私たちがApple(アップル)の共同創業者の故スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)を話題に挙げるとき、人によってそれぞれ違う観点があることに気づく。
なぜならジョブズは唯一無二のカリスマと、周りの人達をもっと努力するように仕向ける感染力を持っていたと同時に、彼は身の回りの人達を糞味噌に批判することもあったからだ。
7月20日の米国のメディア「Business Insider」で、そんな彼の負の面にフォーカスを当てた、
「スティーブ・ジョブズがろくでなしを演じていた16の例」という挑戦的なタイトルの記事があったので翻訳してご紹介したい。
1. Team FDAができるほどの衝撃的な罵り言葉「f*cking d*ckless assholes!」
ジョブズの伝記本の著者、ウォルター・アイザックソン(Walter Isaacson)によれば、
Appleのサプライヤーの1つ、VLSI Technologyが生産キャパの問題でAppleに納期通りチップを納品できなかったとき、
ジョブズは軽々しく相手の会議室に乗り込み、大声で「f*cking d*ckless assholes(ファッキンでタマなしのケツの穴達め)!」と叫んだ。
その後、VLSI Technologyは納期通りAppleにチップを納入できるようになったというが、
VLSIの幹部達は「Team FDA」という文字を後ろにプリントしたジャケットを着たという。
このFDAはジョブズが叫んだ言葉の頭文字をとったものだった。
2. 「お前らは自分らが何をやっているのかわかってないな!」
Appleが間もなくボンダイブルー(Bondi Blue)色のiMacをリリースしようとしているとき、
ジョブズはCMの配色の問題で協力先の広告の専門家リー・クロウ(Lee Clow)を電話でどなりつけたことがあった。
ジョブズは、クロウのチームが広告の中でiMacの色を間違えたと思い込んでおり、
「お前らは自分らが何をやっているのかわかってないな!どうしようもないものを作りやがって、違うところに作らせるからな!(”You guys don’t know what you’re doing. I’m going to get someone else to do the ads because this is f*cked up.”)」となじったのだ。
最終的にはクロウはジョブズを落ち着かせることができ、更にオリジナルの写真と広告の配色の色を見比べさせることに成功し、そしてクロウが正しく、ミスではなかったことを証明した。
ジョブズは結局それを認め折れるしかなかったという。
3. 「私はこの部屋が気に入らないな、まるで糞まみれだ。さあ行こう!」
これはジョニー・アイブ(Jony Ive)のスティーブ・ジョブズ追悼演説でも有名な話だが、
ジョブズがジョニー・アイブが予約したロンドンの五つ星ホテルに着いたとき、
ジョブズがすぐにアイブに電話して、
「私はこの部屋が気に入らないな、まるで糞まみれだ。さあ行こう(”I hate my room. It’s a piece of sh*t, let’s go.”)」と言ったという。
また、外に出るとき彼のホテルに対する感想を余すところなくホテルの受付に伝えたという。
4. 市場の年配の女性従業員を特に明らかな理由もなくがみがみと叱る
ジョニー・アイブによる暴露話によると、
ある時彼とジョブズがWhole Foods Marketのスイーツの店でシェイク(スムージー)を買うときに、
年配の女性が対応したのだが、その時にジョブズはその年配の女性の仕事上の問題をいちいち包み隠すことなく指摘したという。
しかしその後、ジョブズも相手が年配の女性であって、特に好きな仕事をしているわけでもないということに気がつき後悔したという。
5. 「お前が人生でこれまでやってきた1つ1つのことは全部クソだ。」
1981年にリリースされたXerox Starは、非常に期待され話題になったコンピュータだった(結果的に究極の大失敗作品だったのだが)。
ジョブズはそのXerox Starをテストし、全くこれは誰にも深い印象を残さない代物だと感じた。
数週間後、彼はXerox Starのハードウェアデザイナーのボブ・ベルヴィル(Bob Belleville)に電話をかけ、このように言い放った。
「お前が人生でこれまでやってきた1つ1つのことは全部クソだ。で、何で私のために働かないんだ?(”Everything you’ve ever done in your life is shit, so why don’t you come work for me?”)」
そして驚くべきことにその言葉を受けたベルヴィルはジョブズのチームに加わったのだった。
6. 長年娘のリサの認知をしなかった
