昨日、新製品発表スペシャルイベントが行われることなくラインナップに追加されたiPhone 7/7 Plusの(PRODUCT) REDこと”レッド”色。
この赤いiPhone 7シリーズは、正に赤を国旗や自らの国の色として使用している中国市場を狙っていると多くのメディアからは指摘されている。確かに、中国では恐らく売れるだろう。しかし中国以外の全ての国のバージョンで書いている(PRODUCT) REDという名称が、中国大陸の公式サイトでは一切使われず、「紅色特別版(レッド色スペシャルバージョン)」となっていることに注目してみたい(香港・台湾など中華圏でも中国大陸以外では(PRODUCT) REDの名称が使われている)。
まず、Apple中国公式サイトでは、このようになっている。
確かに、(PRODUCT)REDの文字はどこにも見当たらない。ではその理由は何だろうか?
実は中国では昨年施行されたばかりの法律《中華人民共和国境外非政府組織境内活動管理法(中华人民共和国境外非政府组织境内活动管理法、以下管理法)》があり、その第一章第五条に、「国外の非政府組織が中国国内では営利的な活動、政治活動に従事或いは資金援助をしてはならず、また不法に宗教活動に従事或いは資金援助をしてはならない」と定められているからだ。そんなわけで、Appleはこの(PRODUCT)REDという文字を使うことができなくなり、そしてサイトの内容も修正せざるを得なくなったのだ。
ちなみにAppleはこの法律が施行されるまでは、中国大陸でiPhone 7以前にもこれまでiPodやBeatsなどの製品でも(PRODUCT)RED版をリリースしている。
しかし実は、iPhone 7/7 Plusでレッドモデルが中国で(PRODUCT)REDと名乗れないのには更に裏の事情があった。。
まず、この(PRODUCT)REDのチャリティは、The Global Fund、通称(RED)というチャリティ機関が実施しており、このチャリティ機関はAppleやスティーブ・ジョブズとも縁が深いU2のボノ(Bono)の呼びかけによって2006年に正式に設立された。その趣旨は主にアフリカでエイズの予防と治療のための基金という性質だ。この機構の協力会社には、Apple、GAP、FedEx、Converse、Dell、Starbucks、NIKEなど多くの有名企業が名を連ねている。
Appleは(PRODUCT)REDの売上の一部をこの機関(RED)に寄付をすることになっている。そしてその(RED)というチャリティ機関が、2016年7月にこんなInstagram投稿をしていたのだ。。
そう、ダライ・ラマの誕生日を祝うメッセージをしていたのだ。これに対して、ダライ・ラマをチベット分裂・独立の首謀者という罪名を着せて悪人に仕立て上げている中国政府・共産党とその方針に従った教育に洗脳されている中国人達が大反発している。現在の段階ではInstagramは中国では通常では閲覧できないものの、当然ながら壁を越えている中国人は大量にいるため、情報はすぐに伝わってしまうのだろう。
それによって、中国大陸では(PRODUCT)REDの販売ができなくなったと考えてもおかしくないだろう。この情報は既に中国のSNS、WeChat上で出回っているため、多くの人に知られてしまっていることも考えられる。中国向けにレッドモデルを作ったAppleという勘ぐりはあながち外れでもないと思うが、思わぬところで政治的な問題で中国でレッドモデルがそれほど売れないどころか反発を食らってしまう可能性もなきしもあらずだ。
なお、ティム・クックCEOは正面切ってこのように対応している。「世界全ての国で販売された全てのiPhone 7とiPhobe 7 Plusは全てThe Global Fund基金に寄付される」。中国で販売された分の売上の一部も(PRODUCT)REDチャリティのために寄付されるということだ。
iPhone 7/7 Plusは今週金曜日3月25日に、世界40ヶ国・地域で販売開始される。そしてこれはiPhoneとして初めてAppleの(PRODUCT)REDに参加した機種となる。同時に、(RED)チャリティ機関のCEO、Deborah DuganもAppleは世界で最大の企業提携先であることを認めており、既に1.3億ドルの寄付を受け付けているという。またAppleは以下の製品で(PRODUCT)REDを実施してきた。
- iPod
- Beats Solo 3
- Beats Pill+携帯スピーカー
- iPhone 7充電式スマートカバー
- iPhone、iPad、Apple Watch用周辺カバー等製品
しかし中国で商売しようとすると、やはり相当政治問題には気をつけないと思わぬところで足元をすくわれることになりそうだ。。
記事は以上。