来週発表される折りたたみ【iPhone Ultra】の画面が「折り目が目立たない」とされる理由は、有機ELパネルを2枚の超薄型ガラス(UTG)で上下から挟む構造にある。韓国の業界メディアThe Elecが9月2日、この「2層UTG」をGoogle・OPPO・vivoの3社が2027年の新型で採用すると報じました。パネルを供給するのはSamsungディスプレイ。つまりAppleの折りたたみが発売される前から、その構造がAndroid勢に横展開されることが決まった形です。仕組みと、採用する側・しない側の顔ぶれから見えてくるものを整理します。

「2層UTG」とは何か
UTGは Ultra Thin Glass、厚さ数十マイクロメートルまで薄く加工した折り曲げられるガラスです。SamsungのGalaxy Z Flipが2020年に初めて採用して以来、折りたたみの画面カバーとして定着してきました。従来は画面の上に1枚置くだけ。Appleはこれを上下に1枚ずつ、計2枚にしました。
- 上のUTG: 従来どおりのカバーウィンドウ。傷と衝撃から画面を守る
- 下のUTG: パネルの裏側に敷く支持層。ヒンジと画面が直接触れないようにし、開閉のたびにかかる力を複数の層に分散させる
上下対称にガラスがあることで、ヒンジ周りの剛性と、折り曲げたときの応力の分布を精密に制御できる。The Elecはこれを「折り目を最小化し品質を優先したAppleの選択」と表現しています。ガラスは Samsungディスプレイの協力会社Dowoo Insysが上下両方を供給するとのことです。
もっとも「折り目ゼロ」ではありません。ブルームバーグのガーマン記者は9月1日のTom’s Guideのインタビューで、「折り目が完全になくなるわけではないが、最新のSamsung機と同等か、より頑丈なヒンジのおかげでそれ以上」と述べています。Appleが開発で最も時間を掛けたのは耐久性で、目標は「他のiPhoneと同等か、それに近い丈夫さ」だったそうです。
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採用するのはOPPO・vivo・Google、しないのはSamsung
The Elecによれば、Samsungディスプレイは3社それぞれの仕様に合わせた2層UTGパネルの試作を進めており、量産化の検証中。採用時期はOPPOが2027年1〜3月(Find Nシリーズ)、vivoが2027年上半期(X Foldシリーズ)、Googleが2027年下半期(Pixel Fold)と見られています。
面白いのは、当のSamsung電子は採用しないことです。最新のGalaxy Z Fold8は画面の上にUTG1枚、その下はチタン合金のフィルムと強化チタンのプレートで支える構造。製造が簡単でコストも安い。つまりSamsungグループの中で、ディスプレイ部門はAppleの構造をAndroid各社に売り、スマホ部門は自分たちのやり方を続ける、という分業になっています。パネル1枚あたりのUTG使用量が1枚から2枚に倍増するので、折りたたみの出荷台数が伸び悩んでもガラス業界は潤う、という計算も記事は指摘しています。
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中国の折りたたみ市場では、採用組の合計はわずか11%
ここで中国在住者の視点を入れます。折りたたみスマホの世界最大の市場は中国で、そのシェアはこうなっています。

IDCの2026年1〜3月期のデータでは、Huaweiが60%と圧倒的で、2位がHonorの21%。Appleと同じ構造を採用する予定のOPPOとvivoは足しても11%です。世界全体でも状況は同じで、Smart Analytics Globalの4〜6月期の集計では、世界の折りたたみ出荷340万台のうちHuaweiが48%を占め、Samsungと2社で3分の2でした。
つまりAppleの折り目対策は、Samsungディスプレイからパネルを買っているメーカーには広がるが、中国の折りたたみ市場の8割を握るHuaweiとHonorには(少なくともこの経路では)届かない。両社は中国国内のパネルメーカーを主に使っているとされ、独自の折り目対策で勝負しています。「Appleの構造が業界標準になる」という見出しは、市場の8割を持つ側から見ると「残り2割の標準」だというわけです。
個人的な話をすると、当ブログではvivo X Fold 5をサブ機として使っていますが、折り目は買ったときのままで、使っていて増えも減りもしないというのが正直な実感です(サブなので頻繁に開閉しているわけではありません。またそもそも折り目はわかる、目立つ構造ですが、実際に使用していると思ったより気になりません)。Tom’s Guideの「7日で目立つようになった」という別の機種の報告も見かけましたが、少なくとも手元の1台ではそうなっていません。折り目が「初日にどれだけ見えるか」と「使い続けて悪化するか」は別の問題で、Appleが2枚のガラスで狙っているのは主に前者だろうと見ています。
発売前に「先駆者」と呼ばれる不思議
The Elecの記事はこの構造を「Appleが先鞭をつけた」と書いています。事実としては正しい。2層UTGを最初に量産機に載せるのはAppleです。ただ、折りたたみスマホ自体は2019年から中国とSamsungが7年かけて磨いてきたジャンルで、Appleは最後発です。それでも発売前からその構造が競合に採用され、「Appleの折り目対策がAndroidに来る」という見出しで語られる。技術の中身以上に、Appleが採用したという事実そのものが部品業界を動かしているのが今回の話の本質だと思います。
折りたたみに7年遅れて参入して、発売の1週間前に「先駆者」になる。ブランドとは、そういうものです。
更にOppo Find N6のような正直惚れ惚れするような折り目が目立たない仕様になったら、Appleさすがだなと思うのですが、ただそれでも後追いですからね。。
記事は以上です。
(記事情報元:The Elec、MacRumors、9to5Mac、シェアはIDCおよびSmart Analytics Global)
※記事中の画像はイメージです。
