米国特許商標庁(USPTO)は本日、正式にAppleが新しく取得した85の特許を発表しました。そのうち、将来スマートスポーツウェア製品に繋がると思われる、これまで関連のものが一切公開されたことがない特許が含まれています。なお、この発明では、スポーツウェア以外にも、EV(電気自動車)の開発プロジェクト”Project Titan”で開発されていると思われる「Apple Car」の一部である自動車の座席など、あらゆる「スマートファブリック(スマート布地)」に応用することができるとされています。
Appleはこの発明の背景として、世の中の人は布地などで作られたファブリックに囲まれていることを指摘しています。衣料品はもちろん、腕時計のレザーバンドや自動車の座席など、人間の体には常に何らかのファブリックが触れています。
しかし従来の布地ベースの物品は、人間の生体的個性(バイオメトリックプロファイル)に適合していない、とAppleは指摘します。快適で通気性のあるファブリックであれば、止まっているときには快適だと感じますが、感情的に高ぶったり、身体的に活動的になった時には同じ物品でも制限を感じたり、過度に暑いと感じたりすることがあります。つまり、人間の感情的・身体的な状態の変換に適用・反応しないファブリックによって、人間は更に不快を感じるなど悪影響を与える可能性がある、と指摘されているのです。
そこで、ファブリックそのものが人間の感情的・身体的状態及び周囲の環境の状態を読み取り、それに適応できれば、人々はより快適になるとされていて、それが今回の発明となっています。
今回Appleの発明特許に描写されたファブリックアイテムは、生体(バイオメトリック)情報を収集する1つ以上のセンサと、バイオメトリック情報に基づいて個人の周囲の環境を調整または維持する1つ以上の環境制御装置とを含み得る、とされています。
上記のセンサには、温度センサ、湿度センサ、圧力センサ、心拍数センサ、またはユーザに関するバイオメトリック情報を収集するその他のセンサを含み得るということです。
そして環境制御要素は、ファブリックの温度を調整し、それによって個人が感じる熱感覚を調整するために、ペルチェ効果装置などの熱触覚装置を含むことができるとされています。
更に、個人の周囲の環境を制御するために使用され得る他の環境制御要素は、湿度制御要素、気流制御要素、臭気吸収要素、臭気放出要素、または個人が感じる感覚を調整することができるその他の環境制御要素を含むということです。
またこの環境制御要素を持つファブリック素材は、個人の体に近づく布地を基にしたアイテム、例えば、バックパックまたは他のバッグ、ソファ、リストバンド、衣料品などに使用することができるとされています。
というわけで、Appleは今後そのテクノロジーを使って衣料品や家具や内装、自動車業界などにも進出しようとしていることがわかります。ただ、バッテリーの問題やペルチェ素子を使う場合は放熱の問題、そして小型化の問題もあり、現状では実用にはまだまだほど遠い気がします。ユニクロ(ファーストリテイリング)あたりと組んでやったら面白いのに、と思うのですが、Appleは高価な製品にすることを狙っているでしょうね。
Appleの特許出願書にはこんな図示が添付されています。
Appleの特許出願書10,299,520は、もともと2015年第3四半期に出願されたもので、本日米国特許商標庁(USPTO)によって公開され、特許が取得されたことが発表されました。2015年第3四半期ですから、既に出願から3年半以上経っていることになりますね。
もちろんこれは特許取得のニュースであって、必ずこの特許に関する製品がリリースされることが保証されているわけではありません。Appleは毎週大量の特許を取得していますが、それらが全て将来或いは現行の製品上に使用されているわけではないのはよく知られていることです。ただ、今回の特許はかなり特殊な感じがしますね。このファブリックとの組み合わせで、最終的にはセンサーや統合環境制御コントロールのハードウェアはAppleのデバイスを使ってもらうように持っていきたいのでしょうね。
記事は以上です。
(記事情報元:Patently Apple)