ジョブズは長年彼の娘であるリサ(Lisa)を自分の娘と認知しなかったことは有名だ。
リサとその母は長い間政府の補助金で生活していたのだ。
しかしジョブズは最終的に養育費を支払うことを決定し、カリフォルニア州政府に罰金を支払った。
そしてジョブズが亡くなる前に、彼と娘のリサは正常な親子関係を修復した。
7. 両親がジョブズを学校に送ったときに、両親に挨拶や感謝の言葉なし
前出の伝記本の著者アイザックソンによれば、
ジョブズの両親が彼を学校へ送ったときに、彼は一度も彼らに「バイバイ」または「ありがとう」と言ったことがなかったという。
ジョブズはあまり彼のキャラに似合わずそのことを後悔し、後に回想して以下のように語っている。
「あれは私の生涯の中で最も後悔していることの一つだ。
私はとても敏感な人ではないが、両親の心を傷つけたことは知っている。
私はあんなふうに行動するべきではなかった。
両親は当時私を非常に支えてくれていたが、私は彼らのそばにいたくなくて、
誰にも私の両親のことを知られたくなかったんだ。
私は自分が孤児のように終点のない電車に乗って、家もなく、語れる物語もなく、外との関係を持たないことを望んでいたのだ」
8. 事前通知なしの解雇を実行
ジョブズがピクサースタジオ(Pixar Studio)でリストラをしなければならなくなった時、
彼はよく全く慰謝料なしでクビを切っていたという。
初期のPixarアニメーションスタジオの従業員だったパメラ・カーウィン(Pamela Kerwin)はジョブズに「少なくとも2週間前には従業員に解雇を伝えるべきです」と提言したところ、
ジョブズの回答は「OK」「でも解雇通知は2週間前から遡るんだよ」と答えたという。
9. 親友のウォズの手伝いがあってもらったボーナスを殆ど独り占めした
ジョブズがアタリ(Atari)で仕事をしていた頃、彼はその後Appleのもう1人の共同創業者となるスティーブ・ウォズニアック(Steve Wozniak)を雇って、初期バージョンのゲーム用ハードウェア”Pong”を開発させた。
この研究開発がとても速くできたため、ジョブズはボーナスをもらうことができた。
しかし彼は最も仲が良い親友であったウォズにそのボーナスの具体的な金額を告げず、
大部分を自分の懐に入れてしまった。
10. 「OK、彼には0株あげよう」
ダニエル・コッケ(Daniel Kottke)はAppleの最も初期の従業員の一人(社員No.11)で、ジョブズの友人でもあり、1974年に2人で一緒にインドに行ったほどの仲だった。
しかし何の原因かわからないがジョブズはコッケに何らストックオプションを与えなかった。
このことについてAppleの5番目の従業員でエンジニアリング担当副社長のロッド・ホルト(Rod Holt)が、コッケのストックオプションを全て買い取ることを提案したときに、
ジョブズはこう言ったという。
「OK、彼には0株あげよう(”OK. I will give him zero.”)」
11. 仕事上の面接で相手にハラスメント
伝記本の著者アイザックソンの暴露によれば、
ある従業員募集面接が行われたときに、ジョブズは応募してきた面接の相手に対して突然、
「君は何歳の時に童貞を失ったんだい」と聞いたという。
応募者は面食らって「今何と仰ったのですか」と聞き返したが、ジョブズは「君は童貞かい」と聞き返したという。
応募者がかなり動揺したのでジョブズは話題を変えて、「君は何回LSDをやったことがあるかね」と聞いた。かわいそうなその応募者は顔が真っ赤になったので、
Macの初期研究開発チームのスタッフだったアンディ・ハーツフェルド(Andy Hertzfeld)がその気まずい雰囲気を和らげるために技術的な質問をした。
そして応募者がそれに回答しようとしたときにジョブズが横から割って入り、「“Gobble, gobble, gobble, gobble,”」という七面鳥ががつがつと食べる音の擬音を発したという。
その後この応募者は立ち上がり、「私はこの仕事に向いていないと思います」と言い、出て行ったという。
12. 「じゃあなんでこのくそったれはそれができないんだ?」
MobileMeのサービスが2008年にリリースされた頃、このサービスがデータがクラウドと同期できないことで多くの人の批判を浴びることとなった。
Appleファンでウォールストリート・ジャーナルのコラムニストのウォルト・モスバーグ(Walt Mossberg)でさえMobileMeを未完成の商品だと批判したほどだ。
その問題についての従業員会議中、ジョブズはMobileMeのチームに対して「誰か私にMobileMeは一体何をしようとしているのか教えてくれ(”Can anyone tell me what MobileMe is supposed to do?”)」と聞いたという。
