先週初め頃、Appleはネブラスカ州議会の”Right to Repair(修理する権利)”に関する立法提案に対して反対意見を述べたというニュースがあった。この法の主旨は、顧客がサードパーティの修理屋でデジタルデバイスを修理する難易度を下げるというもので、例えば自動車の修理と同じで、顧客が自らデバイスに対して修理ができるようにするというものだ。
Apple、ネブラスカ州の”Right to Repair”法案に反対、理由はバッテリー発火の危険性があるから?
Appleは代表を派遣し、社員やその他の弁が立つ人に公聴会で彼らの反対意見を述べさせるとしている。その中のAppleの反対意見の1つとして、もし顧客が自分でスマートフォンを修理できるようになると、最終的にリチウムイオンバッテリーが発火する危険性がある、というものだった。
そしてMotherBoardの最新の報道によると、Appleは最近更に別の反対理由を付け加えたという。
Apple、更に反対理由を追加か、ネブラスカ州がハッカーの”メッカ”になる?
Lydia Braschさんは農場主であると同時に、ジョージア州アトランタのあるソフトウェア会社の社員でもある。彼女はネブラスカ州議会による”Right to Repair”法案を支持しているが、彼女によれば、最近Appleのロビーイングの専門家が彼女に電話をかけてきた際に、Appleがこの法案に反対するもう1つの理由を述べたという。
Lydia Braschさんは、「Appleはネブラスカ州が唯一のこの法案を通すアメリカの州となるといっていました。なぜならそれによってAppleは悪意を持った人の攻撃対象となってしまうから、というのです。Appleはこの法案によって、ハッカーが容易にその目標をネブラスカ州に向けて、ネブラスカ州がさながら悪玉ハッカーの”メッカ”になってしまうと言っていました」
ネブラスカ州以外にも8つの州が同様の法案提出の意向
実はネブラスカ州以外にも、ニューヨーク、ミシガン州、ミネソタ州、カンザス州とマサチューセッツ州など8つの州が同じような法案を提出する意向を示している。先週、イリノイ州とテネシー州も同様の法案を既に提出した。現在のところ、ネブラスカ州だけがこの立法提案に対する公聴会を計画していて、3月9日にネブラスカ州リンカーン市にて行われることが確定している。
画蛇添足 One more thing…
Appleの反対意見は2つともなんだか無理があるような気がする。
まずバッテリーに負荷がかかるというのは当然ながらスマートフォンだけの問題ではなく、車など他のバッテリーを持つ機械や電器や電子機器も同じ事で、修理をした場合は修理屋か或いは修理を依頼した本人が責任を持つべきところで、メーカーは自社正規ルートの修理のみ責任を持てばいいだけの話ではないだろうか。
またハッカーについても、実際には例えば中国などでは星の数ほど正規ではない修理屋が存在しているが、それによって中国の修理屋が悪玉ハッカーの”メッカ”になっているわけでもなく、世界のiPhoneのセキュリティがそれで脅かされているわけでもない(もちろん全くないわけではないが、現在のところiOSのセキュリティは保たれている)。例えば顧客自身による車の修理法案がマサチューセッツ州で成立されて施行されても、マサチューセッツ州に車泥棒が集中しなかったように、ネブラスカ州がハッカーの”メッカ”になるというのは明らかに杞憂といえるのではないだろうか。
実際のところは、Appleがその自社正規ルートの整備を殆どしていないが為に(つまりそこにお金をかけていないが為に)、結局日本に限らず、Appleのお膝元アメリカを含む世界各地全てにAppleの正規修理サービスがあるわけではなく、都会の中心に住んでいる人でもなければ毎回ある程度距離のあるApple Storeの激混みのGeniusに相手の都合で予約を取らなくてはならず、しかもすぐに修理できないことも多いため、非常に不便という事情があるのだ。キャリア版を買ったとしても、iPhone以外のスマホはキャリアが修理を受け付けているのに、iPhoneはAppleでないと修理できないのもネックだ。
そういった隙間を狙ってサードパーティの修理屋ができているのであって、Appleがそこを法案の成立を阻止してまで抑えようというのは市場の公正な競争を妨げるもので、またちょっと虫がいい話ではないだろうか。
記事は以上。
(記事情報元:Motherboard)