Economic Daily News(聯合新聞網)の報道によると、Appleの最大のOEM(委託生産先)のフォックスコン(Foxconn、富士康)の従業員からの情報として、Appleが今年秋にリリース発表する予定の6.1インチLCD版iPhoneには、2種類のモデルがあるということです。そしてそのうちの1種類は、既に噂が伝わっている「デュアルSIMデュアル待受」のタイプのものとされていますが、Appleはその「デュアルSIM」機を中国での販売に限るとしていて、中国を特別扱いをすることで市場での巻き返しを図っているのではないかとみられています。
次世代iPhoneは既に量産がスタートしていて、Appleは9月にリリース発表する準備に余念がないようです。しかしフォックスコンの従業員によれば、新型機は内部のコードネームで801・802・803・804と4つのコードネームが設けられているそうです。3機種という噂なのに、なぜ4つのコードネームとなっているのでしょうか?ここにデュアルSIM機の存在の証拠があると言うことになりそうです。
業界では、801と802のiPhoneがステンレスベゼルで、有機ELディスプレイ(OLED)搭載の5.8インチと6.5インチの新型iPhoneではないかとみられていて、803と804はアルミ合金ベゼルの6.1インチ液晶ディスプレイ(LCD)モデルのiPhoneではないかと推測されています。そして803と804のうち1機種が、「デュアルSIMデュアル待受」タイプなのではないかとみられています。
iPhoneは11年前のリリース以来、シングルSIMを貫き通してきましたが、中国では広大な国土における国内ローミングが存在したり、公私で携帯番号を分けるなどの特殊な事情で2つ以上のSIMを持っている人が多く、中国のインターネット情報センターの統計によれば、複数のSIMを使用しているユーザ数が3〜4億人にのぼり、近年中国で販売されている主流の大型メーカーによるスマートフォンは、基本的に「デュアルSIMデュアル待受」が標準装備となっているという背景があります。もしiPhoneが「デュアルSIMデュアル待受」となった場合は2台持ちをしなくてもよくなり、多くのAndroidユーザをiPhone陣営に取り込むことができるかもしれません。
しかも、中国だけ特別扱いすることで、中国に対して「面子」を保たせることができ、中国市場で歓迎ムードを醸し出すことが可能になるのも、Appleとしては狙っているところなのかもしれません。しかも同時に発売される2機種よりも価格が下がるとなれば、多くの中国人が手に入れようとするかもしれません。
今年前半に、TF Securities(天風国際証券)の副総裁で著名なアナリスト、Ming-Chi Kuo(郭明錤)氏が、Apppleは今年6.1インチLCDモデルiPhoneで、物理的な2つSIMが搭載可能なトレイを採用した「デュアルSIMデュアル待受」を実現すると予想しており、それが中国市場向けであること、そしてシングルSIMタイプもあるということにも言及していたため、もし上記のフォックスコン内部からの情報とされているものが正しければ、Ming-Chi Kuo氏の情報がかなり早い段階から正しかったことになります。
ただ、iPhoneはやはりAndroid機に比べて価格が高いのは間違いなく、今年の新型iPhoneは大きく分けて3機種出る中で価格差が出るといわれています。iPhoneを使うのは面子のためといわれているほどで、個人的には中国人は面子を大事にするが故に、その3機種のうち高いものを買おうとするのではないかと思います。現在噂では6.5インチの大型【iPhone X Plus】も「デュアルSIMデュアル待受」になるのではないかといわれていて、そうなると中国ではそちらの方が売れる可能性があります。
しかも6.1インチLCDモデルiPhoneはカラーバリエーションが豊富になって展開されるという情報もあり、そうなるとiPhone 5cが失敗した過去の例が頭をよぎります。ただ、もし6.1インチLCDモデルiPhoneが他の2機種と同様のSoC(メインプロセッサ)を採用し、背面も現在のiPhone Xのようなガラス仕様であれば、性能の差や安っぽさが払拭され、売れる可能性はあるのではないかと思います。
ただし、製造上での問題から遅れが発生していることから、販売開始は10月にも間に合わないのではないかとも噂されています。
ただし、中国では国の政策もあって、既に国内ローミングはほぼ廃止になりつつあります。また更に中国では最近、3大キャリアのうち2つのチャイナモバイル(中国移動)とチャイナユニコム(中国聯通)ではSIMカードのパケット通信が無制限のプランがあり、しかも1枚のSIMをメインカードとしてもう1枚違う番号のサブカードを購入すると、サブカードは月額がほぼ無料くらいの値段で同じくパケット通信が無制限となっているほどです(いわゆる家族カード扱い)。上記の1人で複数のSIMを持つ人の数が3〜4億人という統計も、これらのユーザも計算に入れている可能性があります。そうなると、デュアルSIMへの需要はそれほどでもなくなってきている可能性もあり、AppleはiPhone発売後11年でやっと「デュアルSIMデュアル待受」タイプを導入して中国市場での巻き返しを図ったとしても、遅きに失したという評価に終わる可能性もなきにしもあらずです。
もちろん、海外に出かける人にとって、デュアルSIM機は現地SIMや通信用SIMを入れるのには便利ですので、そういった需要を狙っているのあるかもしれません。日本でも電話用3大キャリアSIMと、データ通信メインのMVNO SIMを併用するといった使い方をする人が増えるかもしれませんね。
記事は以上です。
(記事情報元:Economic Daily News聯合新聞網)