iPodの父、トニー・ファデルがAppleを辞めた理由とは

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iPodの父とよばれるトニー・ファデル(Tony Fadell)はAppleを離れた後ハードウェアの会社Nest Labsを起業してその後Googleに買収されたことで有名だが、彼が最近The Guardianの取材を受け、自分と妻がAppleを辞めることを選択した原因について語った。

ファデルは当時、iPodの開発グループの非常に重要なメンバーの1人だった。当時AppleはiPodに関与してもらうためにファデルをヘッドハンティングした。彼は最初は仕事を請け負っていただけだったが、その後全力をかけてiPodチームを運営するようになった。その頃妻のダニエル・ランバート(Danielle Lambert)もAppleの従業員だったが、ファデルと違ったのは人材リソース部門の副総裁という高い地位にあったことだ。

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Tony Fadell helped develop both iPod and iPhone – now he has designs on your thermostat. Photograph: Karsten Lemm/DPA/Corbis

2010年に、ファデルは妻と共にAppleを離れることを決意する。その原因は、上記のインタビューにおいて、彼の口から”息子のためだった”と語られた。

“ある日私たち二人が家に帰ると、息子が家でわーわー大泣きしているんです。その泣き声は本当に不安そうなものでした。妻がすぐに息子を慰めて静かにさせようとしましたが、息子は彼の母を押しのけてベビーシッターさんの懐に飛び込んだんです。この情景は、まるで私たちに”お前達はここで何をやっているのだ?誰がこの子供の本当の両親なのか?”という問題を突きつけているようでした。これは実に厳粛な問題でした。あの頃の年月は過ぎてしまって、もう取り戻すことができなかったのです。”

Appleのような大企業で仕事をするというのは仕事に関するプレッシャーが非常に大きくのしかかるのは確かだ。ましてやiPodの父と呼ばれるような人であれば尚更だ(ファデルはiPhoneの開発にも深く関わっていたとされる)。以前、とあるAppleの元従業員が、ソーシャルネットワーク上にAppleでの仕事に関する状況を綴ったことがある。例えば仕事のプレッシャーが大きすぎ、しょっちゅう残業し、日曜も必ず携帯電話はオンにしておかなければならず、いつでも来いと言われれば行かなくてはならず、結局家族と一緒に過ごす時間を失ってしまったのだという。

Appleの現在のデザインのトップ、チーフ・デザイン・オフィサー(CDO)を務めるジョニー・アイブでさえ、以前はその肩書きと仕事内容が常に変化していたため、業界ではアイブはだんだん隠遁生活に入り、彼の生まれ故郷であるイギリスに戻り、多くの時間を家族のために使うのではないかと見られている。

しかしトニー・ファデルがAppleを辞めた原因はどうやらそれだけではなさそうだ。Leander Kahneyの著作によれば、もう1つAppleをやめる原因があったという。それはファデルと前出のCDOジョニー・アイブ(当時はトップハードウェア・ソフトウェアデザイナーだった)との確執にあるという。Kahney氏の新書の中ではこう書かれている。

“トニー(・ファデル)が(Appleを)離れ、数百万ドルもの退職金をもらって辞めたのは、彼がジョニー・アイブと喧嘩をしたからだ。トニーはスティーブ(・ジョブズ)の目の前で何度もジョニーに対して不満を漏らしたのだが、スティーブはジョニーのことを尊重し、いつもトニー側ではなく、ジョニー側に立って話をしていた。”

Appleから離れたファデルはNest Labsを立ち上げた。主に自動温度調節装置(サーモスタット)と煙探知警報器を製造するのが仕事となった。その後Nestは更にデザインが優れたサーモスタットデバイスをリリース、販売価格は250米ドルで、スマートフォンを使ってリモートコントロールしたり、ユーザの習慣に従って自動的に部屋の中を一定の温度に保つなどの機能が備えられている。

Netst Labsは更に煙探知器兼一酸化炭素探知器もリリースしており、売値は129米ドルだ。そしてこの探知器は上記のサーモスタットデバイスとリンクさせて使うことができる。家電のオートメーション化という面では、Nest Labsが間違いなく前途あふれる会社だったといえるだろう。その後Nestは昨年年初にGoogleによって32億米ドルで買収されてしまったため、ファデルもGoogleファミリー、つまりAppleのライバル企業の一員となったのだった。

画蛇添足 One more thing…

普段我々が使っているiPhoneなども、このように開発スタッフが多くの家族との時間を犠牲に下結果生み出されたものだということを忘れてはならないのかもしれない。特にスティーブ・ジョブズの時代は、仕事に対する情熱や即時のレスポンスを求められたため、特に要職に就いている人や、直々にジョブズから仕事を任されていた人は本当に休む暇さえなかったという。今のティム・クックCEO時代になって少しはまともになった可能性はあるが、クックCEO自身が4時半に起きて仕事をするほどのワーカホリックだ。

そしてもう1つ忘れてはならないこと。。それは製造する人達の努力だ。特に中国のフォックスコンなどの組立工場では今でも1ヶ月の給与では自分用にiPhone1つも買えないほどのとてもいいとはいえない条件で工場の従業員が働かされ、作らされているということを。それはいくらAppleがサプライヤー責任をうたって労働条件の改善をアピールしたところで、変わらない事実だ。ある意味iPhoneは正に資本主義と現代の世界経済の形を如実に体現したデバイスなのかもしれない。

記事は以上。

(記事情報元:The Guardian

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