Apple Musicで、AIで作られた曲に「Made With AI」のラベルが付くことになりそうです。Appleがレーベルや配信代行会社に宛てたメールで、年内にAI生成楽曲への表示を義務化する方針を伝えたと報じられました。今年3月から任意で始めていた仕組みを、義務に格上げする形です。

曲の一覧の中で、1曲だけに目印が付く。そういう世界になります。画像はイメージです。
何がどう表示されるのか
対象は「実質的な部分がAIで生成された」楽曲です。具体的には、生成AIサービスから主に作り出されたトラックが該当します。作曲支援にAIを少し使った、という程度は対象外で、曲そのものをAIが作った場合を想定した線引きです。
ラベルを付ける義務を負うのは、Appleではなく楽曲を納品するレーベルと配信代行会社です。AppleはAI楽曲を検出する社内の仕組みを持っているとしつつ、基本は納品側の自己申告に頼る建て付けになっています。
正直に言えば、抜け道だらけです
ここは冷静に見ておきたいところです。自己申告制で、報じられている範囲では違反したときの罰則も示されていません。AI生成曲を人力の曲と偽って流し込む業者にとって、申告する動機はありません。
それでも意味はあると思います。ストリーミング各社は今、AI生成曲の洪水に直面しています。聴き手からすれば「これはAIの曲だ」と分かること自体に価値がありますし、大手レーベルは虚偽申告のリスクを取れないので、まともな流通経路から順に表示が定着していくはずです。
中国は1年前から、法律でやっています
ここからは中国在住者としての話です。
実はこの仕組み、中国では2025年9月1日から法律で義務になっています。国家インターネット情報弁公室など4部門が定めた、AI生成コンテンツの表示に関する規則です。音楽に限らず、文章・画像・音声・動画のすべてが対象で、要求は二段構えになっています。
- 明示ラベル … 利用者の目に見える形での表示
- 暗黙の識別子 … メタデータへの電子透かしの埋め込み
そして中国の規則がAppleの仕組みと決定的に違うのは、プラットフォーム側に確認義務があることです。配信する側は、コンテンツを載せる前にAI生成かどうかを確かめ、透かしが無くてもAI生成の疑いがあれば、その旨を表示しなければなりません。自己申告に頼らない設計です。
私は中国のこの種の規制を手放しで褒める気はありません。表示義務は、当局がコンテンツの出どころを追跡する仕組みと表裏一体だからです。ただ、「自己申告では機能しない」という見立てだけは、中国の方が1年早く織り込んでいた。Apple Musicの仕組みも、いずれ検出と透かしを軸にした形へ寄っていくと思います。
なお、AppleのAIをめぐる中国での立ち位置はこちらにも書きました。中国で商売をする以上、AIはAppleにとって規制と切り離せない話になっています。
Apple、中国向けの独自AIモデルをアリババと開発か。外国企業として初の政府認可とも
AIの曲は消えません。だから表示するしかない
AI生成の音楽を締め出すことは、もう誰にもできません。できるのは、人の曲とAIの曲を区別できる状態を保つことだけです。その意味で、任意から義務への格上げは正しい一歩だと思います。表示が始まったら、自分のライブラリにAIの曲がどれだけ紛れていたか、確かめてみるつもりです。。
記事は以上です。
(記事情報元:MacRumors、South China Morning Post)
※記事中の画像はイメージです。