そしてその答えが得られた後、ジョブズは「じゃあなんでこのくそったれはそれができないんだ?(”Then why the f*ck doesn’t it do that?”)」と言い放ったという。
ジョブズはその場でMobileMeの責任者をクビにし、代わりに現在はAppleの上級副社長(シニアヴァイスプレジデント)になっているエディ・キュー(Eddie Cue)にその仕事を任せたという。
13. ニューヨーク・タイムズのジョー・ノセーラに電話をかけ、自分の健康について書かれたことに噛みつく
2008年、ニューヨーク・タイムズ(New York Times)のジョー・ノセーラ(Joe Nocera)がコラムでAppleが投資家に対して事実を隠蔽し、ジョブズの本当の健康状態を伝えていないという内容を書いた。
そのコラムが発表される前にジョブズはノセーラに電話をかけ、「お前は私が一人の傲慢で高慢ちきで、法律を守らないようなヤツだと思ってるな。ならばお前はデタラメな報道をして、事実を歪曲する大飯喰らいだ!」と罵ったという。
14. iPadのCMについて自社の広告チームと喧嘩
ジョブズはiPadのCMを通じて製品に大きな勢いをつけようとしていたが、
彼が初めてCMを見たときに全く満足せず、広告業務提携をしている担当者のジェームズ・ヴィンセント(James Vincentt)に電話をかけ、「お前の作ったCMは全くしょうもないな、iPadは革命的な製品なんだ、だから我々には成功するビッグなCMが必要なんだ。でもお前は小さなクソを私にくれた」
その言葉が2人の争論の始まりとなったが、ジョブズも実はその時にどんなものが欲しいのかがわかっておらず、彼自身はただヴィンセントが十分に新しくエキサイティングなCMをもたらすことを望んでいただけだった。
そしてその後何回かの修正を重ねて、初めて最初のiPadのCMが世に出たのだった。
15. AppleのApp Storeが閉鎖的との批判に怒りを爆発
Gawkerというウェブサイトの作者ライアン・テイト(Ryan Tate)がジョブズに1通のメールを出し、
なぜiPadのアプリのサードパーティデベロッパーに対して十分にApp Storeを開放せず、
彼らにiPadのために自分の好きなものを作らせないのかと問いかけ、
それがテイトとジョブズの間のメール交換のヒートアップを生み出した。
そしてそれに対するジョブズの回答の最後にはこう結ばれていた。
「ところで、君はいったいこれまでどんなすごいことをしてきたのだ?君は何かを生み出したのか、それともただ他人の仕事を批判して、そのモチベーションを削ろうとしているのか?(“By the way, what have you done that’s so great? Do you create anything, or just criticize others’ work and belittle their motivations?”)」
16. どうやったら効率的かつ効果的に他人を傷つけることができるかを間違いなく知っていて、しかもそれを実行していた
伝記本の著者アイザックソンは、
ジョブズの最もよき友人であったジョニー・アイブ(Jony Ive)にインタビューし、
ジョブズが何を考えていたのかということを質問したことがあった。
ジョニー・アイブによれば、
かつてジョブズになぜ従業員に対してあれほど粗暴にふるまうのかと質問したことがあったが、
ジョブズ本人は全く粗暴だと認識していなかったという。
アイブは、ジョブズは子供と同じようにあることについては非常に怒りやすいが、
その感情はあまり長く続かないという。
しかし時々ジョブズは本当に気落ちすることがあり、
それに対する発散方法が他人を傷つけることもあるのだが、
彼は自分がそのようにする自由と権利があると考えていたという。
同時に彼は普通の他人との社交関係を築くやり方が自分には合わないと思っており、
そしてどうやったら効率的かつ効果的に他人を傷つけることができるかを間違いなく知っており、
しかもそれを実行していたという。
翻訳・引用は以上だ。
まとめ:ジョブズは恐らくろくでなしを演じていた
ちょっとアンチのような書き方になってしまっているが、
上記の16のエピソードは全てジョブズが素晴らしい物を作り出すために他の全てを犠牲にしてもいいというほどの覚悟と情熱を持っていた証拠ではないだろうか。
その結果として、ジョブズはApple II、Macintosh、iMac、iPod、MacBook Air、iPhone、iPadなどの世の中を変えるほどのイノベーティブな製品を作り出すことができたに違いない。
ジョブズ亡き今、こんな勢いがAppleに残っていればいいのだが。。
なお、上記のエピソードなどは冒頭で紹介したスティーブ・ジョブズの伝記本で読むことができる。
記事は以上。