折りたたみ型の【iPhone Duo】について、中国の経済紙である証券時報が10月10日(記事更新時点の3日前)、Appleが供給網への発注を30%増やしたと独占報道しました。増やしたあとでも、2026年秋の新機種としての総量は1,000万台を超えていないということです。同じ調整でiPhone 18 Proの発注は10〜15%減り、iPhone 18 Pro Maxは10〜15%増え、Proシリーズの合計は変わっていないとのことです。
日本では今日13日からApple Storeの購入ページで予約注文の準備が始まります。予約開始は今週金曜日の16日午後9時、発売は23日となっています。準備の中身と下取りの例は昨日の記事でお伝えした通りですので、今回は増産の数字の中身と、それが16日の予約の取りやすさにどう関わるかを見ていきます。

証券時報が報じた「30%増」の中身、増やしても1,000万台未満
証券時報の10月10日14時12分の記事は、同紙の記者がAppleの供給網から独自に得た話として、Appleが2026年秋の新型iPhoneの発注量を「構造的に調整した」と伝えています。中身は3つで、iPhone Duoの発注を30%増やしたが総量は1,000万台を超えていないこと、iPhone 18 Proの発注を10〜15%減らしたこと、iPhone 18 Pro Maxの発注を同じ10〜15%増やしてProシリーズ全体の発注量は変わっていないことです。供給網の関係者は「販売がより価値の高い製品へ傾いているということなので、供給網の企業の業績には全体としてプラス」と話しています。同日15時32分の続報では、調査会社Counterpointが2026年のiPhone Duoの販売を約600万台と予測していることも添えられています。
増やしたあとが1,000万台未満ということは、増やす前の発注は1,000万÷1.3で約770万台未満だったことになります。当ブログでも9月にお伝えした通り、アナリストのJeff Pu氏は年内の生産予想を700万台から600万台へ引き下げていましたし、界面新聞の取材では2026年の在庫目標は600万〜800万台とされていました。これらと並べると、もとの発注は600万〜770万台のどこかにあり、そこから3割増しで800万〜1,000万台弱になった、という読みになります。ただし今回の数字は供給網の匿名の関係者の話で、発注台数はApple非公表の数字です(そもそもそのような数字が公表されることはありませんが)。
「300万台増」の数字について
この報道は9to5Macが12日(日本時間13日未明)に英語で伝え、従来の見積もりが600万〜700万台だったことから、新しい目標は1,000万台に近いと見ています。AppleInsiderは同日、仮に今が1,000万台でその前が700万台なら増えたのは300万台で、証券時報の記事はiPhone Duoを300万台増やすためにiPhone 18 Proを300万台減らしたと言っているに等しい、と計算のおかしさを指摘しています。10〜12月のProシリーズとiPhone Duoの合計は約8,000万台と予測されているので、iPhone 18 Proの10〜15%減は300万台よりずっと大きいはずだ、というのがAppleInsiderの反論です。さらに「1,000万台」という数字自体は7月に報じられたものの繰り返しだとも書いています。
つまり「300万台増」は証券時報の記事に書かれている数字ではなく、AppleInsiderが1,000万台と700万台という仮定から出した差です。元の記事にある数字は「30%増」と「1,000万台未満」の2つだけです。日本語のテック系記事でも1,000万台という数字が見出しに立ち始めていますが、1,000万台は目標値ではなく、上限の数字ということになります。
iPhone 18 Proの減産については、Nikkei Asiaが10月9日に、ProとPro Maxの両方で10月分の部品発注が15〜20%減らされ、理由は値上げによる「需要の弱さ」だと報じています。証券時報の「Pro Maxは増やしてProシリーズ合計は不変」とは食い違います。JPモルガンは12日、この減産はAppleの毎年の生産パターンに沿ったものだとして目標株価を引き上げ、iPhone Duoは12月期に850万台売れると予想しています。Proシリーズの減産幅はApple非公表のため報道どうしの食い違いが残りますが、iPhone Duoについては増やすという話だけが出ているのが今の状況です。
iPhone 18 Proは香港でも発売当日にプレミア価格が原価割れを起こしていました。転売の聖地でもその人気の無さが露呈していたので、減産には納得せざるを得ません。
歩留まり60%台のままで3割増やせるのか
界面新聞の9月の取材では、Foxconnでの最終組み立ての歩留まり(良品率)は9月17日時点で60%を少し超えた程度で、Samsung Displayの有機ELパネルとヒンジ関連の部品は歩留まりの低さに悩まされてきたということでした。供給網はAppleが品質基準を緩めるかどうかの判断を待っている、という話も出ていました。中国の投資情報サイト格隆匯のコラムは、今回の発注増をFoxconnなどの工程の改善が成果を出し始めた証拠だと見ています。
