MacRumorsによると、2年前の2017年、クアルコム(Qualcomm)がITC(《International Trade Commission》米国際貿易委員会)に、AppleのiPhoneがクアルコムの6つの特許を侵害しているとしてクレームを出していました。そしてクアルコムはこのITCへの苦情を理由に、同社のベースバンドモデムチップを使用しているiPhoneやiPadの一部を輸入禁止にすることを裁判所に要求していました。しかし、どうやらそのクアルコムの訴えとその動きは時間と金のかけ方が足りなかったか、或いは完全に徒労に終わってしまうかもしれません。
米国の有名な特許関連のサイト、FOSS Patentsの記述によると、Appleが最近ITCに提出した文書によれば、同社はiOS 12.1のアップデートによって、クアルコムの訴状の中の1つのキーとなる特許、米国特許番号第 9535490 号・標題「コンピューティングデバイスの省電力技術」特許を回避したということです。
Appleによれば、同社はiOS 12.1の中で修正を行い、米国特許番号第 9535490 号を侵害していないことを確保したとしていますが、もともと特許は侵害していなかったとも主張しています。クアルコムのCTOはかつて、特許番号第 9535490 号を回避する代替案があるとしていたことがありました。
FOSS Patentsの創始者、Florian Mueller氏によると、クアルコム自身が適切な回避策について容易に実行できることを以前コメントしたことから、クアルコムはAppleのこの動きについて異議申し立てができないだろうと推測しています。
Appleに対するクアルコムの最初のITCの苦情では、iPhoneがクアルコムの特許を侵害した「6つの発明」について挙げられていましたが、FOSS Patentsがまとめた下記のインフォグラフィックに記されているように、既に1つもiOS上で有効になっていないため、その苦情や訴えは意味がないことになります。
クアルコムは6件の特許のうち3件を棄却しています。本件の行政法審判(ALJ)では、Appleは他の2件は侵害していないと述べ、そして最後の1つが上記の通りAppleがiOS 12.1で回避策を追加したものです。
このようにクアルコムの苦情内容の脆弱さを考えると、クアルコムがこの訴訟に勝訴する可能性は低く、たとえ勝利したとしても、iOS 12.1ソフトウェアアップデートを搭載したAppleのiPhoneには対応できないということになります。
Appleとクアルコムは4月にこれまでの紛争を巡って裁判にかけられますが、クアルコムはこれまでのところ米国ITCへの苦情でAppleに対する証拠を確立することができませんでした。アップルとクアルコムは、特許使用料(ロイヤルティ)の支払いと競争力のない特許ライセンシングについて争っています。もしかしたら、少し早い段階で裁判に決着がつくかもしれません。
ところでiPhoneには昨年からクアルコムのベースバンドモデムチップは使用されず、インテル(Intel)のものに100%入れ替わっていますが、インテルは5G対応ベースバンドチップの開発が遅れているため、そのせいでiPhoneの5G導入が遅れそうです。クアルコムとインテルのベースバンドチップを比較すると、やはりクアルコムに一日の長があるといわざるを得ません。
個人的にはiPhoneへの早めの5Gチップ導入のために、Appleには早くクアルコムと仲直りしてほしいところです。クアルコムとしては、もしAppleとの和解が成立したとしても、自社のSoCで今年7nmプロセスを採用する最新のSnapdragon 855の売上げに響く可能性があるため、Appleへの協力は限定的になるかもしれませんが。。そしていずれにしてもどこかのスマートフォンが売れれば世界最大の半導体ファウンダリとなっているTSMCは喜ぶという構図になっています。笑
記事は以上です。
(記事情報元:MacRumors)