スマートフォンをはじめとする、スマートハードウェア全体にとって、バッテリー持続時間はこれまでずっと避ける事ができないバツの悪い問題だった。特にウェアラブルデバイスの時代になり、毎日1回充電しなければいけないというバッテリー持続時間はユーザが購入をためらう一つの理由となっている。
現状のリチウムバッテリーの問題と次世代バッテリーに求められる要求事項とは
これまで無数の人がバッテリー問題について議論してきたが、一般的に人々が次世代バッテリーに求める条件とは概ねこのようなものだ。容量の増加、体積は小さく、充電効率は高く、充電方式はもっと便利に、そして環境に優しい。しかし現在広く使われているリチウムバッテリーでは、もし容量を増やそうとすると体積を増やすしか方法がなく、スマートデバイスが”どんどん小さくなる”という傾向とは対立するものとなってしまっている。
MITのベンチャー企業SolidEnergyが特殊リチウムバッテリーを研究開発中
理想的なバッテリーテクノロジーはまだ生まれていないが、既に一歩進んだ技術が生まれつつあるようだ。Forbsの報道によると、MIT(マサチューセッツ工科大学)のベンチャー企業”SolidEnergy”が新しいバッテリー技術を研究開発しており、これによってバッテリー持続時間を大幅に増加させることができるという。
スーパーリチウムバッテリーではこれまでの容量の2倍〜3倍の容量を実現
SolidEnergyは特殊なリチウムバッテリーを研究開発し、現在のテクノロジーの2倍〜3倍に容量を増やすことができるという。同じ体積で、SolidEnergyのバッテリーはより多くの容量の電気を蓄えることができようになるわけだ。具体的には、一般的な携帯電話のエネルギー密度は560-580 Wh/Lだが、SolidEnergyのものは1,337 Wh/Lにもなるという。
SolidEnergyのバッテリーは超薄型金属陽極を採用しており、その薄さは現在使われている黒鉛陽極の5分の1以下だという。他にも同社は室温以下でも稼働可能な電解液も開発しているという。現在のリチウム電池の金属陽極と電解液では、比較的高い温度でなければ作動しないため、低温下でのバッテリー持続時間の延長を望めるということだ。
既に多くのスマートフォンメーカーが注目、今年後半からメーカーでのテスト開始も
このスーパーリチウムバッテリーは必然的にハードウェアメーカーから熱い注目を集めている。事実、既にAppleを含む多くのメーカーがSolidEnergyに興味を持っており、いくつかのバッテリー技術が早くもProject Araで運用されているという。今年の後半頃には多くのスマートフォンメーカーがこの技術のテストを始めるだろう。
とりあえず容量の増加だけを実現
但し、SolidEnergyの技術は上述のバッテリーへの改善要求のうち、“バッテリー容量を増加する”という一点だけを改善するに過ぎない(要求にはないが低温下での持続時間の延長も実現するようだが)。その他の充電効率の強化や環境に優しいかについては、更に先進的な技術をもって実現しなければならない問題のようだ。
画蛇添足
バッテリー容量の増加が実現するだけでもありがたい感じがする。充電に多少時間がかかっても問題はない(一晩充電しても充電しきれないのは困るが)。ただ、私自身はiPhone6 Plusにしてからあまりバッテリー問題には困っていないというのもある(かなりヘビーに使った時だけ、一日でバッテリーがなくなるが)。
もし上記のようなスーパーリチウムバッテリーが実用化されたら、その活躍の場は間違いなくウェアラブルデバイスになると思われる。特に現在初代のバッテリーの持ちが一日以内といわれているApple Watchの次世代辺りには嬉しいニュースとなり、そしてモバイルバッテリーメーカーにとっては地獄のようなバッドニュースとなることだろう。
記事は以上。
(出典元:iFanr)