AppleはMac、iPhone・iPad、Apple Watch、Apple TVなどの様々な製品が世界中で売られ、知られています。しかしそんなAppleでも、あまり知られていないか、失敗している製品もあります。例えば、無線ルータシリーズのAirPortは、少なくとも今日現在では殆ど存在感がないといっても過言ではないでしょう。この製品は1999年に最初にリリースされ、2013年以降全く更新されていません。そしてAppleはとうとう、AirPortの製品ラインを正式に終止符を打つ決心をしたようです。
昨日、Appleのスポークスマンが、「私たちは全面的にAirPortシリーズのルータ製品の生産を終了しました。これから短期間ではまだAppleの公式サイト、Apple Store小売店と、Appleのプレミアムリセラーで販売は続けますが、全ての在庫がなくなったら販売を終了します」と発表しました。というわけで、AirPort Express、AirPort Extreme、AirPort Time Capsuleの3機種全てが開発・製造・販売を終了することになります。
Appleは2012年と2013年にこの3機種のAirPortシリーズをリリースしましたが、5〜6年経った今になってもアップデートされていません。2016年、ブルームバーグ(Bloomberg)がAirPortシリーズの研究開発(R&D)を終了し、AirPort部門のスタッフはその他の製品のR&D部門に回されたと報じました。その理由としては”Appleはもっと収益の上がるコンシューマ製品に重点を置くことになったから”とされています。
Apple自身も、既にその姿勢をはっきりと打ち出していました。2018年1月にはサードパーティ製(Linksys)のWi-Fiルータを自社の公式サイトで売り始めています。
なお、AirPort製品ラインの生産が停止されても、AppleはAirPortシリーズのために5年間のソフトウェア提供やアフターサポートは続ける予定です。Appleは更にルータの選択に関しての文書を公開し、AirPortから他の製品への移行についてアドバイスしています。もしルータを変更したい場合は、IEEE 802.11ac、2.4GHz/5GHzのデュアルバンド、WPA2(AES)暗号化とMIMOまたはMU-MIMO機能がついた製品を選ぶようにアドバイスしています。
とはいえ、AirPortシリーズはやはり他社のルータとは一線を画している製品でした。例えばTime CapsuleはmacOSのTime Machineによるバックアップ機能が備わっていて、ExpressではAirPlayやワイヤレス印刷機能が標準装備されていました。これらに代わるものは殆どなく、前者についてはTime Capsule対応のネットワークディスクを買うか、iCloudドライブなどのクラウドバックアップにする(とはいえこちらは完全なTime Capsuleの代わりにはなりません)、また後者についてはAirPlay対応・ネットワークプリント対応のルータを買うしかないかもしれません。AirPlayのみ使いたい場合は型落ちのApple TVなどでも代わりにはなりますが、もちろんルータ機能はありません。
時代の流れを感じますが、AirPortシリーズはまだまだ需要があったのではないかと思います。ただ、機能複合製品だったため、どれか1つが壊れると全てを修理しなければならないという製品であったことがサポートを難しくしていたこと、またApple自社で開発するほどのレベルが高い製品というわけでもなくサードパーティ製品でもできてしまうこと、またクラウドストレージの普及などがAirPortシリーズが”放棄”決定に拍車をかけたのではないかと思われます。
記事は以上です。
(記事情報元:9to5Mac)