発注が部品と組み立てに対するものである以上、歩留まりが60%のままなら、増やした部品のうち4割は不良品として捨てられることになります。それでも良品を3割増やすには、部品を3割多く投入すればよい計算です。逆に投入を増やさずに良品を3割増やすには、歩留まりを60%から78%(60%×1.3)へ上げる必要があります。発注が増えたということは、Appleが歩留まり60%台の損失を飲んだうえで投入を増やす判断をしたか、歩留まりが上がる見込みを持ったか、そのどちらかであることを意味しています。格隆匯のコラムが言うように工程が改善したのであれば、両方が同時に起きていることになります。
時期の問題もあります。10月10日前後に発注を増やしても、部品の調達から組み立て、出荷までには時間がかかりますので、増えた分が10月23日の初回出荷分に反映されるとは考えにくく、11月以降の出荷に回ると見るのが自然です。Bloombergは発売を予定通りに行えるだけの在庫をAppleが積んだと報じていますが、初期の入手は限られる見込みとされていることもThe Apple Postが伝えています。
16日午後9時の予約は取りやすくなるのか
日本のApple Storeの購入ページには、今日13日から「iPhone Duoの予約注文に向けて準備しましょう。」「新しいiPhoneを今選んでおくと、10月16日午後9時に予約注文が始まった時に、手続きがすばやく完了します。」と表示されています。証券時報によると中国本土の予約開始は16日午後8時で、時差を考えると日本の午後9時と同じ瞬間です。日本と中国の購入希望者が同時に注文ボタンを押すことになります。
年内の総量が3割増えても、上記の通り1,000万台未満です。界面新聞が伝えたProとPro Maxの1つの製品サイクルの出荷2,000万〜3,000万台と比べると、半分以下にとどまります。発売日に受け取れる台数は今も伏せられたままで、増えた分は11月以降に回ると考えると、増産報道があっても16日午後9時の数秒の争奪戦はそのままです。
増産の恩恵が出るのは、むしろ予約に乗り遅れた人の納期ということになりそうです。年内の供給が800万台から1,000万台弱へ増えるなら、11月や12月まで待てる人にとっては、年を越さずに手に入る可能性が高くなったということになります。
小龍的にはこう思った
小龍的には、この証券時報の記事の肝は台数よりも、供給網の関係者の「販売がより価値の高い製品へ傾いている」という一言だと思います。iPhone 18 Proを減らし、iPhone 18 Pro Maxを増やし、iPhone Duoを増やす。3つとも値段が上の方向への調整です。当ブログでは9月に、iPhone Duoの購入者はこれまでのPro Maxユーザからの移行が中心になるだろうと書きましたが、Pro MaxとiPhone Duoの発注が揃って増えているということは、Appleが一番高い2機種を売れると踏んだことを意味しています。364,800円からという価格で予約開始前に発注を3割増やすのですから、Appleの手応えはかなり強いといえるでしょう。
特に中国では不動産バブルが崩壊した後深刻な不景気が続いており、デフレが発生して安いものしか売れない状況になっているのですが、そんな中より価値の高い製品が売れる傾向にあるなんて羨ましいと感じている事業者が多いのではないでしょうか。やはりブランドを確立して本当によいものを作れば、よいものはよい、と買ってくれる消費者もいることを忘れてはいけないでしょうね。
一方で、「300万台増」はAppleInsider自身が仮定から出した計算で、証券時報の記事の外で生まれた数字です。元の記事にあるのは30%と1,000万台未満だけで、しかも1,000万台は上限です。この数字が中国語から英語、日本語へと伝わるうちに「1,000万台に迫る」や「300万台増」と丸められていくのを見ていると、元の記事を開いて数字の真相を確かめることの大事さを改めて感じますね。
ただiPhone Duoを発売日当日の23日に手に入れたい人は、増産報道を見て気を緩めるたら負けということになります。16日午後9時の勝負はそのままです。逆に、発売日にこだわらない人にとっては、年内の供給が増えるのはよい知らせです。11月、12月と待つうちに納期が縮んでくるでしょうから、争奪戦に参加せずに落ち着いて買うという手も現実的になってきたといえそうです。ただ、早めに手に入れないとホレホレしにくいというのはありますけども。。
記事は以上です。
(記事情報元:証券時報(10月10日14時12分)、証券時報(10月10日15時32分)、9to5Mac、AppleInsider、The Apple Post(10月12日)、The Apple Post(9月30日・界面新聞の報道)、9to5Mac(Nikkei Asiaの報道)、9to5Mac(JPモルガンの予想)、格隆匯、Apple(日本))



