先日日本時間6月5日に行われたWWDC18(世界開発者会議2018)の基調講演で、Appleは自社独自の画像描画技術のAPI「Metal」を更に推し進め、次世代iOS 12とmacOS 10.14 MojaveではOpenGL/CL(及びOpenGL ES)が非推奨として扱われることになることを発表しました。このやり方では、Metalの発展の推進には繋がりますが、逆にゲームメーカーなどからは猛烈な反発が出ています。彼らは、Appleのこの行為はクロスプラットフォームでのゲーム開発には不利で、将来的にMac版のゲームはリリースしない可能性があるとしています。
AppleはWWDC18基調講演の後に、macOS 10.14 Mojaveの開発者向けベータ版(デベロッパプレビュー版)をリリースしました。そのベータ版には、OpenGLとOpenCLが今後サポートされなくなると明記されています。macOS 10.14まではこれらがサポートされますが、Appleはデベロッパに対して、アプリやゲームのプログラムをMetalに切り替えるように推奨しています。今後、macOSでOpenGL/CLが使えなくなるのは時間の問題ということになりそうです。
Appleはこれまで、ずっとOpenGLを排除しようとしてきました。そんなわけで、macOSはOpenGLをサポートしているものの、その内蔵のバージョンは2010年にリリースされたOpenGL 3.3のままで、2017年にリリースされた最新版の4.6ではありません。そんなわけでデベロッパ自身が方法を考えなければならず、今年の初めにAPI VulkanがiOSとmacOSバージョンをリリースし、デベロッパがmacOS上でゲーム開発が行いやすいようになりました。
現在は、既に多くの研究開発のためのリソースを豊富に持つ大規模メーカーは、Metalに基づいたMac版ゲームをリリースしています。例えばワールド・オブ・ウォークラフト(World of Warcraft)、デウスエクス(Deus Ex)、ザ・ウィットネス(The Witness)、ダートラリー(Dirt Rally)などです。
しかしその他のゲームメーカーはそうではありません。Vlambeer社のデザイナーのRamiさんは、「MetalとDirectXの問題は非常によく似ていて、これらはどちらもクロスプラットフォームではありません。私たちはサポートする画像エンジンを追加しなければならず、どれかのプラットフォーム専用の図形APIは苦痛でしかないのです」と述べています。
大流行しているゲーム「ブリッジ・ビルダー(Bridge Builder)」の開発者、Alex Austinさんはもっと直接的です。彼は過去Windowsのゲームの開発を専門にしてましたが、OpenGLの存在があったので、数時間でゲームをMacやLinuxに移植できていたということです。しかし将来的にゲーム用の画像を全てレンダリングし直す必要が出てくるというのです。「私は1秒たりともMetalに時間を使わないでしょう。なぜならMacの市場シェアが低すぎ、そこまでやる価値を感じないからです。私は今もMac版をリリースしているのは、できるだけ私のファンをサポートしたいと思うからだけです」
ゲーム開発者のPittmanさんもAustinさんと同じような考えを持っています。「ゲームを64ビットに移行するのはそんなに難しいことではありません(macOSでは、10.14が32ビットアプリをサポートする最後のOSになると宣言されています)。しかしMetalに移行するのは不可能です。私の開発した3つのゲームはMacでは全く儲かっていないからです」。
同じく開発者のAltenburgerさんは「Metalの環境を維持し保護してコストは、明らかにMac市場の潜在能力を超えてしまっています。特にこれまでののクラシックなゲームの移管に関しては、Macとは無縁ということになりそうです。なぜなら、誰もMetalを使って10年前のゲームをもう一度構築しようとは思わないからです」とMetalを切り捨てています。
記事は以上です。
(記事情報元:Apple Insider、ANAND TECH)