中国電信がApple Watch用のeSIMサービステスト開始、中国でeSIM普及なるか?

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先日、中国の三大キャリアのうちの1つ、中国電信(チャイナ・テレコム、China Telecom)がeSIMサービスを一部の都市においてテストを開始しました。このサービスはGPS+Cellar(セルラー)版のApple Watch Series 3及びApple Watch Series 4向けのもので、上海、広州、南京、成都の4都市において試験的なサービス提供が始まっています。

Apple-Watch-Series-4_China

Apple Watch Series 3は昨年2017年に中国国内で販売開始され、中国三大キャリアがeSIMサービスを年末までに開始すると発表していたのですが、結局2017年内には三大キャリアではサービスが開始されず、Appleは購入日を限定することなく、返品を受け付けたという黒歴史があります。

そして今年2018年3月になって、中国聯通(チャイナユニコム、China Unicom)がようやくeSIMの1番号2デバイスサービスのテスト提供を始めました。また中国電信のサイトでも、eSIMのページが公開され、2019年6月30日までに申込みのユーザは、申込み当月を含め12ヶ月の間、サブカード機能と1番号2デバイスサービス料を無料にするというお知らせが出ていました。

ChinaTelecom_eSIM_Apple-Watch

現在のところ、中国聯通のApple Watch Series 3/4 セルラー版向けのeSIMサービスは上海、天津、广州、深圳、長沙、鄭州、武漢の7都市で展開されていて、三大キャリアのうち中国移動(チャイナモバイル、China Mobile)のみまだサービスが開始されておらず、まだいつ開通するかもわかりませんが、年内にサービス開始するという情報もあります。

Apple-Watch-Series-4_China_eSIM

eSIMはこれまでのSIMカードとは違い、物理的なカードをデバイスに挿す必要がないのが特徴です。そのメリットは非常に大きく、ハードウェアの面では、SIMカードスロットのためのスペースを省略できるため、端末の内部の空間が減り、端末はよりコンパクトになるか、或いはバッテリーのためにスペースを割くことができるようになります。そしてユーザにとっても、SIMの抜き差しによってSIMスロットやSIMカードそのものなどハードウェア的な故障やSIMカードの遺失などを防ぐことができ、更にキャリアを自由に選択することで、1つのキャリアの高いプランに縛られることなく使用できるようになります。

ただ、最後に書いたメリットは、携帯キャリアにとってはリスクでありデメリットです。せっかく囲い込んだユーザが他のキャリアに流出してしまうことで、iPhoneを販売する際に値下げをして利益を削っているキャリアとしては大損となるからです(日本でも未だに各キャリア版のiPhoneにはSIMロックがかかっているのは同様の理由によるものです)。そんなわけで、中国だけに限らず米国でもキャリアの抵抗勢力は大きく、eSIMの普及は難航しています。

中国では各キャリアが自身の利益を確保するためのらりくらりとかわしつつ対応しているため、AppleはeSIMの普及に苦戦しています。ただ、中国ではiPhoneの販売網の各チャネルがそれぞれ独立し、キャリアの販売でもそれほど値引がなく、キャリアへの依存度はそれほど高くないため、今後はeSIMが拡がっていく可能性があります。

それよりも、Appleはお膝元の米国でiPhoneのeSIM普及に苦戦しているのです。米国の大手キャリアのAT&TやVerizon、T-Mobileなどもぼそっと簡単に通知を出しただけで、全く協力的ではありません。 なぜなら米国ではiPhoneの販売はキャリア販売網への依存度が圧倒的に高く、Appleとしてももしキャリアにそっぽを向かれると出荷台数に大きく影響が出るため、キャリアの顔色をうかがいながら少しずつ駒を進めてきました。実際、ユーザが減ってもその責任はAppleは負わないわけですから、キャリアがeSIM導入に慎重になるのは理解できる話です。

Appleは2014年10月に販売されたiPad Airのセルラー版から、iPad内部に”Apple SIM”を採用しました。これはeSIMの機能限定版のようなもので、GigSkyなどのグローバル通信サービスを提供しているところに繋いで通信するという方式でした。AppleはiPhone 5sからApple StoreでSIMフリー版を販売開始し、またApple SIMをリリース、そしてApple Watch Series 3でeSIMを導入、更に今年になってiPhone XS MaxとiPhone XRの2機種でとうとうiPhoneにもeSIMを導入、といわゆる「反SIMカード派」の最大勢力として着実にその歩みを進めています。Appleの”海賊精神”はまだこんなところでも生きている、と捉えてもいいのかもしれません。

iPhone XS XR 香港版 中国版 物理DSDS デュアルSIMデュアル待受

それに対して、ウェアラブルデバイス・スマートウォッチに関しては、eSIMの普及に関する抵抗はそこまでないともいえます。なぜなら、ウェアラブルデバイスはあくまでサブで用いるもので、キャリアにとってはプラスの収入になるからです。現在のところ、中国でもApple Watch(Series 3、4)以外にも、ファーウェイ(HUAWEI、華為)のwatch 2 Pro、PORSCHE DESIGN | HUAWEI Smartwatch、HUAWEI WATCH 2 2018などもeSIM機能を備えていますが、中国国内メーカーであるファーウェイでさえ、全国的にeSIMサービスが展開できているわけではありません。現在のところこれらのファーウェイのスマートウォッチ用には、中国聯通と中国移動がeSIMサービスを提供しており、中国聯通はApple Watchと同様の7都市、そして中国移動は上海、広州、深圳、天津、杭州、南京、成都の7都市となっています。中国移動はファーウェイスマートウォッチ用には既にeSIMサービスを提供していることから、Apple Watchへのサービス開始も物理的には不可能ではないことがわかります。あとは条件の交渉次第といったところなのでしょう。

長い目で見れば、技術は進歩し、古い技術は淘汰されていきます。SIMカードの技術は既に古いもので、いずれはeSIMによって淘汰されていくのは時代の趨勢です。今後、歩みは遅いかもしれませんが、Appleのような大手のメーカーが勇敢にそれを進めることで、進歩した技術が採り入れられ、ユーザにとっては利便性の高いサービスが実現するものと思われます。eSIMの普及には今後も期待したいですね。特に中国のiPhoneでのeSIMは早く実現してもらいたいところです。個人的にも複数のSIMカードから解放されたいです。。

記事は以上です。

(記事情報元:威锋网

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