iPhone秘史で語られたエピソード:スティーブ・ジョブズは開発当初乗り気ではなかった?

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Appleの共同創業者、故スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)はアメリカで希代の傑出したCEOの一人として現在も認識されています。彼がAppleのCEOに返り咲いた後リリースされたiMac、iPod、iPhone、iPadはビジネス的にもとてつもない成功を収め、そして人々の暮らしを変えたといっても過言ではありません。

iPhone秘史で語られるiPhone開発のエピソード、ジョブズは当初乗り気ではなかった?

iPhone2G_Steve-Jobs

先日、テック業界のライター、ブライアン・マーチャント(Brian Merchant)が執筆した新書、《The One Device: The Secret History of the iPhone(iPhone秘史)》では、Apple社と初代iPhone(iPhone 2G)の物語やエピソードが詰め込まれていて、その内容は非常に面白いようです。ただ、本の中では当初ジョブズはAppleが”携帯電話”を作ることに全く乗り気ではなかったということが語られています。

2005年、初代iPhoneが発売される2年前に、ジョブズは「スマートフォンの問題は、メディア(端末)を通してエンドユーザと接触するのが難しいということ」と語っていたそうです。

 

当時キャリアの発言権が強かったことから、自由なデバイス作りができないことを懸念

本の描写によると、ジョブズはVerizonやAT&Tといった携帯通信キャリアに発言権を握られていて、(キャリアの)ネットワークに接続するどんな携帯電話もスマートフォンも、全てキャリアのいうことを聞かなければならないと認識していたようです。「キャリアと携帯電話メーカーとの力関係では、キャリアが絶対的な優勢を占めている。だからメーカーはキャリアの意見を聞くしかない。”お前の携帯はこうでなければならない”とね。我々はそういったものを作るのは得意ではない。」

実際、2005年にrecodeによるAll Things Digitalで、著名なテック業界のジャーナリスト、ウォルト・モスバーグ(Walt Mossberg)氏による公開インタビューでも、同様のことを答えています(英語)。

 

iPodとの”共食い”も心配の種だった

iPhoneは今では世界で最も売れた電子製品となっていますが、当時まだiPhoneの影も形もなかった頃、ジョブズはiPhoneを開発することについても自らに不安を抱いていたようです。

とある毎日ジョブズと接触する機会のあったAppleを既に離職している元幹部がこの本の作者に暴露したところによると、ジョブズはAppleがiPhoneによって発展の重心を失ってしまうことを心配していたといいます。「ジョブズは、スマートフォンは一部のケチ(pocket protector crowd)のために用意されたものだ」と言っていたそうです。

ジョブズは更に、スマートフォンが当時Appleの最大の売れ筋商品だったiPodを食ってしまうことを恐れていたようです。というわけでAppleは当時携帯電話・スマートフォンの雄だったモトローラ(Motorola)と提携し、iPodへの脅威を排除しようとしました。モトローラが携帯を作って、AppleがiTunesアプリケーションを提供する、というやり方でした。

「どうやって消費者にiPodを買ってもらえるか?私たちの最初の策略は、まず消費者にiTunesが変化したiPod Shuffleを体験してもらって、そしてとてもいい感じを得られたらiPodを買ってくれる、というものでした。」、Appleの元SVP(上級副社長、シニア・ヴァイス・プレジデント)の一人で、”iPodの父”とも呼ばれたiPod部門のトップだったトニー・ファデル(Tony Fadell)氏も、「当時の考え方はこうでした。”私たちは絶対にiPodを共食いさせない、なぜならiPodはよく売れていたから”。」と語っています。

 

結果的には大成功

iPhone4_Steve-Jobs

しかし結果は皆さんもご存じの通り、Appleはモトローラとの提携を終わらせた後、2007年に初代iPhoneをリリースしました。初代こそ2G・GSM(及びEDGE)しか使えない、当時としては通信機能は時代遅れなデバイスになってしまい、またiPhone 3Gが出て3Gが使えるようになっても暫くはコピー&ペーストができないなどの大きな欠点を抱えていましたが、その後iPhoneは代を重ねるうちに、世界的にスマートフォンとして巨大な成功を収め(特にiPhone 4以降)、iPhoneそのものが携帯電話・スマートフォン業界だけではなく、テック業界全体にとってもとてつもないイノベーションをもたらしました。

またiPhoneの大成功によってAppleは世界最高の市場価値を持つ会社に成長したのもご存じの通りです。

当初の懸念通り、iPodはiPhoneに取って代わられる憂き目に遭いましたが、iPhoneはそれを補ってあまりある利益をAppleにもたらしたので、結果的には大きくプラスになったといえるでしょう。

 

≪iPhone秘史≫は、内部の人からは不評

面白いのは、《The One Device: The Secret History of the iPhone》は、Appleの現従業員や元従業員から、本の中の記述は正しくない、と批判されていることです。「これらは全部本当じゃないといえます」と、元Apple従業員のマイケル・ガーテンバーグ(Michael Gartenberg)は火曜日にThe Vergeの記事に対してTwitterでつぶやいています。

Appleを擁護する人が、ブライアン・マーチャント氏によるこのAppleの「外伝」について疑問を投げかけているさまは、以前の他のAppleに関する書籍のことを思い起こさせます。あのウォルター・アイザックソン氏による著書≪スティーブ・ジョブズ≫も、現CEOのティム・クック(Tim Cook)氏や現CDO(Chief Design Officer)のジョニー・アイブ(Jony Ive)などの現在の幹部からも批判されていました。更にスティーブ・ジョブズの未亡人のローレン・パウエル・ジョブズさんもこの本について懐疑的な見解を表明しています。

《The One Device: The Secret History of the iPhone》や≪Steve Jobs≫に描かれていることが本当かどうなのかは、当事者にしかわからないことなのでしょう。

《The One Device: The Secret History of the iPhone》はAmazonで購入することができます。まだ英語版のみですが、いずれ日本語訳が出るかもしれません。英語が得意な方はどうぞ。

ウォルター・アイザックソン氏による≪スティーブ・ジョブズ≫はこちら。

記事は以上です。

(記事情報元:news.com.au

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