Apple以外のサードパーティの修理屋でTouch ID搭載デバイスのTouch IDを含む修理や交換などをすると、復元やアップデートをした際にエラー53が発生してしまい、デバイスが”文鎮化”してAppleに持ち込むしかなくなるという現象が発生している。当ブログでもお伝えしたとおりだ。
ただ、このニュースが広まったことで、一部ではTouch IDの情報が抜け落ちて【街の修理屋さんで修理するとエラー53が発生する】などという誤解が生まれているようなので、以下にiPhone修理屋さんにインタビューを行い、実際に記事作成にご協力いただいた。この記事によってそんな誤解を解ければと思う。
iOSエラー53の発生の原因と仕組み
まずはエラー53が発生する原因と仕組みを頭に入れておくと、理解しやすいかと。
- Touch IDのシリアルナンバーはその端末のプロセッサと紐付け(ペアリング)されているため、以下の状況が発生するとエラー53が発生する。
- 異なるシリアルナンバーのTouch IDが取り付けられている。純正でもペアリングされていないものはNG(ペアリングは基本的にApple公式でしかできない)。
- Touch IDが故障している。
- Touch IDが接触不良を起こしている。
- Touch IDと端末のプロセッサとのペアリングをチェックするタイミングは復元やアップデートなどのタイミング。
iOSエラー53に関する街の修理屋さんでの修理に対する誤解
ともかく声を大にして言いたいのは、【何でもかんでも街の修理屋さんで修理するとエラー53が発生するわけではない】ということ。
Touch IDを含まない修理に関しては、修理の途中でTouch IDを傷つけたり、修理後にTouch IDのトラブルでも起こらない限り、基本的にエラー53が発生することはない。
iOSエラー53について、街の修理屋さんではTouch IDとホームボタンをどのように扱っているか
基本的に、街の修理屋さんであれば、当然のことながらずっと前からiOSの「エラー53」については知っている。そんなわけで、Touch IDつきのデバイスについて、まともで良心的な街の修理屋さんは、Touch IDの扱いには非常に慎重になっている。その実態を紹介したい。
Touch IDとホームボタン周りの部品解説
まずは基本から、iPhone/iPadシリーズのTouch IDはホームボタンと繋がって一体化している。
▼Touch IDつきのホームボタンはここのことだ(わかりやすく色を黒に変更している)。そして修理屋さんは、このTouch IDを含むホームボタン周辺にガラス割れがあった場合は要注意と感じる。
▼正面から見てホームボタンの右側の裏に、本体とホームボタンを接続するケーブルがある。フロントパネルを開け、裏側を見ると、まずはTouch IDとケーブルが鋼板によって保護されているのがわかるだろう。なお、この鋼板はホームボタンを押し込んだときの導通の役割も果たしている。
▼保護用のカバーを外すと、Touch IDの部品と接続用ケーブルが現れる。
上の写真のホームボタンの裏側、Touch IDと本体(フロントパネル)を繋ぐケーブルは、まるで紙のように薄いフレキシブルケーブル(略してフレキケーブル)だ。もしフロントパネルのホームボタン近くにも影響があるような画面割れがあった場合などで、このフレキケーブルに傷がつくと信号が電気的に伝わらなくなるため、Touch IDセンサーが使用不能となる。
▼フレキケーブルの先にあるコネクタと、フロントパネル側のコネクタを取り外したところ。ちょっとピンぼけしているが、左側のところがそうなっているのがわかるだろうか。
▼完全にTouch IDつきホームボタンを取り外したところ。
このホームボタン全体とフロントパネルは、なんとシール(糊のようなもの)によってくっついているため、これが剝がれたり浮いたりすると、フロントパネルと取付部分に段差ができ、そこにフレキケーブルが挟まったりすることでフレキケーブルの切断・断線に繋がることもある。
▼この赤い枠で囲っているボタンの周りの黒い部分がシールとなっている。
▼フロントパネル側ではこの部分と、上の黒い部分がシールでくっついていることになる。
街の修理屋さんがTouch ID付iPhone/iPadの修理で気をつけていること
まず、街の修理屋さんは画面割れなどの修理に来たお客様には、指紋認証が動作するかの確認をするという。もし指紋認証が使えないということは、上記のフレキケーブルの断線か、コネクタ部分の接触不良の疑いがあるということになる。断線の場合はボタンを交換するしかない。。というところなのだが、ボタンを交換してしまうとホームボタンのシリアルIDが本体と一致しなくなるため、指紋認証を使えなくなるばかりか、復元やアップデートをした際にエラー53の問題が発生する。
そんなときには修理屋さんによっては設定>一般>アクセシビリティでアシスト機能の”Assistive Touch”を使って画面上でホームボタン操作をするように勧めるか、お客様自身でバックアップをとってもらってAppleにて修理するように案内しているという。
つまり、指紋認証が使えなくなったiPhoneはやはりApple公式で修理するか、ごまかしながら使うしかないのだ。
しかしもしホームボタンと指紋認証機能が使えるようであれば、つまりTouch IDに影響のない画面割れを含む修理では、Touch IDつきホームボタンを交換する必要はないため、当然街の修理屋では問題なく修理できるということになる。
もしホームボタンと指紋認証機能に問題がない場合は、画面割れの場合はフロントパネル交換による修理となるが、その際も本体内に画面のガラスの破片が落ちていないか、特にiPhone 6シリーズは本体に歪みがないか、また各種ネジなどに緩みがないかをチェックするとのこと。もし本体内に破片やねじが落ちていると、それが原因でバッテリー被服に傷をつけて液漏れが起きたり、ケーブルの接触不良や断線を引き起こしてしまうことがあるためだ。
フロントパネル交換をかなり素早く行っている修理屋さんも多いようだが、スピード勝負というわけでもない。安全第一だ。上記のような予防措置を含めた細かい部分のチェックをしてくれているかどうかも修理屋さんが腕利きかどうかのポイントとなる。
情報提供:街の修理屋さん「CatHandsJapan(キャットハンズジャパン)」さん
今回上記の情報を提供してくれたのは、街の修理屋さん「CatHandsJapan(キャットハンズジャパン)」の代表渡部さんだ。
西東京を拠点とし、東京近郊への出張修理も受け付けている。フットワークの軽さと確かな腕、そして親切な対応と丁寧な仕事が評判を呼んでいる。上記のような細かい部分のチェックはまさに丁寧な仕事で、渡部さんは特にフロントパネル交換修理の際には他店よりも多く時間をもらっているという。
なお、CatHandsJapanさんでは、私も開発に関わっている2015年度グッドデザイン賞を受賞した究極のiPhoneケース【Palmo(パルモ)】も取り扱っていただいている。
ということで、東京近郊で安心のiPhone修理ならぜひキャットハンズジャパンの渡部さんにご依頼を。Palmoも手に持って触れて試せます!
しかしここまで重要な部品が全体的に脆い構造になっているのはAppleの設計の問題もあるのではないか。次世代の【iPhone 7】ではそのあたりがもう少し改善されているといいのだが。
記事は以上。