モーツァルトにミケランジェロ!Appleの一風変わった開発コードネーム9選

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Appleはテック業界でも秘密主義を厳格に貫いている会社だ。そんなわけで、Appleの社員は開発中の製品について、外部にそれと知られないために秘密の製品コードネームを使っていることが知られている。

Appleの秘密保持のための内部開発コードネームにも、一風変わったものが。。

製品をコードネームで呼んでいれば、万一その呼び名が外部に漏れたとしても、外部の人はいったいそれがなんなのか想像もつかない。Apple社員はこれらのコードネームを大抵はお遊び感覚でつけたに過ぎないかもしれないが、後の世にそれは大きな意味を持ってくることもある。Appleに創業者スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)がいようといまいと、Appleのエンジニア達はよく彼らが開発する製品に一風変わったコードネームをつけていた

この記事ではいくつかのあまり知られていないApple製品の開発コードネームを9つ集めてみた

Purple(パープル)

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これは間違いなく、最も有名なApple製品のコードネームの一つだ。11年前の2004年、当時誰もがまだ【iPhone】という言葉を聞いたことがない時代、ある小さいApple社内グループのエンジニアが、機密プロジェクトの開発を始めた。この最高機密プロジェクトによって作られたのが後のiPhoneとなったのだが、そのコードネームは【Purple(紫)】だった。当時Appleはこのプロジェクトそのものにも【Purple Dorm】という別名をつけていた。「紫のドミトリー(宿舎)」という意味だ。

“Pupleプロジェクトの規則の第一条は、あなたはその他の誰にもこのプロジェクトのことを話してはいけない、でした”と以前AppleでiOSソフトウェア担当上級副社長だったスコット・フォーストール(Scott Forstall)は法廷に立って語ったが、その時に初めてこの”Purple”のコードネームが世に知られることとなった。ちなみにAppleはその頃SAMSUNGとスマートフォンに関する特許裁判で争っていた。

Life Savers(ライフセイバーズ)

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初代の【iMac G3】が1998年にリリースされたとき、その色は”Indigo Blue(インディゴブルー)”1色だった。その後Appleが製品をアップデートし、この製品ラインは5色にカラバリが増えた。増加した4色にはそれぞれフルーツの名前、ラズベリー、グレープ、ストロベリー、オレンジの名前がつけられた。当時Appleはこの5色のiMacに”Life Savers”というコードネームをつけていた。これはアメリカのキャンディの名前からとられた。スティーブ・ジョブズはかつて、「私は消費者に5色完璧に揃えて欲しいと願ってるよ」と冗談を飛ばしたこともある。

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Carl Sagan(カール・セーガン)

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1994年、Appleは【PowerMacintosh 7100】をリリースした。当時のAppleはこの製品が彼らに数十億ドルもの収入をもたらすと幻想していた。Appleはこの【PowerMacintosh 7100】に【Carl Sagan(カール・セーガン)】というコードネームをつけていた。Carl Saganとはアメリカの天文学者の名前だ。しかし【PowerMacintosh 7100】はAppleに数十億ドルの収入をもたらさなかっただけは飽き足らず、Carl Saganの訴状をもたらしてしまった。

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Carl Sagan(カール・セーガン)

1993年のMacWeekでのインタビューで、Carl Saganは【PowerMacintosh 7100】の製品コードネームのことを知り、それで彼はAppleを法廷に訴えた。そのプレッシャーから、Apple社員は慌ててそのコードネームを【BHA】に変更した。BHAは【Butt-headed astronomer】の略で、”頭のおかしくなった天文学者”のような意味だ。その結果、AppleはまたもやSaganに訴えられることになってしまった。

しかし、コードネームがCar SaganにせよBHAにせよ、Carl Saganの訴えは失敗に終わった。最終的にAppleはCarl Saganと法廷外で和解し、結局【PowerMacintosh 7100】のコードネームは【LAW】に変わった。その【LAW】とは法律という意味ではなく、【Lawyers are wimps(弁護士は弱虫)】の略だったという。

当時のAppleは相当とんがっていたことがこのエピソードでわかるだろうか。

Mozart(モーツァルト)とCapone(カポネ)

macos75

AppleのデスクトップOSがMac OSと命名される前は、その名称はずっと”System”だった(日本では”漢字Talk”)。1995年、Appleはまさに【System 7.5】をリリースしようとしていた。当時、AppleはこのOSに対してコードネームを【Mozart】と名付けていた。もちろんこれは言うまでもなく、著名な作曲家で演奏家のヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトのことだ。そして正に1995年にAppleの競争相手のMicrosoft(マイクロソフト)がリリースしようとしていたWindows 95のコードネームが【Chicago】であることを、Appleは聞きつけた。

Mozart

そのWindows 95のコードネームのことを聞きつけたAppleは、Systems 7.5のコードネームを【Capone】に変更したという。これはあの有名なアメリカのマフィアのドン、Al Capone(アル・カポネ)からとられている。

Al_Capone_in_1930

Gizmo(ギズモ)

Apple-Watch

Appleは自社のスマートウォッチをリリースする前、多くの人はその製品が”iWatch”となると考えていた。しかし最終的に我々の前に姿を見せたのは【Apple Watch】だった。もちろんこの製品にもコードネームがあった。Appleの前CTOがかつて、Apple Watchの内部コードネームは【Gizmo】であったことを暴露している。Gizmo(ギズモ)とは、1984年の映画≪グレムリン(Gremlins)≫に登場するグレムリンの変身前の姿モグワイに名付けられた名前で、ある人にとってはこれはガジェット(gadget)のことを連想させる。

