Wall Street Journalによると、Appleの工業デザインチームに一連の変更があったようです。レポートによると、ジョニー・アイブ(Jony Ive、Jonathan Ive)現CDOがかつて直接率いていた240人ほどのデザインチームの中から、Appleの古参のデザイナー達が去ってしまっているということなのです。
その工業デザインチーム(Industrial Design Team)の中でも、Rico Zorkendorfer氏とDaniele De Iuliis氏はAppleに35年も勤務していた古株ですが、この2人が最近退職したということです。またJulian Hönig氏は10年間この工業デザインチームに参加していましたが、今後数ヶ月以内にチームを離れることを計画しているということです。WSJは、これらの工業デザインチームの動向に詳しい人物達から情報を得たとしています。WSJはそれぞれに直接インタビューを試みましたが、以下のような回答だったようです。
Zorkendorfer氏は、これまでの自分の仕事生活から脱して家族と過ごすために休憩を取っていると述べ、Appleのデザインチームで働くことに特権を感じていると付け加えています。De Iuliis氏はコメントの要請にすぐには応じませんでした。Hönig氏はコメントを控えました。
工業デザインチームは、Appleの成功のために尽力し、そして間違いなく貢献してきました。世界一の工業デザインチームといっても過言ではないでしょう。ジョニー・アイブが率いるこのチームは、この10年の間に「ほんの数回」しかチームを離れる人がいなかったことでよく知られています。かつてスティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)がAppleのCEOだった間も、このチームは全体の結束のために、十分な待遇と注意を払われつつ人事異動がなされていたといいます。
WSJは次のように説明しています。
スティーブ・ジョブズは、デザイングループをAppleの製品開発プロセスとを深く結びつけ、チームに注目し、新製品に関する最新の仕事を見るためにほぼ毎日チームを訪問していました。工業デザインチームのApple内での地位の高さと、ジョブズによる好待遇の組み合わせによって、とても社交的なグループが作り上げられ、ここ10年以上でチーム内からはほんのわずかなメンバーしか去らなかったのです。
Appleが世界で最も価値のある会社になったので、株式の配当金だけでもデザイナー達は億万長者になりました。工業デザインチーム内の多くの人が、2棟から3棟の一軒家を買う余裕があったほどです。
しかし、最近、状況が変わり始めたというのです。ダニー・コスター(Danny Coster)氏は、2016年に工業デザインチームを去った後GoProに参加しました。クリストファー・ストリンガー(Christopher Stringer)氏は2017年に退職し、最終的にはロサンゼルスをベースにした小さなオーディオのスタートアップ企業を設立しました。
これらの離職は、2015年にかつて工業デザインチームを直接率いていたAppleのデザインのトップ、ジョニー・アイブが、工業デザインチームの日々の監督作業から退いた時期から発生しています。アイブ氏は、Appleの本社のApple Parkへ移行するためのデザイン作業を先導した後、2017年後半からようやく彼の本来の製品そのものの工業デザインの仕事の役割に復帰しました。しかしジョニー・アイブCDOはイギリス出身であることもあり、家族との時間を大切にするために第一線からは退いているといわれています。
WSJのインタビューに応じたZorkendorfer氏は、人事異動は新世代のデザイナー達へのバトンタッチの合図であると示唆しました。Zorkendorfer氏は、次のように述べています。「ここ数十年の間に私たちがやってきたことは続いていきます。才能はそこにあるのです。」
どうやらAppleはデザイナーの新しい世代への世代交代を図っているようですが、しかし一説では簡単に人をクビにしていたスティーブ・ジョブズでさえ扱いを慎重にし好待遇をしたという、素晴らしく結束が固い工業デザインチームから、最近ベテラン勢が一気に抜けているというのは少し気になるニュースです。Appleでの仕事そのものがつまらなくなっているか、今の現場のトップがあまりリーダーシップがとれていないか、ジョニー・アイブCDOがあまりに放任しすぎているか、ティム・クック(Tim Cook)CEOにあまり魅力を感じていないか、社内で特別扱いされなくなったなどの原因も考えられるかと思います。
我々Appleユーザ・ファンとしてはこの工業デザインチームの世代交代が製品外観デザインのみならず、機能や仕様の設計にいい影響を与えてくれるよう、またAppleの良きデザインの伝統は守りつつ、一方であっと驚くようなイノベーションを起こしてくれることに期待するしかありません。
記事は以上です。
(記事情報元:Wall Street Journal via 9to5Mac)