AppleのiPhone 6を訴えた中国深圳の”佰利”が記者会見、倒産寸前はウソで賠償は求めていないと主張

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中国の北京の知財管理裁判所がAppleのiPhone 6/6 Plusの販売差し止めの審議結果を出したことで物議を醸し、日本でもニュースになった、Appleと特許裁判でもめている中国広東省深圳市のスマホメーカー、”佰利(Baili、バイリー)”については当ブログでも記事にしたとおりだが、続報が入ってきた。

6月24日、佰利公司は北京で記者会見を開き、AppleのiPhone 6/6 Plusの外観上の20を超える特徴が同社の特許を所有する製品と”完全に一致”することを主張したが、同時に「Apple製品の販売に影響を与えるつもりもないし、損害賠償請求を出したこともない」とも主張している。

去る5月10日、北京知財管理局が、iPhone 6/6 Plusの外観デザインが佰利公司が所有する知財権商品の特許を侵害しており、Appleにこの2機種の販売差し止めの命令をする決定を下した。Appleはそれを不服とし、行政訴訟を起こして裁判所にこの決定を取り消すように要求している。

外観デザインが似ているかどうかについては、専門性が非常に高い問題

北京市の知財管理局は、iPhone 6/iPhone 6 Plusと佰利の特許案件については、一部の違いはあるものの、一般の消費者が気づきにくい非常に些細な差異で、両社には顕著な区別はないとみるべきというもので、特許保護の範囲内にあるものと判断したという。

しかしAppleにいわせれば、iPhone 6/iPhone 6 Plusと佰利の端末の間には多くの顕著な区別があるとしており、また両者は似てもいないし近似でもないという。

▼さて、あなたにはどう見えるだろうか。。似てるような、似てないような。。

佰利のスマートフォン、100+のデザイン
佰利のスマートフォン、100+のデザイン

 

AppleのiPhone 6/6 Plusのデザイン
AppleのiPhone 6/6 Plusのデザイン

6月24日、佰利公司は北京維詩弁護士事務所の楊安進弁護士を代理人として記者会見を開いた。その中で楊弁護士は、中国の特許に関する法律法規及び関連する司法解釈の規定によると、外観デザインの相似性の判断は”一般消費者の目線”が判断基準であると主張している。その一方で、外観デザインが似ているか否かの判断は、専門性が非常に高い智力労働で一般消費者が感知できるものでもないということも述べている。

「”一般消費者”が指すものは、現実の本当の消費者個人そのものを指すわけではなく、一種のバーチャルのな主体を指すのです」と楊弁護士は述べている。”一般消費者”とは、特許案件の申請日より前に、同じ或いは近似のジャンルの製品の外観デザイン及びその常用デザイン手法に関して常識的な理解があること、そして外観デザイン・形状・図案(ロゴ含む)や色彩上の区別に一定の識別能力や、基本的な図面を読み取る能力と工程を復元する能力を持つ人のことを指すが、製品の形状・図案や色彩の微少な変化については特に注意を払わない人のことでもあるという。

楊弁護士は、佰利公司の該当特許とAppleのiPhone 6/6 Plusを六面図で1つ1つポイントを比較したところ、27もの特徴が完全に一致していることを発見したという。また構造も実質上近似であり、これらの特徴は単独であろうと他の特徴との複合的要素であろうと、消費者の視覚に重大な影響をもたらすという。

 

佰利の主張:事実を明らかにし、知的財産を保護したいだけ

Appleとの特許訴訟で紛糾している佰利公司は槍玉に挙げられた。ネット上では、佰利が既に破産していて、今回の特許訴訟で大量の賠償金を得ることを目的にしているとまで言われている。

それに対し、佰利公司及びその法人代表の徐国祥氏の代理人で、前出の楊安進弁護士は、記者会見において佰利公司の経営は継続されており、会社が”破産”しているとか”存在しない”というのは依拠のない推測に過ぎないと主張している。

「私たちは事実を明らかにし、自らのデザインアイデアと知的財産権を保護したいと望んでいるだけで、Apple製品の販売に影響を与えたいとは思っていませんし、賠償要求も出したことはありません」と楊弁護士は語っている。佰利は最初に特許侵害があることを知った時、Appleに対して弁護士を通じて手紙を送り、話し合いを行いたい意志を表明し、そこで事実を明らかにし、誤解を避けたいという内容を伝えたという。しかし現在特許侵害に関する紛糾が司法の段階に入ったため、佰利公司は積極的にその司法プログラムに参加し、裁判所の審理にも協力するとしており、現在はただ佰利の特許がAppleから侵害を受けたかどうか、裁判所に確認してもらいたいだけだとしている。

