iPhone 6/6 Plusは既に販売されて1年半以上が経過しているが、今でもその人気は衰えておらず、Appleの公式サイトで販売されていることから現在も生産が続いており、その累計出荷量は増加するばかりだが、それに伴って設計上のミスとサプライチェーン上に生じた問題が表に出始めているようだ。
しかもその全容が、サードパーティの修理屋の分析によって明らかになりつつある。今回は中国上海でたまに新機種のリーク情報やマニアックなiPhoneの内部構造の情報を出すことで有名な修理屋【GeekBar】が興味深い投稿をしていたのでご紹介。
本日紹介するのは、iPhone 6 Plusでよくみられる故障とのことで、「タッチパネルが効かなくなる」という問題についてだ。
iPhone 6 Plusでタッチパネルが効かなくなる問題
GeekBarの修理データによると、iPhone 6 Plusは使用して半年後に、タッチパネルが効かなくなる確率が高まるという。
iPhone 6 Plusのタッチパネルが効かなくなる現象の詳細
ディスプレイの上部に白い線が現れてタッチパネルが効かなくなる。スリープ状態にしてまたロック解除すると正常に戻るが、暫く使っているとまた同様に白い線が現れて。。というのを繰り返す。
原因
原因については、iPhone 6/6 Plusに採用されているのはアルミ合金のシャーシで柔らかいことから、スリープボタン(電源ボタン)部分が変形しやすく、タッチセンサーチップがちょうどそこに位置しているからと考えられるようだ。
そして一部のロットのiPhone 6 PlusにUMTのロジックボードが使われていることも原因だ。
※UMT=台灣欣興電子股份有限公司は1990年に設立され、本部は台湾の桃園亀山工業区にあり、世界トップクラスの基板製造企業で、PCBやICCarrier産業では世界トップクラスのサプライヤーとなっている。
しかしこのUMT製のロジックボード(メインボード)の安定性が残念ながらその他のメーカーのものと比べて少し劣り、外部からの何らかの力が加わった時に損傷する確率が高いのも原因のようだ。
問題の分析
GeekBarの技術者は、問題の発生するiPhone 6 PlusのSoC(A8チップ)のE3ピンからタッチセンサーIC(U2402)のM1ピンを繋ぐ回路が断絶されていることを発見した。これは外部からの力が加わったことで、ソリッド基板の回路層に亀裂が入ったからと思われる。これによってタッチセンサーICとSoCが同期している信号が欠落し、そしてタッチパネルが効かなくなるということになる。
↑iPhone 6 Plusの回路図。
↑正常に動作しているiPhone 6 PlusのタッチセンサーとSoCの同期信号波形図
修理方法
ロジックボードを加熱し、断絶した回路を繋ぐことで通路を作る。ただしあくまで補充的な修理で、根本的な解決をするわけではない。
GeekBarでは、ロジックボード上でタッチセンサーICのピンと物理的な線を追加することで接触を回復させるという方法をとっている。それによって回路断絶の問題を解決し、再発生を防ぐという。
修理の手順
以下の写真は顕微鏡を使って撮影されているものも含まれる。
↑この黒いチップが、タッチセンサーICチップだ。
↑熱風ではんだを溶かし、タッチセンサーICチップを取り外す。
↑ICチップを取り外したあとのロジックボード。
↑はんだを取り去ったあとのロジックボード。ICのピンの受け口が露出している。
↑M1から脚を出して直接接続(緑色は光硬化樹脂)
↑光硬化樹脂が固まり固体化すれば、線を固定して絶縁を保ってくれる(光硬化樹脂が被っていないところの処理が雑で、出始めのところの線がチップと当たらないか、ちょっと心配になってしまうのだが。。)
↑タッチセンサーICに再度はんだを載せる
↑タッチセンサーICを載せた後、基板上のフラックスなどの雑物を取り除く
↑もともとついていた散熱用シールを再度貼り付ける
↑テスト端子の絶縁を取り除く
↑先ほどのM1から出た線をこちらのテスト端子にはんだ付けする
↑ロジックボードの修理が完了、テスト後問題がなければ組立
↑修理完了
iPhone 4sのWi-Fi故障問題と酷似?
GeekBarによれば、このiPhone 6 Plusでタッチパネルが効かなくなる現象は、iPhone 4sが一定時間経過後に突然世界的に大量にWi-Fi故障問題が発生した状況と酷似しているという。
ちなみにiPhone 4s時代のWi-Fi故障問題は、Appleはその後Wi-Fiモジュールの見直しを行うという改善を行っている。しかし今回の問題についてはAppleはまだ何らコメントも改善策も提示していない。
Appleは基本的には世界で最高レベルのサプライヤーから部品を購入しており、またその品質要求は極めて高いため、その品質はある程度の保証はされている。ただしその最高レベルのサプライヤーの下請けまで含む膨大な数の企業の全ての製造工程やQC工程まで詳細にわたって一致をはかるのが難しいのもまた事実である。
画蛇添足 One more thing…
上記はあくまで中国の修理屋の見解と手法で、これを真似することを推奨するものではない。基本的に、問題が発生したらキャリアかメーカー(Apple)の公式修理を受けるのが本来はベストだ。タッチパネルが効かないのは他に原因がある可能性もあるからだ(例えばディスプレイパネルとロジックボードの接触不良だったり、衝撃によるデジタイザー本体の故障であったり。)。ただしどうしても時間が足りなかったり、メーカーから無下に断られた場合、また近くにキャリアやApple公式の修理ポイントがない場合などに、サードパーティの修理屋さんで修理するという手は考えられる。
いずれにせよ、問題が顕在化してくれば、Appleは何らかの対応を迫られる可能性もあるが、iPhone 6はApple Care+に入っていなければ無償保証期間は過ぎており、また今年秋の新機種【iPhone 7(仮称)】が販売開始になった時点で製造停止になる可能性はある。
iPhone 6/6 Plusはシャーシの材質が柔らかいため、もともと”曲がりやすい”という「ベンドゲート(bendgate)」問題を本質的に抱えているため(ちなみにiPhone 6sでは更に硬いアルミ合金を使用することで解決されている)、Appleとしてはできるだけ早く市場から引退させたい気持ちがあるのではないだろうか。
なお、iPhone 6sでは逆に硬いアルミ合金を素材として使うことで、中に亜鉛の含有量が増え、その結果酸化・錆びが発生して外観に問題が発生することが中国では多数報告されていることは、当ブログでもご紹介したとおり。
スマートフォンの寿命は電池や性能も含めて3年とAppleもしているように、3年持てばいいというような品質基準になっていても仕方がないところだが、Appleは世界の他のスマートフォンメーカーと比べても圧倒的に厳しい品質基準を持っていて、品質保証体制も厳しい。それでもこのような問題が発生するのは、ある意味開発サイクルが短くなっていることが原因としてあげられるかもしれない。
そんなこともあって、AppleはiPhoneのメジャーアップデートの周期を3年に変更しようとしているのかもしれない。キャリアの2年縛りとはペースが合わないところもあるが、品質のほうが大事だと判断したのかもしれない。となれば、今年秋発売の次世代iPhoneは、最も品質が安定したiPhone 6シリーズの外観のマシンということになりそうだ。そんな意味でも、外観は大差がなくても買いなのかもしれない。。
記事は以上。
(記事情報元:GeekBar)