台湾テック系メディアDigitimesの報道によると、サプライチェーン筋からの情報として、Appleは来年2021年の後半に発売予定の5G対応iPad Proに、独自の5Gモデムチップを採用する計画があるということです。またこの5GチップはもしかしたらiPhone 13にも搭載されるのではないかとされています。
サプライチェーンの間ではミリ波5G対応のAiP(アンテナインパッケージ)モジュールの需要が高まっていて、それは今後ミリ波5G対応端末の需要が高まることを意味しています。その需要を受けて、Appleも既にミリ波対応5G AiPの開発を独自に行っているとDigitimesは主張しています。
5Gは現在のところ大まかに分けてSUB-6GHz 5Gとミリ波(mmWave)5Gの2種類があり、前者よりも後者の方が速度が圧倒的に速いものの、電波の伝送距離が非常に短く、また物体に遮られやすいという特徴があります。
現在最新のiPhone 12シリーズは、米国版のみミリ波5G対応(SUB-6 5Gにも対応)で、その他の国・地域のバージョンは全てSUB-6 5Gのみとなっています。現行のiPhone 12の5GモデムはQualcomm(クアルコム)から提供されていて、これはかつてAppleが長らくモデムチップを購入してきたサプライヤーであるQualcommと特許使用料の支払いの問題で係争関係となった際に、モデムチップをIntel(インテル)製に切り替えましたが、Intelが昨年5Gモデムチップ開発に失敗し大幅に開発予定が伸びることが判明した直後に、Appleは突如Qualcommとの和解と5GチップのQualcommからの購入への切り替えを発表したことは記憶に新しいところです。そしてQualcommとの和解の際には数年間の5Gチップ供給の契約がなされたという情報があります。
また、Intelからモデムチップに関する部門のキーとなる責任者を引き抜いていたこともかつて報道されていたため、Appleが独自の5G対応モデムチップを開発しているのはほぼ公然の事実ともいえるでしょう。
更にAppleがIntelからQualcommに購入先を変えた後Intelはモデムチップ事業を解散し、Appleがその部門の一部を買収しています。
いずれにせよ、Appleは予想よりも早期に自社独自開発の5G対応モデムチップを自社製品に搭載する動きをしているというのが今回のDigitimesの報道であり、それが2021年後半のiPad Proモデルになるとされていて、そのプロセスの一部としてRF-FEM(RFフロントエンドモジュール)を製造する可能性があるとのことです。更に、来年秋の発売となる次世代iPhoneの「iPhone 13」にも搭載されるのではないかともされています。
なお、これまでのテック系メディアやアナリストの予測では、早くても2022年のiPhone(iPhone 14?)から独自5Gモデムチップを搭載するのではないかというのが主流の見方でした。
ただ、Digitimesは確かにサプライチェーンからの情報に強いのは間違いないのですが、そのサプライチェーンからの情報をAppleに当てはめるのがあまり得意ではないらしく、これまで何度もその予測を外してきています。今回も恐らくmmWave 5G AiPの需要の高まりとその開発状況を見て、Appleにもあてはまるとふんだのでしょうが、独自5Gモデムチップの導入時期については、やはり眉唾でみていた方がよさそうです。
上記の通りAppleとQualcommの5Gチップ使用契約がまだ数年あるという情報があるのと、AppleはIntelのモデム開発事業の一部を買収したといえども1からの独自5Gチップ開発はそう簡単ではなく、そこまで早く実現にこぎ着けられるかについては疑問を抱かざるを得ません。
記事は以上です。
(記事情報元:Digitimes via Apple Insider)