フィンランド首相:スティーブ・ジョブズとAppleが同国に経済危機をもたらしたとの独自見解を語る

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Alexander_Stubb_Finland

今年46歳になるアレクサンダー・スタッブは先月フィンランドの首相になったばかりだ。
スタッブ首相は2011年〜2014年にフィンランドのEU事務局及び海外貿易省長を務めていた。
理屈で言えば、彼は豊富な経済と海外貿易経験を積んでおり、スピーチもウィットに富んだものになるはずだ。
しかしこの首相が最近スウェーデンの業界紙「Dagens Industry」の取材を受けた時に、
フィンランドが現在20数年来最も深刻な経済危機に陥っている原因について、
何と全てApple(アップル)の間違いだと決めつけたのだ。
フィンランドのメディアがスタッブ首相をインタビューした動画があり、
それは有料なのだが、無料で見られるプレビューだけでもその内容を窺い知れるというものだ。

動画による無料部分のインタビュー内容は以下の通り。

記者:2008年の経済危機以降、国(の経済)が一向に回復してきませんが。。
首相:我々は2つの大きな経済的な市中を持っている。しかしiPhoneがノキア(NOKIA)に打撃を与え、iPadが木材や紙パルプの産業に打撃を与えたのだ。
記者:ということはジョブズがこれらを全て引き起こしたと?
首相:その通りだ。ジョブズが我々の仕事を奪ったのだ。

これを聞いたらジョブズもあの世で「そんなん知るか!」と怒鳴ってしまうかも。。
steve-jobs-iphone

確かに、多くのテクノロジー市場、特にPCのマーケットがApple製品によって明らかに縮小したのは紛れもない事実だ。
しかし一国の首相が大衆の面前で、
米国企業の1つAppleが1つの国家に打撃を与えたなどというような言論はいかがかと思う。
確かに、日本の会社SEIKOが正確で動作時間が圧倒的に機械式よりも優れているクォーツ式腕時計を安価で世の中に出した途端に、
スイスの機械式時計メーカーが殆ど倒産してしまったように、
1つのイノベーションが世界的に栄えていた地域の産業を潰してしまうことは過去にも幾度もあった。
そしてもし今年AppleがiWatchをリリースしたら、
世界の時計メーカー全体が打撃を受けるかもしれない。

しかしそれは資本主義・市場経済の宿命で、そのイノベーションを起こせたところが生き残るのだ。
逆にイノベーションが起こせない国は死んでいくか、違う生き方を探すしかない。
スイスの高級腕時計メーカーは統廃合を繰り返し、
ラグジュアリーブランドの傘下で生き残る道を選び、
製品にもクォーツにない魅力を作り出すために研鑽を重ね、現在では息を吹き返している。
そのような弛まぬ努力とイノベーションなくしては経済危機を脱するなど夢のまた夢だ。

逆にイノベーションはより多くの人に恩恵を与える。
例えばAppleのiPhoneやiPadがあるおかげで、
中国にある組立工場のFoxconnにどれだけの雇用と経済発展をもたらしているだろう?
そしてAppleの製品の内部に入っているチップなど電子部品は多くが日本のメーカー製か、
日本の特許が一杯詰まっていて、日本にも経済的な恩恵を与えている。
もしスタッブ首相の言い方が正しければ、
日本人や中国人はみなジョブズに感謝しなくてはならないということになるのだろうか?

なお、スタッブ首相はインタビューの続きで、
フィンランドは環境保護を発展の基礎とし、
またフィンランド発のゲームが流行することで、
国家もそれによって利益を得るだろうとしている。

最後にスタッブ首相は、国家は国家が提供するものによってのみ発展するものではないとし、
1. 国家の仕組みの改革 2. EU内部の市場流通の緩和 3. 世界との自由貿易の緩和の3点で成長を図るとしている。

後半は意外にまともだが、
しかし問題の原因の正しい分析なくして正しい改善計画はあり得ないと思うのは私だけだろうか。
製造業長かったもので、すみません。。

ちなみに、Steve “Jobs”が我々の”Jobs(仕事)”を奪った、というシャレになっているのにも注目だ。。笑

記事は以上。

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