Gizmo_Mogwai

Mackelangelo(マケランジェロ)

MacDraw

Appleが1984年に初代Macintosh(マッキントッシュ)をリリースした時、そこについていたお絵かきソフトの名前が【MacDraw】だった。そのソフトの内部開発コードネームは【Mackelangelo】だった。これはご存じイタリアのルネッサンス時期の偉大な画家で彫刻家のミケランジェロ・ブオナローティの名前をもじったものだった。なんでもAppleは当時【Mackelangelo】の名前を本当にこのソフトの名前にしてしまうところだったらしい。

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Piltdown Man(ピルトダウン人)

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Appleが【PowerMacintosh 6100】をリリースするとき、この製品はPowerMacintoshシリーズの中でも”ミッシングリンク”と捉えられていたようだ。なぜならApple社員はこの製品に【Piltdown Man】というコードネームをつけていたからだ。これは後に捏造だということがわかった化石人類のことで、当時の捏造者はこれを人類と霊長類類人猿の間の”ミッシングリンク”としていたからだ。これは20世紀初頭、古人類学会領域で起こった壮大なペテンによって創り出された産物で、当時は大騒ぎされたが、1950年代にフッ素法による年代測定が行われた結果捏造であることが明確となった。

ただ、歴史的に有名なピルとダウン人と違うのは、Appleの【ピルトダウン人】、つまり【PowerMacintosh 6100】は確実に存在したということだ。

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Peter Pan(ピーターパン)とLD50

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AppleがApple TVをリリースする前、同社には【Macintosh TV】という製品があったのをご存じだろうか。この製品は1993年にリリースされ、テレビ機能を備えたパーソナルコンピュータだった。これはコンピュータ操作をしながら、有線テレビを見ることができる、といったものだった。Macintosh TVは正直マーケットでは成功しなかった。なんと!たったの1,000台しか売れなかったのだ。そしてそれはこの製品のコードネームも関係していたかもしれない。実は2つのコードネームがあり、1つは【Peter Pan(ピーターパン)】、もう1つは【LD50】だった。

ピーターパンは誰でもご存じのスコットランドの文学作品で後に映画や演劇などになっていった、男の子の冒険物語だ。LD50は医学用語で、「半致死量」のことを指す。冒険したけど半致死量だった、みたいな。。

peter-pan

ワイン用葡萄品種

MacOSX10-0screenshot

Appleの【OS Xシリーズ】のコードネームは、表向きにはネコ科の動物の名前がつけられていたが、Apple社員によるコードネームには、実はワイン関する名前がつけられていた。

【OS X 10.3 Panther】=【Pinot】ピノ
【OS X 10.4 Tiger】=【Merlot】メルロー
【OS X 10.5 Leopard】=【Chablis】シャブリ
【OS X 10.6 Snow Leopard】=【Zinfandel】ジンファンデル
【OS X 10.7 Lion】=【Barolo】バロロ
【OS X 10.8 Mountain Lion】=【Foxtrot】フォックストロット

とつけられていて、これらは全てワインに使われる葡萄の品種か、ワインそのものの名前だ。

そしてAppleが表向きにはOS Xの命名パターンを変えてネコ科の名前をつけなくなっても、Apple社内での酒好きの習慣はどうやら変わることがなかったらしく、

【OS X 10.9 Mavericks】=【Cabernet】カベルネ
【OS X 10.10 Yosemite】=【Syrah】シラー
【OS X 10.11 El Capitan】=【Gala】ガーラ

と、ずっとワイン用の葡萄の品種のコードネームが続いている。

画蛇添足 One more thing…

Appleのコードネームのエピソード、いかがだっただろうか?個人的にはカール・セーガンとワインに関する名前はなかなか面白いと思う。

実は他にも、Appleの製品開発コードネームは日本人から見ても色々面白いものがある。

  • Mac II:Ikki(一気。トルコ語で2の意味も)
  • PowerMac 9500:Tsunami(すごいパワーということで)
  • PowerBook 150:JeDI(スターウォーズのジェダイとJust Do Itをかけた?)
  • PowerBook 180c:Hokusai(葛飾北斎から)
  • iMac Revision E:Kihei
  • LaserWriter IIf:Kirin Dry(日本のキリンビールから)
  • LaserWriter IIf:Kirin(日本のキリンビールから)
  • LaserWriter Select 300:Ninja(忍者)
  • Claris File Maker Pro:Banza(Banzai?),Ninja,Samurai(侍)
  • Edition Manager:Diet Coke(ダイエットコーク)
  • System 7.1:Jirocho(清水次郎長?)

ちなみに、上記のようなAppleの隠されたコードネームについては、かなりマニアックにAppleの20年を紹介している本、≪Apple Confidential 2.0≫に実は羅列されている。45ページからの「Code Names Uncovered」からだ。英語のみだが。。

実は日本語版でもAmazonで出ている。Apple Confidential 2.5Jとなっていて上下巻に分かれている。これは2006年の≪Apple Confidential 2.0≫を、あのNobiこと林信行さんが翻訳して、更に2年分の内容が入って2.5Jとなっているものだ。中古で1円で買える。。すごいかも。

記事は以上。

(記事情報元:WeiPhone、一部誤りを訂正、内容追加)

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