6月21日、Appleはこの特許に関する紛糾について、現在のところiPhone 6、iPhone 6 Plus、iPhone 6s、iPhone 6s Plus及びiPhone SEを含む全ての機種はまだ中国市場で販売を続けており、行政訴訟に関しては北京知的財産権裁判所が踏み込んで審議を行っているとコメントしている。

記事更新現在、Appleは6月24日の佰利の記者会見での発言に対して何らコメントをしていない。

 

記者会見では建前を述べてみたものの、実態は本当に倒産寸前、親会社も倒産寸前で連絡取れず、代表者は長らく姿を見せず

Appleにとっては突然湧いて出てきたような、全く無名の会社からの訴訟は、どう考えても特許ゴロからの賠償請求にしか見えないだろう。正直、第三者から見てもそうだ。

“深圳”で”スマホメーカー”というキーワード、どこをどう切り取っても金太郎飴のように”金の亡者”の姿しか出てこないような中国人や中国企業、それとグルになっている弁護士が、「知的財産権を保護したいだけで賠償請求を出していない」なんてことを口にしても誰が信じるだろうか。。

そんなことは建前で、絶対に本音ではないというのが20年以上中国ビジネスに関わってきた私の個人的な見解でもある。あわよくば、ここで一儲けしてやろうと考えているに違いない。霞を食ってる企業も弁護士も世の中には存在しないのだから。。

と思って調べてみたら、楊安進弁護士自身が、メディア”南都都市報”の取材に対して、2015年以降は佰利の経営が傾いていることを自ら吐露していることがわかった。

深圳の携帯電話メーカー業界の中では佰利はそこそこ知られている存在で、米国のメディアでいわれているような特許ゴロ(パテント・トロール)と呼ばれるような実体のない会社ではないのだが、佰利の2015年の資産状況は28.76万元(約443万円)しかなく、1年間の営業収入はゼロ(つまり営業をしていない)、そして利益はマイナス45.01万元(約694万円の赤字)で、会社の負債は662.55万元(約1億225万円)も抱えているのだという。数字を見るだけで今にも潰れそうな零細企業であることがはっきりわかる。これで倒産寸前と言わずして何であろう。

また、法人代表の徐国祥社長が同じく代表を務めている佰利公司の親会社、深圳百分之百数码科技有限公司の状況も芳しくない。同社は2006年10月に設立され、2015年の総資産は7121.11万元(約10億9,906万円)だが、負債総額が8019.83万元(約12億3,777万円)となっている。深圳の信用ネットワークによるサーチ結果によれば、この百分之百公司の株は既に裁判所によって凍結されており、徐国祥社長の持ち分についても一部は既に中信銀行深圳支店と中国銀行深圳羅湖支店に差し押さえられているという。また同社は労働報酬に関する訴訟も抱えている。

南都都市報が深圳百分之百数码科技有限公司と連絡を取ろうとしたが連絡が取れなかったという。つまり親会社も外部から連絡が取れず実体のサービスを行っていない赤字会社ということだ。徐代表も、昨年3月にメディアの取材を受けて以来公の場に姿を現していないという。

 

楊弁護士は北京トップ10に入る知財弁護士、さて、その手腕は?

ただ、この会社の代理人となっている楊弁護士は2013年に北京トップ10の知財弁護士として評されたほどの弁護士だ。しかし零細企業に近い会社が超巨大企業を相手に権利裁判をすることの難しさを南都都市報に訴えるなど、世論に訴えようとするような姿勢も見せている。そして24日の会見では「Appleの中国での成功を嬉しく思う。ライバルではあるものの、同業者として協力してやっていければと思う」と、身の丈をわきまえないような発言をしているのも面白い。

楊弁護士としては、いきなりけんか腰で行くとAppleにあっという間にたたきつぶされるので、基本的に物腰柔らかく低姿勢、低調にスタートしたいと考えているのかもしれない。

しかしこんな会社や弁護士がAppleを訴えるとしたら、やはり一発起死回生狙いの行為だと捉えられても仕方がないだろう。運良く裁判に勝てば、この楊弁護士の懐にも成功報酬として巨額な賠償金の何%かが転がり込むのだ。こんなに”美味しい”話はないだろう。もし負けたとしても、佰利の売名行為には大いに役に立つはずである。

この特許訴訟が今後どうなるか。。みものである。

なお、佰利についてはロケットニュースで記者の沢井メグさんも調べて記事を出しているが、、正直かなり浅い。。笑

記事は以上。

(記事情報元:WeiPhonecnBetaSina Tech

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