベースバンドモデムチップの特許について係争関係にあったとみられていたのですが、意外なところからクアルコムは攻めてきたのです。ちなみに、その販売差し止め請求には最新機種であるiPhone XS/XS Max/XRは含まれていません。なぜなら特許を侵害しているとされているソフトウェアとはどうやらiOS 12より前、つまりiOS 11以前に使用されているもので、iPhone XS/XS Max/XRは標準でiOS 12が搭載されているため対象外となったようです。
Appleとしては、単にそれらの機能を無効にしてしまうか、または違う特許を使ったものに差し替えてしまえばいいくらいのマイナーな機能のものだったので、アップデートパッチをリリースしてしまえば問題ないと考えているのでしょう。全世界中にあるiPhoneにおいても、iOS 12の適用シェア率は公式発表で12月3日現在でも既に72%となっていて、残りの28%がそのアップデートの対象となると考えていいでしょう。
クアルコムもAppleがそんな対応ができてしまうことを見越していなかったとなると随分見通しが甘かったなと思いますが、もしそんなことはお見通しで故意にやっていたとしたら、、この一連の動きはAppleとクアルコムによるマスコミを騒がせるための出来レースだったという可能性も否定できず、外にいる我々は一杯食わされた可能性があります。
なお、Appleは本日、Bloombergに対して、もし中国でiPhoneが本当に販売差し止めになった場合、毎日数百万ドル(約数億円)の損失が出るとし、その損失は消費者だけではなく、Apple製品の販売によって増値税・営業税・所得税などの税収を得ている中国政府や、またフォックスコン(Foxconn、富士康)などのiPhoneを組み立てている工場やそこに付随するサプライヤーもダメージを受けると語っています。確かに中国でiPhoneの販売が止まることで、もちろんAppleにとっても痛手ですが、中国にとっても殆ど何もいいことはないのは間違いないでしょう。
最近ファーウェイ(HUAWEI)の副社長がイランへの輸出をしている容疑でカナダで拘束されたり(その後保釈されました)、米国や日本の政府がファーウェイの通信機器をスパイ行為の恐れがあるとして購入しないとしたことについて、中国国内でも米国など諸外国のファーウェイ叩きに対して批判が高まり、社員がスマートフォンでiPhoneをやめてファーウェイ製品に切り替えたら20%キャッシュバックなどの補助金を出す、逆にiPhoneを持っていると昇給・ボーナスなしなどのペナルティを科す、というような感情的かつ過剰な愛国心を剥き出しにする対応をする企業も出てきていますが、、
「iPhone買ったやつは、今日から昇給・ボーナス無し!
ファーウェイ買ったら20%キャッシュバックするぞ!」中国でもファーウェイ買うと20%キャッシュバックです pic.twitter.com/cpoVZLITN1
— 中国住み (@livein_china) 2018年12月12日
これもまた正直バカバカしい対応で、結局ダメージを食らって割を食うのは自国の同胞であることに気がつかないのでしょうか。。もちろん、米国がファーウェイやZTEのような中国企業を敵視して叩くのも、かつてのジャパン・バッシングを見るようでなんだか滑稽です。事実を元に、本当にスパイ行為が行われていればやめればいいのですが、その根拠が明確に示されないまま盲目に米国政府のやり方に従う日本政府もどうなの、と私は個人的に思ってしまいます。。
何はともあれ、AppleのiPhoneは今でも中国では全機種販売されていますし、福建省福州市の中等裁判所のクアルコムによるiPhone販売差し止め請求の同意は、全国的になんら実質的な効力を持っていないことになります。また、その根拠となるものが来週頭にリリースされるパッチで消え去ったら、その販売差し止め請求は無効ということになります。ひとまず中国全体でiPhone販売差し止め酔うような大騒ぎの事態にならないでよかったと思います。
記事は以上です。
(記事情報元:9to5Mac)