Appleの音楽への使命を負うデバイス【iPod】誕生15年の変化

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iPodがテック系のニュースにのぼることは少なくなってしまった。iPod Classicは生産中止になり、その他のシリーズも2年以上大きな更新はなく、Apple自身でさえオフィシャルサイトのトップからiPodのメニューを項目を撤去してしまった。かつてAppleの深刻な経営危機を救った起死回生の製品ラインナップも、今は人々の記憶の中に残る存在でしかない。

ますます”周辺機器化”するiPod

昨日未明、AppleはiPodシリーズを一新した。特にiPod Touchはプロセッサのアップグレードにより32ビットから64ビットデバイスとなり、iSightカメラも800万画素とグレードアップした。そして価格は据え置きとなった。

しかしiPod touchがいかに強化されようとも、もうiPodはAppleの中の重要な製品とはなりえない。Appleの会計年度2015年第一四半期から、販売台数があまりにも少ないことから、Appleは財務レポートでiPod製品ラインを他のApple TV、Beatsのヘッドフォン・イヤホンなどの周辺機器と一緒くたに統計し、iPod単独ジャンルで扱われることさえなくなってしまった。そのことからも、iPodの販売台数の落ち込みについては容易に推測できるというものだ。Appleの本音からすれば「少なすぎて公開もしたくない」といったところなのだろう。

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2008年から2014年の四半期ごとのiPodの売上げ棒グラフ。どんどん少なくなっているのが一目でわかる。Appleは15Q1からこの数値すら公開しなくなった

2001年からの10年、iPodはAppleにそのうなぎ登りの業績をもたらしたが、2010年あたりから、iPodはその地位を4代もの代替わりをしたiPhoneに明け渡したといっていいだろう。あの年のiPhone 4は年で最も売れた爆発的なデバイスとなり、当時の携帯電話市場を席巻した。それ以降Appleは携帯電話市場での一大巨頭となり、全ての携帯電話業界の92%の利益を稼ぎ出すという桁外れの規模になったのだ。

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Appleの会計年度2015年Q1の各製品営業収入比率の円グラフ。iPhone、Mac、iPad、サービス、その他にジャンルが分かれており、iPodはその他の中に一緒くたにされてしまった

去年iPhone 6とiPhone 6 Plusがリリースされた後、Appleは1四半期で7,500万台ものiPhoneを売るという記録を打ち立てた。最新2四半期の財務レポートによれば、AppleがiPhoneから得た所得は全収入の70%を占める。当時iPodが全盛期だった頃でも、iPodが全体の収入に占める割合は48%に過ぎなかった。

iPod Touchの新しい役割

しかし、iPodが全く以前のように振るわなくなっても、iPod TouchはやはりiPod Touchで、最も垣根の低いiOSデバイスということでユーザを惹きつけているのは間違いない。多くの人がかつてiPod TouchではじめてiOSシステムに触れ、まだあのノキア(NOKIA)が落ちぶれていない年代に、世界的には(ガラパゴスな日本は例外)ノキアのNシリーズとiPod Touchというのが学生達に非常に人気になり、そのiPod Touchを学生時代に使っていた人たちがその後iPhoneユーザに変わっていったという背景もある。

昨日未明のアップデートで、【電話をかけることができない】ことと【画面が小さい】ということ以外は、iPod TouchはiPhone 6と同じスペックで同じOSを積んでいる。価格もiPhone 6の3分の1で、iPod Touchよりもプロセッサの処理速度が劣るiPhone5sの半額以下だ。そして選択できる本体色もiPhoneよりも多く、多くのiPhone 6を経済的な理由で購入できない若者にとっては最高の選択肢となるのは間違いない。

iPod Touchについては、Appleができることは精一杯やったが、やれるのはここまでといった感じだ。Appleは先月、オフィシャルサイトのトップメニューからiPodを外し、Apple Musicに置き換えたことを忘れてはならない。

NIELSENの調査結果によれば、米国の音楽ユーザのうち41%の人が既にオンラインミュージックやストリーミングサービスを利用しているという。Appleにとっては、これはどうしてもとっておきたい市場だ。Apple Musicもライバルと競争するための大きな助けとなる。海外では既にSpotifyをやめてApple Musicに乗り換える人も現れている。というのはApple MusicはiTunesのプレイリストと連携できるし、更に多くのダウンロードが可能になるからだ。

apple-music-official

Apple MusicとiPodの関係は、Apple MusicがiPodに取って代わるというものではなく、Apple MusicのページにはiPod表示されていることもわかるように、Apple Musicの中の一部となったと考えるのが妥当なのだろう。なお、Apple Musicがまだ始まっていない中国大陸のApple公式サイトでは、Musicのメニューに入ると昨日未明にアップデートされたばかりのiPod Touchが直接表示される。

ただ、昨夜未明に同時にアップデートされたiPod shuffleやiPod nanoはApple Musicをサポートしていない。それを考えれば、iPod TouchのみがAppleの自社製品として価格が最も安いApple Music搭載デバイス、ということになるだろう。Beats Musicと共にAppleに買収されたBeatsのヘッドホン・イヤホンもApple Musicのページに掲載されている。これを見れば、AppleがiPodをメニューから撤収したというよりは、AppleはMusic(音楽)というジャンルでこれらの製品をひとくくりにしたと考えた方が良さそうだ。

画蛇添足 One more thing…

以前の記事にも書いたが、SNSやチャットアプリの充実によって電話での通話の必要性がなくなってきた昨今では、iPod touchを廉価版iPhoneとしても使うことが考えられると思う。電話の必要性を感じない人であれば、画面の小ささを我慢すれば、十分一流のデバイスだ。iPhone 5cや噂のiPhone 6cを買うくらいなら、こちらを買った方がいいかもしれない。

記事は以上。

(記事情報元:iFanr

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