グーグル(Google)は、AppleからSoCチップ設計の重要人物であるManu Gulati氏を引き抜き、2017年5月から「Lead SoC Architect」という職位につけたことがアメリカのメディアVarietyの報道によってわかりました。
Varietyによれば、Manu Gulati氏が本日LinkedInを更新し、数週間前にAppleを退職し、Googleに入社したことがわかっています。LinkedInのプロフィールによると、Gulati氏は2009年8月にAppleに入社し、iPhone、iPad、Apple TV等のいわゆるAシリーズモバイルチップ(SoC)の研究開発に関わったとされています。ちなみにGulati氏はApple入社前はブロードコム(Broadcomm)で上級エンジニアを務めていて、その前にはあのAMDで技術者として勤務していたようです。
Gulati氏は、グーグルの”子供”ともいえる、Pixelシリーズのスマートフォンのために特注のSoCを製造するためにグーグルに引き抜かれたとみられています。これまでのPixelスマートフォンシリーズは、他のAndroidデバイスと同様、全てクアルコム(Qualcomm)のスナップドラゴン(SnapDragon)チップを搭載してきました。ここにきて自社製の特製SoCチップを使うことで、その開発速度やバッテリー駆動時間を更に改善することができると期待されています。
もちろんAppleのAシリーズチップも全く同じ理念から作られたもので、そのことがiPhoneやiPad、Apple Watchなどの製品が、他のメーカーの同ジャンル製品に比べて優勢を保てる原因になっています。つまりクアルコムやインテルなど、著名なチップメーカーのロードマップに踊らされることなく、それらを搭載している他社製品とは違う速度で自由な開発が可能で、リリース時期のタイミングも自社でコントロールすることが可能になるからです。これは他のライバルメーカーがなかなか真似することができないところです。
Appleは既にAシリーズチップ以外にも、それから派生した製品のチップの自社開発にも余念がありません。Apple Watchをはじめ、現在まだまだ品薄が続く人気商品のAirPodsやAppleが買収したBeats製品のPowerBeats3に使われているのもAppleが自社開発したSoCのW1チップです。
しかしそれらのAppleの重要部品の設計をしてきた重要人物がグーグルに引き抜かれることで、Appleの今後、将来の新型チップ(SoC)の開発に影を落とさないか、心配になってきます。恐らくGulati氏は既に引き継ぎを完了してAppleを辞めていることとは思いますが、やはり会社は人によって動くもの。今後のAppleとグーグルのSoCを巡るビジネス戦も熾烈になってくるのかもしれません。
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