Appleが【中国製メモリ】を使わないと誓うのか。米上院議員6人がAppleに突きつけた書簡の回答期限が、米国時間の8月21日に来ました。日本時間では今夜から明日にかけてが期限当日にあたります。この記事を書いている時点で、Appleからの公の回答は伝えられていません。3週間前に私がお伝えした件の、期限当日の整理です。

どちらのメモリを取るのか。机の上には書簡。画像はイメージです。
求められているのは「世界中のどの製品にも使わない」という誓い
書簡を出したのは、共和党のジム・バンクス議員と民主党のチャック・シューマー院内総務を筆頭とする超党派の6人です。要求の中身は明確で、中国のメモリ大手CXMT(長鑫存儲)とYMTC(長江存儲)のチップを、中国向けに限らず世界中のどの製品にも使わないと約束しろ、というものです。
あわせて、期限までに答えるべき質問も並んでいます。
- CXMTのチップを実際にテストしたと報じられている件の詳細
- 採用審査の過程で、技術情報や知的財産を先方に渡したか
- 中国の半導体企業への規制を弱めるよう、政権に働きかけたとされる件
両社は米国防総省の「中国軍事企業リスト(1260H)」に載っており、YMTCはさらに商務省のエンティティリストにも入っています。シューマー氏は2022年にAppleとYMTCの取引を潰した実績があり、今回が2度目の攻防です。
Appleの言い分は「中国向けだけ」
Appleがなぜ中国製メモリに手を伸ばすのかといえば、答えはひとつ、メモリが足りないからです。AI向けの需要でメモリ価格は高騰を続け、Appleは2026年の出荷計画そのものを絞り込む事態になっています。
Apple、2026年のハードウェア出荷を絞り込みへ。Mac miniやMacBook Airの出荷も
Appleの理屈はこうです。中国製メモリは中国国内向けの製品にだけ使う。そうすればSamsung、SK hynix、Micronの供給分をそれ以外の地域に回せる、と。ところが上院側は「中国向けだけなら良い」とは言っていません。1個でも使えばアウトという立場です。ここが噛み合っていません。
沈黙は、たぶん計算ずくです
ここからは私の見立てです。
Appleにとって、この誓いはどちらに転んでも高くつきます。公に「使わない」と誓えば、メモリ調達の選択肢を自ら減らし、中国政府の心証も悪くする。誓わなければ、ワシントンで政治問題として燃え続ける。
だから、いちばん安い選択肢は公の場では何も言わないことです。書簡への回答は非公開の書面でもできますし、期限を過ぎたからといって罰則があるわけでもありません。上院議員の書簡は法律ではなく、政治的な圧力です。Appleが期限当日まで沈黙しているのは、慌てていないというより、公開の言質を取らせないと決めているからだと思います。
中国側から見えるもの
ここからは中国在住者としての話です。
この件、中国のテック業界では「Appleが認めるかどうか」より、CXMTがそこまで来たのかという受け止めの方が大きいです。数年前まで、中国製DRAMは「安いが一線級ではない」という扱いでした。そのCXMTが、世界でいちばん調達基準の厳しい会社のテスト対象になった。深圳の部品業界の知人も、この件は誇らしげに話します。
そしてメモリ不足の間は、この構図は消えません。米国が止めても需給は変わらず、CXMTのチップは中国メーカーの端末に流れて、そちらの競争力になるだけです。誰が使うかが変わるだけで、チップは売れる。上院の書簡はAppleを縛れても、市場は縛れません。
回答が公表されるとは限りません
期限は米国時間の21日いっぱいです。Appleが書面で静かに回答して終わり、という展開も十分あり得ます。動きがあれば続報を書きます。発端からの経緯はこちらにまとめてあります。
Apple、中国製メモリ「CXMT(長鑫存儲)」の採用テストに着手。米上院は8月21日を期限に回答を要求
記事は以上です。
※記事中の画像はイメージです。
