AppleInsider:書籍「ティム・クック Appleを次のレベルに引き上げた天才」書評、説明は確かだがクックCEO本人からの見解が欠けている

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Apple Insiderのウィリアム・ギャラガー(William Gallagher)記者が、これから発売されるAppleのティム・クック現CEOの世界初めての伝記の書評を投稿しています。この伝記には、かのAppleの創業者の一人スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)が亡くなり、トップを引き継いだ後のクックCEOの経歴と、クックCEOがAppleをどのように形作ったかについて、包括的で非常に詳細な説明がなされているということです。

Tim-Cook_The-Genius-Who-Took-Apple-to-the-Next-Level

リーアンダー・ケイニー(Leander Kahney)著作のティム・クックの伝記本、「ティム・クック:Appleを次のレベルに引き上げた天才(Tim Cook: The Genius Who Took Apple to the Next Level)」は、ティム・クックCEOの世界最初の伝記であり、ケイニー氏による前作、Appleのジョニー・アイブ(Jony Ive)CDOの伝記本から形式を継承しているようです。クックCEOの経歴を包括的に説明したもので、スティーブ・ジョブズとは一線を画す人物が、Appleの創業者による遺産をどのようにうまく受け継ぎそして発展させ、現在のAppleを構築したのかを探っています。

Jony-Ive_Jonathan-Ive

以前のケイニー氏の著作「ジョナサン・アイブ:偉大な製品を生み出すアップルの天才デザイナー(Jony Ive: The Genius Behind Apple’s Greatest Products)」には、ジョニー・アイブ自身がケイニー氏と直接話したことがないという問題がありました。そして、今回のティム・クックCEOの伝記本も同じく、本人はケイニー氏と話をしていないようです。ただ、Apple社としてはサンフランシスコ・クパチーノの本社Apple Parkにおいて、ケイニー氏にAppleの上級幹部達とのインタビューは許したことで、この伝記本はAppleが公式に認めたものといっても過言ではないかもしれません。

経営幹部レベルのインタビューには、デアドラ・オブライエン(Deirdre O’Brien)氏とのインタビューも含まれていますが、オブライエン氏へのインタビューは非常に希少なものとなっています。オブライエンSVPは、あのかつてバーバリーのCEOだったアンジェラ・アーレンツ(Angela Ahrendts)SVPの後を継いだ小売販売部門のトップです。

デアドラ・オブライエン Deirdre O'Brien SVP
デアドラ・オブライエン (Deirdre O’Brien)SVP

ただ、このオブライエンSVPへのインタビューを含む多くのAppleの幹部達も、クックCEOの優位性という背景を超えるようなことはありませんでした。

伝記本の中の引用やインタビュー内容の大部分は、既にクックCEOのアカウントから発言されたものなど、公開されていたものを集めたものになっています。ケイニー氏はそれを認めていて、それらの資料を集めて総合的な経歴を作ったということですが、それらのポイントがよく知られている傾向のものであったことは否めず、Appleに関するニュースをよく読む人にとっては、ケイニー氏の引用の大部分を既に知っている可能性が高いようです。

1つの例外として、2015年のサンバーナーディーノの無差別銃撃テロへの対応として、AppleのiOSにバックドアを仕掛けることを要求したFBIとの応酬に関する長いセクションがあります。Appleがどのような対応をしたか、ケイニー氏はAppleが論争の的になっている間に、どのようにFBIや世間の批判に立ち向かうために働いたかについての内部的なストーリーが語られています。

しかしサンバーナーディーノの事件の完全な説明がされている間、我々がそのことについて全て知っているかどうかは別にして、最初にそのことを紹介されます。ティム・クックCEOの伝記本を買うような人は殆どがそれらのことを知っている可能性が高いにもかかわらずです。また、そのような人々は同様にティム・クックCEOが異議を唱えてiOS 7からスキューモーフィズム(他の現実的な物質に似せるために行うデザインや装飾)をやめさせたことなどを知っているにもかかわらず、別々のセクションで3度にわたってそのことが紹介されたりしています。

結果として、ケイニー氏の以前のジョニー・アイブCDOの伝記本ほど説得力があるものではなく、多くの雑誌記事を引用して寄せ集めたような仕上がりになってしまっています。

ただ、それによってこの伝記本はティム・クックCEOについておべっかを使っているような感じはなく、純粋にクックCEOを称賛するような内容になっているということで、よく検討され調査された重要な人物という感じがするようです。しかもケイニー氏は、かつてスティーブ・ジョブズの伝記を書いた作家ウォルター・アイザックソン氏よりもはるかにAppleそのものやテクノロジーに関する理解が深く、詳しいことがわかるとのことです。

というわけで、クックCEO自身が自分の伝記を書かない限り、この伝記ほど包括的な内容のものを書くことはできない、との感想が述べられていますが、それでいて同じ作家のケイニー氏によるジョニー・アイブCDOの伝記ほど人を惹きつけるものはないと感じられたのが残念、ということです。まるで外によく知られる本人達の印象を表しているようですね。。

つまり、あまりスティーブ・ジョブズ死後のAppleやティム・クックCEOのニュースなどに注目してこなかった人で、客観的にティム・クックCEOやAppleを評価したいという目的で包括的に読みたいような人には最適な書物かもしれませんが、Appleのことを熟知し、より深く他で知ることができないエピソードなどを読みたいという人には向いていないのかもしれません。

まだアメリカでもこの伝記本「ティム・クック:Appleを次のレベルに引き上げた天才(Tim Cook: The Genius Who Took Apple to the Next Level)」はリリースされておらず、アメリカ版Amazonで予約を受け付けている段階です。今後、日本語訳が登場するかどうかは不明ですが、ティム・クックCEO自身がかなり地味なキャラではあるので、どこまで多くの人が興味を持つかは不明です(とはいえ、ゲイであることをカミングアウトするなど、個性的な人ではあるのですが)。ただ、世界最高の市場価値を持つ会社にまでAppleを成長させたのはやはりティム・クックCEOの功績が大きいので、ビジネスマンが参考にする経済的な読み物としては注目に値するのかもしれません。日本語化されたら、当ブログでもまたご紹介したいと思います。

記事は以上です。

(記事情報元:Apple Insider

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