iPhone Xの重要部品VCSEL製造のFinisar、テキサス州に工場を新設。キャパ確保のためApple基金の投資を受ける

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iPhone XのTrueDepthカメラシステムの中で、とりわけ重要な役割を果たすモジュールが「VCSEL(ビクセル)照射器」です。Face ID(Appleの顔認証システム)では、一度になんと30,000個もの赤外線レーザが、VCSELレーザー照射器から発せられています。Appleはこの部品をFinisarという会社から単独購買していますが、このVCSEL照射器の生産キャパシティがずっと問題となっていて、iPhone Xが9月発表されたものの11月に発売となったのは、この部品の供給遅れも原因の1つといわれています。では、その問題は今は解決したのでしょうか?Finisar社はかなり自信があるようです。

iPhone Xの納期のボトルネックになっていた部品”VCSEL(ビクセル)”レーザー照射器

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9to5Macによると、Finisar社のカーティス・バラット(Curtis Barratt)副社長がインタビューに対し、同社がテキサス州シャーマンに65万平米の工場を建て、将来的にiPhone Xやその他の製品に対してVCSEL照射器を供給できるようにする、と回答しています。この工場では正式立ち上げの際には600人の従業員を雇用する予定で、既にライバルのMEMCから多くの従業員を引き抜いているということで、現在新工場の90%の生産ラインや設備の購買が完了していて、4月か5月には組立が始まるということです。

量産に関しては、新工場では8月に初ロットの製品を製造開始するとしていて、10月までには完全に量産を開始するということで、時期的に見れば正に噂されている今年販売モデルとされている、2018年版の新型iPhone 3種類のために準備しているようなものだということが容易にみてとれます。また、Finisar社の目標はiPhone X及び今後の新型iPhone Xシリーズの主要なサプライヤーになることというだけではなく、バラット副社長は3D顔認証以外にも、VCSEL照射器は手によるジェスチャー識別や、自動車の自動運転システム分野にも用いられることだとしています。Appleにとって、VCSELの唯一のサプライヤーであるFinisarがそのような目標を持っているということは、Appleはやはりそれらの技術を実際に製品に使用としている可能性が非常に高いといえそうです。個人的にはVR/AR分野にもいいのではないかと思いますが。

VCSEL(ビクセル)レーザー照射器とは

VCSEL面発光レーザー

VCSEL照射器とは、Vertical Cavity Surface Emitting LASER(垂直共振器面発光レーザ)の略で、半導体レーザーの一種です。一般的な半導体レーザーが基板面に対して平行方向に光を共振させ、その方向に光を射出しているのに対し、基板面に対して垂直方向に光を共振させ射出するようにしたのがこの技術で、大量生産に向いていて、消費電力を抑えられるのが特徴とのことです。

しかも、この技術は1977年に東京工業大学の伊賀健一(助教授:当時、東工大学長就任:2007年10月24日)により考案され、他にも3人の東工大の日本人が技術開発に尽力していたということです。日本人が考案したシステムということで、俄然VCSELにもiPhone Xにも親近感が湧いてきますね。

Finisar社はAppleからの投資でテキサス工場を新設、キャパ確保と更なる野望のため?

現在iPhone Xが使用しているVCSEL照射器の、世界最大のサプライヤーはLumentumですが、2017年にAppleはFinisar社に対して3.9億ドル(現在のレートで約412億円)の投資をしており、同社のキャパシティが増えるように支援していました。またFinisar社のプレスリリースによると、シャーマン工場の新設や購買は、Appleの承認を得ているということです。バラット副社長は現在でも相当自信を持っていて、「シャーマン工場を”世界のVCSEL照射器の首都”にする」と息巻いているほどです。

そして特筆すべきは、Appleのこの投資はAppleによる10億ドルかけて設立された「先進的製造ファンド(Advanced Manufacturing Fund)」から出たもので、このファンドの目的はアメリカ国内の製造業の発展に寄与し、雇用を増やすというもので、まさにトランプ大統領の意向と政策に乗ったものです。ただ、賃金が高いアメリカでのものづくりは、果たして割に合うのでしょうか。資本主義の権化ともいえるアメリカで、製造をアメリカに回帰させることが長期的にみて経済的にはいいことなのか、疑問が残ります。一時的な雇用回復などには繋がるかもしれませんが、それによる製品のコストアップ・売値アップで世界やアメリカで売れないということになると、一大事です。ただ、Appleは高い値段でものを売るのが問題なくなってきているからこそできる芸当なのかもしれません。

ちなみにこのファンドによる投資を始めて受けた企業はコーニング(Corning)社で、AppleのiPhoneを初め大多数のスマートフォンやタブレットに採用されているゴリラガラスの製造で有名なガラスメーカーです。同社は2017年5月に2億ドル(現在のレートで約211億円)の投資をうけていて、これはAppleがiPhoneやiPadで更に硬いゴリラガラスを要求していたためです。

記事は以上です。

(記事情報元:9to5Mac

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