最近、Apple(アップル)の元CEOのジョン・スカリー(John Sculley)がインドで自社の新しい携帯を売り込んでいることは以前の記事に書いた。
ジョン・スカリーといえばAppleからスティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)を追い出した張本人で、
それ以外にもいくつかの失策によってAppleの凋落を招いたことで知られている。
スカリーは自社携帯のインドでの販売プロモーションをするためのメディアインタビューで、
なぜAppleが安い新型携帯を投入してインド携帯市場を取りに来ないのかを解説しているので紹介したい。
ちなみに統計によると、インドは現在で最もスマートフォン市場の成長速度が速い国で、
12億人の人口と18%のスマートフォン浸透率を抱える国となっている。
そしてインドのスマートフォン市場ではSAMSUNG(サムスン)が圧倒的に強くシェア率は40%、
それに対してAppleはたったの10%に留まっている。
スカリーの言い分としては、
Appleは非常に高い利益率を求めると共に、
製品の品質に対する要求も非常に高いことは周知の事実だとしている。
もしこれまで一貫して守ってきた製品品質へのこだわりをAppleが捨ててしまったとしたら、
現在の500ドルを超えるAppleの株価はあっという間に下がってしまうことだろう。
ただ、この特殊なインド市場でAppleは2つの難しい選択に迫られている。
1つはインドの巨大なスマートフォン市場をみすみす逃してしまうか、
もう1つは株価の下落のリスクを冒してでもインドスマホ市場のシェアを追求するか、だ。
そしてAppleにとってのこの苦しい状況は、他の会社にとってはチャンスなのだ。
(つまりスカリー自身の会社にとってもチャンス到来だと言いたいのだろう)
スカリーはAppleはローエンドの携帯市場を掴むことはできないと考えている。
なぜならAppleは自身のビジネスモデルの制限を受けるからで、
Appleのビジネスモデルとは世界の大多数の国でハイエンドの携帯電話を販売し、
そこで高額の利益を稼ぐというやり方に他ならないからだ。
以上がスカリーの考え方で、確かにインド市場においてはその通りだと言わざるを得ない。
ちなみに同じ発展途上国でも中国市場はAppleにとって既になくてはならない存在となっており、
それは中国の市場が高品質とハイエンド価格帯を維持するAppleの端末を受け容れられる市場にまで成長しているからだ。
インドの市場のスマートフォン普及率は18%と書いたが、中国では55%にも達している。
更にインドの都市部の平均年収は中国の半分から3分の2程度と言われている。
もちろんインドには金持ちもいるが、
まだ全体的にAppleの製品を受け容れられるほどに成熟していないのだろう。
ただ、Appleは昨年秋に廉価版iPhoneといわれる「iPhone5c」を、
フラッグシップモデルの「iPhone5s」と同時に販売し、
これまでの新機種は1種類だけという慣例を打ち破った。
iPhone5cは中国をはじめとしたアジアの発展途上国などへの市場を意識したものだとされている。
もちろんiPhone5cは製品品質を下げたわけではないが、
中身は従来品のiPhone5と同じ仕様で、
外観をアルミユニボディからプラスチック素材に変更したものだった
(外観だけ見ればグレードダウンしたと言われても仕方がない)。
ただ、この戦略は中国では決してうまくいっているとは言えない。
なぜなら、中国のような国では見栄でiPhoneを買うわけで、
見栄のためにはできるだけ良いモノを買って見せびらかしたいという気持ちが働くため、
iPhone5sとiPhone5cを両方並べられたらやはりiPhone5sを選んでしまうものなのだ。
iPhone5sとiPhone5cの価格差が大きいのなら話が別だが、それほど違うわけでもない。
そこには、安物は売らないというAppleの価格戦略のジレンマがあるのだろう。
さてAppleは今後ローエンド市場は狙わないのか、
それとも何か違う方法でローエンド市場にも切り込んでいくのか。。
今年後半にその答えがCEOのティム・クック(Tim Cook)の口から語られることになるだろう。
記事は以上。